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49話

極楽鳥の肉は半端なかった!


メタルなスライム、白銀狼、金華猫の血と強烈な味のするモノ達を食べて来たが、こいつは別格だった!


硫黄とアンモニア臭と酢酸の香りを織り混ぜたような・・・単純に腐った生肉のような・・・。


これは『不味くても食う』という覚悟を持ってしても、勝手に体が拒絶する味だった。

俺達は涙目になろうとも、喉までアレが込み上げるも、呼吸を荒くしようとも、口を開く事すら出来ずとも、指先、肘、膝が震えようとも食べ切った!褒めてくれ!


しばらくは無言が場を制する。

聞こえるのは焚き火の音と皆の荒い呼吸のみ。



ただし、熊の獣人1人を除いて・・・。



「こんなに美味しいモノがこの世界に有るなんて・・・今の今まで知らなかった・・・」

「・・・」

「ジークさん、僕は一生、今日の事を忘れませんよ!」

「それには同感だ」


違う意味でな。


「でも、いいんですか?こんなに美味しいご飯を僕も頂いちゃって」

「も、もちろんだ!仲間だろう?」

「ジークさん!・・・はい!」


他の連中の冷たい視線が突き刺さる。

だって、しょうがないだろ!?


お前の舌は馬鹿なのか?なんて俺は言えない。

目をキラッキラさせながら俺を慕ってくれるスティーブに、極楽鳥の肉を食べて恍惚の微笑みを浮かべるスティーブに・・・言えない。


もしかしたらゲテモノ好きなのがグラーフ相手だったなら言うかもしれないが。


・・・不思議だね。



スティーブ以外の皆の顔色が悪いので、ここで解散としよう。



部屋に戻った俺は、だんだんと腹の中が熱く感じて来ていた。

今回はかなり強烈だ・・・軽く痛い。

痛いのは大っ嫌いなんだよな俺。

痛い事にキレてドラゴンを屠る程だからな。

ヒリヒリからピリピリ、ピリピリからビリビリと徐々に刺激が増して来た!


あーーーっ!!イライラする!!

とてつもない魔力が駆け巡る!

自分で制御出来ないのがもどかしい!

いつもは冷静を努める俺も、痛みだけは我慢ならない!

これまでのように魔力に包まれる感覚では無く、

俺の体の中を掻きむしるような不快感だ!


イラつきがピークに達した俺は、力ずくで魔力を抑え着けた!


今の俺の魔力量を舐めるなよ!?

下品な極楽鳥の肉如きが!!


声を漏らすだけで爆発しそうなエネルギーを感じながら、体中の魔力を下っ腹に凝縮させる。

漏らさないように。逃がさないように。

小さく、小さく抑え込む。押し潰しても構わないという程の圧力を掛ける!


かなり楽になって来たような気がする。

ピンポン玉くらいに凝縮出来ている事が分かる。

そのままでは油断が出来ない。いつ暴れ出すか分からない。

そのピンポン玉くらいの魔力の塊をイメージしつつ、納めるべき所に向かわせる。

まるで血管に従ってゆっくりと体中を循環させているかの様に、魔力の塊を誘導し続ける。


・・・体の上の方・・・喉?・・・もっと上?


・・・ここだ!!


魔力の塊は己の納めるべき所を見つけたようだ!


説明が難しい程、しっくり来る。


一言でいうと・・・。

ジャストフィット!!


まるで、

無理してたベルトを外すかの様な解放感!

真夏に汗だくで飲むビールの様な清涼感!

我慢してたウ◯コを解き放つ様な安堵感!

ズレた金◯を定位置に戻した様な万能感!


そう!俺は感じた!俺は無敵だ!

俺はとうとう進化したんだ!

俺が世界最強だぁぁぁぁ!!!












「ハッ!・・・夢か!?」

どうやら、どこかで眠りに落ちていたらしい。


「あー!夢かー・・・」

がっかりした。

かなりリアルに進化を実感したんだ。

今までとは次元の違う存在だと思えた。

やっと・・・やっと、ゴブリンから進化出来たと思ったのに・・・。


「でも、夢なら・・・どうしようも無い」

俺は失望の独り言と共に部屋を出た。


「あっ!ジークさん!ジークさん!」

「なんだよ、朝から騒ぐなよ!」

俺はミーシャに八つ当たりしてしまった。


「すいませんッス!・・・いや!そんな事言ってる場合じゃ無いッス!!」

「だから、なんだよ!?」

くそっ!別にミーシャは悪くないのに!こんな事言う気は無いのに!


「出たッス!!ソレ出てるッス!ソレ!ソレ!」


全く意味が分からない。

だが、おかげで無駄なイライラはどっかに消えて行った。・・・しかし、ソレ?何だ?

・・・まさか!!!

俺は恐る恐るチャックを確認。

ミーシャに気付かれぬ様にそっと確認。


安堵。

「ジークさん!そっちじゃ無いッス!」

「あ、バレた?ちょっと恥ずかしいな」

「頭ッス!頭にソレが!!」


頭に?何だ?

あ、鏡を見ればいいか。何で気付かなかった?


我が家の大きめな鏡の前に立つ。

頭に視線を・・・しせんを・・・シセンヲ。


危ない危ない!

びっくりし過ぎて壊れる所だった!

土に埋められる!・・・あ、俺、穴堀り得意だ。


などと現実から逃避しそうな程だった。



角出てる。

なんか角生えてる。

いや、角は求めて無い。髪は求めた。角、要らないよ?ゴブリンに角?・・・やっぱり要らない。


しかも2本。ニョキっと。

まさかタケノコ?いや、角だ。

まさかコブ?いや、角だ。

まさかトサカ?いや、角だ。

まさか・・・。


「・・・クさん!ジークさん!!」

「お?おお、ミーシャか」

「・・・大丈夫ッスか?」

「すまん、少し混乱してたようだ」

「ホントに大丈夫ッスか?」

「なんか角が生えてるが、意外と大丈夫・・・みたいだ。多分」

「具合悪くなったら言って欲しいッス」

「ありがとな。今の所はなんとも無い」


俺は触ったり、叩いたり、引っ張ったりして感触を確かめる。

めっちゃ硬い。あんまり強く引っ張ると頭がもげそうになる。まるで頭蓋骨から生えてるかのようだ。叩くと頭を叩いてる様な感覚も有る。


「おはようございま・・・あ、ジークさん!」

アーシャの視線が、ガッツリ角だ。

「おはようアーシャ。見ての通り。生えてた」

「ジークさん・・・とうとう、角を生やしたんですね!魔王らしくて素敵です!」

「生やした・・・って、狙ったワケじゃ無いんだが・・・」

「あー!アーちゃん!抜け駆けッス!ジークさん!格好良いッス!魔王っぽいッス!!」

「変な所に張り合うなよ・・・」

「ミーちゃん、まだまだね」

「くっ!アーちゃんもやるッスね!」

「だから、何の戦いだよ!」


「そういえば、こんなに騒いでてもパトラが起きないな」

「そうッスね!いつもなら怒鳴りながら叱りながら起きて来るんスけどね」

「逆に既に起きて出掛けてるんでしょうか?」


アーシャがパトラの部屋を見に行く。


「パトラさん?起きてます?」

ノックして入って・・・出てきた。居ないのか?


「やっぱり居ないのか?」

俺も見に行こうとした。

「ダメです!」

「え?」

「ジークさんはダメです!絶対ダメです!」

「はあ?なんだよそれ?」

「ちょっとした緊急事態です!ジークさんだけは離れて下さい!!!」

こんなに興奮するアーシャは珍しい。

ホントに何が起こっている?

「待て!パトラが危険なのか!?」

「違います!!ジークさんが危険です!!」

「一体何が・・・」

「ミーちゃん!あたしの服を持ってきて!今すぐ!早く!!」

「わ、分かったッス!」

返事をしながらミーシャが2階にかけ上がる。


そして、俺はアーシャに睨まれ続けていた。


「・・・何が起きてる?言えるか?」

もしかしたら・・・パトラを人質に誰かが?

なら、服って何の事だ?


「待って下さい!・・・あたしも混乱してるんです!」

「分かったから!分かったから、落ち着け」

「は、はい!・・・」

アーシャは俺と視線を合わせながらも、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。


「アーちゃん、これ?」

「・・・大きいかも知れないけど・・・」

アーシャはミーシャから自分の服を受け取り、パトラの部屋に差し出した。

しかし、俺からは目を離さない!


「アーシャ、脅されてるのか?」

「違います!・・・ふぅ、もう大丈夫ですか?」

「いいわよ、ありがとね」

急にパトラの声がした。


良かったぁ!

俺は膝の力が抜けて椅子に座り込む。


「一体何だったんだ?」

「あたしも何が何だか・・・」


アーシャもこっちに来て椅子にドサッと座る。

俺と同じく緊急から解放されて脱力したようだ。


そして、パトラの部屋から金髪の美少女が出てくる。






「・・・は?」

俺は言葉を失った。


誰だ?何故パトラの部屋から?何で?


言葉が出てこない!

「おはようジーク」

「・・・はぁぁぁぁぁ!?」

金髪の美少女の声は俺の相棒、パトラだった!!


「ちょっ!はあ!?どーゆー事!?」

「どういう事も何も私が知りたいわ!」

「でしょうね!?皆が知りたいわ!!」

「朝から騒がないでよ!」

「騒ぐだろ!?おまっ!はあ!?」

「落ち着きなさいな」

「・・・そ、そうだな!冷静に!!冷静に!冷静に!冷静に。れ、い、せ、い、に・・・」

「落ち着いた?」

「あ、ああ。すまん。取り乱した」

「・・・そうよね。私もさっき目が覚めてから、ずっと焦ってたもの・・・」

「あたしも焦りましたよ!パトラさんの部屋に裸の女の子が居るんですから!!」

「お、おう!そりゃ、びっくりするよな。俺に来るなって叫ぶよな」

「あっ、さっきはすみませんでした」

「いや、そうなるよ!しかし、良くパトラだと分かったな?」

「実は・・・」

「いいわ、アーシャ、私が言うわ。私が起きて焦ったのは、人の形をしてたのと、裸だったからよ!アーシャが最初に入って来たのは幸運だったわね!アーシャに手マネで喋るなってやって、私のお尻を見せたのよ」


俺は話に釣られてパトラ(?)のお尻を見た。

「セクハラよ!」

「子供には興味が無い!」

「無念ッス!」


とばっちりでミーシャがダメージを受けた。


「私のお尻に尻尾が2本生えてるの。金華猫の名残かしらね」

「で、アーシャがピンと来たと?」

「尻尾もそうですけど・・・パトラさんの瞳が金色に光ってたので・・・」

「あぁ、あの危険なヤツな」


パトラは攻撃の意思を持った瞬間、瞳が金色に輝く。強く魔法を放つ時や、殺気をぶつける時だ。


アレは怖い!


「・・・私もかなり焦ってたのよ!」

「うん。だろうな」

「とりあえず、アーシャ、服を買って来てくれる?アーシャの服でも大きいみたい」

「分かりました!ミーちゃん、一緒に行こ?」

「いいッスよ!何着か買って来た方がいいッスよね?」

「そうだな。家のお金を使ってくれ」

「ありがとねジーク」

「なんせ緊急事態だからな」


氷室の使用料とミスリル販売の残りで多少の現金は家に置いてある。最近は街でも物々交換は少なくなって来たんだ。



・・・せっかくだから、可愛い服を買ってあげたい。




だが・・・パトラ?・・・幼女って・・・。







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