47話
「本当に幻獣と戦うつもりか!?」
「ドラゴンよりは楽勝でしょう?」
「絶対に油断するなよ?」
「ありがとね!」
パトラが走り出す。
おそらく、幻獣、極楽鳥とタイマン張る気だな!
今回は私の出番!って張り切ってるけど、無茶はしないで欲しい。
ドラゴンにタイマン張ってボロボロの俺が言うのも何ですけどね。
「皆は我から離れるで無いぞ!奴は強い!」
「知ってるのかサタン!」
「奴も幾度となく襲撃してきた者の一体じゃ!」
「そんなに昔から生きてる幻獣か・・・」
「だが、奴も我の障壁は突破出来ん。なればパトラ殿とは力の差は無かろう!」
「確かにサタンの特殊障壁なら魔法は完全無効化、物理的にもかなり頑丈だからな。オリハルコンでもキツいもんな」
「ミスリル程度ならば弾き返して折ってやった事も有るがな!」
「さて、そろそろパトラが近付く頃だな」
俺達はパトラと極楽鳥の戦いを遠くから見守る。
突然、林の中から空に向けて光りが走る!
追うように轟音が響き渡る!
初撃はパトラの稲妻か!?
しかし、極楽鳥はパトラが見えていたのか、光りを避けると共に林の中へ、もの凄い速さで滑空して行った!
パトラは素早さを主体として戦う。今までは自分より遅い相手しか戦っていないだろう。
今回は自分と同等の俊敏性を持ち、さらに空中からの攻撃が飛んでくる。
あいつは大丈夫だろうか?
「アーシャ、少しでもいいから俺に治癒促進の魔術を!」
「はい!」
暖かい魔力が再び注ぎ込まれる。
「でも、戦うなんて無謀ですからね?分かってますよね?」
「ああ。と、いうかバトルに参加すればパトラがキレそうだ」
「「「分かる!」」」
「だが、この眼で戦いを見てみたいんだ」
「良かろう!少し癒したら、我と少しだけ、近くまで行こうぞ!」
「大丈夫ッス!ジークさんはウチが守るッス!」
「ミーちゃん?無理だと思うよ?」
「愛の力を見せてやるッス!」
「一方的じゃがな」
「気持ちは嬉しいんだがな」
「何スか?皆で可哀想な者を見る目をして!」
「ミーシャ。絶対に飛び出すなよ?」
「わ、分かったッス!」
俺も体が楽になって来たので、そろそろと林の中を進んで行った。
その間も轟雷は鳴り響く。
一瞬だが、炎の竜巻も舞い上がった様に見える!
そして少し遅れて、熱風が、魔法の余波が俺達に届く。
サタンがギリギリのところで障壁で守ってくれた。この特殊障壁はかなり強力な盾となる。
すぐに障壁を解除して再び歩み寄る。
「ギャッギャッギャッ!」
遠くから鳴き声が聞こえる。
「気持ち悪い鳴き声だな?」
「あやつ・・・必死だな!?」
「何!?分かるのか?」
「極楽鳥は喋れるぞ?だが、喋っている余裕が無いのであろうよ」
「何だと!?」
しかし、先程からは鳴き声しか聞こえて来ない。
一体どういう事だ?この先で何が起きているんだ?パトラは無事なのか?
俺は焦りを感じつつも慎重に足を進める。
林が途切れた!いや、木々が薙ぎ倒され、広場が出来ていた!だが、散乱した木々のせいかパトラの姿が見当たらない。
空中にいる極楽鳥もキョロキョロと周りを探している様だ。
刹那、金色が走った!
パトラの姿は確認出来ない!光が真っ直ぐに飛んで行った様に見える!
極楽鳥は避けきれずに掠った様だな。
飛んで行った方とは別の場所からまた金色が飛んでくる!今度は翼を捉えたようだ!
「ギャッギャッ!!出てこい!黄色いクサレネコめ!俺様が怖いんだろう?」
「やはり、あやつのようじゃ。品の無いしゃべり方は忘れんぞ」
「極楽鳥のブレスだ、気を付けろ」
極楽鳥の口から炎の竜巻が螺旋を巻いて吐き出される。辺りの木々が燃え出す!
ヤバい!パトラが炙りだされる!
炎の竜巻の余波だけでも身を焦がしそうだ!
俺はフリードの障壁の魔術を使った。
サタンの障壁は目に見えてしまう為、今はこっちを使う。
大丈夫か?つい出そうになる言葉を飲み込む。
邪魔はしたくない。
パトラは魔王より強くなりたいんだ!
こんな下品な鳥に遅れを取るワケが無い!
来た!パトラの稲妻だ!
俺達は己の耳を押さえる。
極楽鳥にクリーンヒット!
・・・何だと!?ダメージになって無いのか!?
なるほど、パトラが苦戦するハズだ!
パトラの魔法が炎も稲妻も効果が無いんだからな!
・・・手を封じられて勝てるのか?
「あ、もう1つ有ったな。使える魔術が」
障壁の魔道具だ。俺が耳に付けてあげたヤツ。
そっか、障壁を張りながらなら楽に近付けるんじゃね?
物理戦闘でパトラに勝てるとはとても思えない。
近付けば勝ち。の、ハズだが・・・。
何故、こんなに戦いが長引いているんだ?
「あ!ジーク!やっと来てくれたのね!」
「おい!よそ見をするなよ!」
「そうね、もう飽きたわ!」
「はい?」
パトラが障壁を纏い、極楽鳥にぶち当たる!
よろめいた極楽鳥に稲妻!
動きを鈍らせた極楽鳥にトドメの一撃!
その一撃で極楽鳥の頭部が吹き飛んだ!
ネコパンチで幻獣が吹き飛んだのだ。
「アーシャ、待ってたのよ!こいつも亜空間に入るかしら?」
「お前、俺達を待ってたのか?」
「そうよ?ジークには私の晴れ姿を見て欲しかったし、アーシャには極楽鳥を持って帰って欲しかったのよ!」
「・・・遊んでたって事?」
「そうね」
「幻獣、極楽鳥相手に?」
「そうなのよ!こいつ、スッゴク下品でね!腹立つのを必死に堪えたのよ!?ジークみたいに簡単にキレないようにね!」
「・・・軽くディスられてないか?」
「早く帰って食べましょうよ」
「だな。疲れたしな」
「パトラさん、ジークさん!変な匂いがします!」
「俺じゃない!」
「私でもないわよ?」
「あたしじゃないですよ?」
「わ、我でもないぞ!」
「皆、何言ってるんスか?これは・・・やっぱり分かんないッスね。極楽鳥に似てるんスけど・・・」
「ミーシャが気になるんなら探して行くか?」
「いいんスか!?」
「そんなに遠くないだろ?」
「多分?とりあえず、行ってみるッス!」
「パトラも行けるか?」
「面倒ね。行ってらっしゃーい」
「じゃ、あたしもパトラさんといますね」
「我はアーシャ殿とおるぞ!」
「分かった」
「じゃジークさん!デートッスね!」
「はいはい。どっちだ?」
「あの山の上の方ッス」
「俺は今は戦えないからな、気を付けてくれよ?」
「大丈夫ッスよ!ウチが愛の力で守るッス!」
苦笑いしながらの登山。ピョンピョン跳ねながら頂上へと進む。
「ジークさん!あの辺りッス」
「見れば分かる。明らかにアレだろ?」
木の上にでっかい卵がある。
まさかと思うが極楽鳥の卵か?
似てる匂いがするって言ってたしな。
「とりあえず持って行こうか」
「おっきい収穫ッスね」
「じゃ、俺が抱えるから、索敵と道案内頼むな」
「余裕ッス!」
「何か大きいの抱えてるわね?これは何かしら?」
「アーシャ、念のため、鑑定頼む」
「いいですよ」
「これ極楽鳥の卵ですよ!」
「やっぱりな。生きてるのか?」
「生きてますね。孵化も遠くないかも知れません」
「マジか・・・食おうと思ってたんだが」
「生きてますからあたしの亜空間にも入りませんよ」
「やっぱりテイムしちゃうのかしら?」
「やってやるッス!こいつで白銀狼、金華猫、極楽鳥のフルコンボなんスから!」
「そうだったのか?早く言ってくれよ?食べる気満々になってたよ」
「確かに食いでがありそうじゃがな」
「食べ切れないですよね?」
「また物凄く不味いんでしょ?いい加減分かったわ」
「それでも進化したいからな」
「それは分かるんだけどね」
「さて、どうやって運ぼうかな」
「私はパスよ」
「我もこう見えて猫であるからな」
「ウチは卵で鼻がきかなくなるッス」
「あたしも難しいです」
「やっぱり俺か・・・よし、分かった。頼むから早く帰ろう!」
今度はパトラが先頭で、索敵と殲滅を兼ねる。
サタンが障壁で俺のサポート、俺の道を敷く。
アーシャに指揮を執ってもらって、ミーシャが殿を務める。
現状ではパトラに次ぐ戦闘力を持つのがミーシャだ。
鼻と勘の良さ。さらに俊敏な動きで、後ろから守ってくれる。
強い敵達でないが、蛇や狼、肉食の鳥はひっきり無しに襲って来てるが、皆の鉄壁のガードで俺と卵を危険に晒す事は無い。
卵の危険は俺次第。疲れて来て滑ったり、力加減を誤ったりしたらアウトだ。
モンスターのハンターのゲームよりは安全だが、例のシーンがこんなに大変だとは思わなかったな!
トコトコと俺達は街に向かって進む。この分なら夜のうちには街に着くかもな。
パトラが強すぎて、パーティーの足が止まらないのだ。
今度からこの陣形も有りだな。
今度は卵が無いけどな!
ようやく街に帰って来た!そして我が家だ!
帰ったばかりなのにアーシャには氷室に走ってもらった。アーシャの亜空間では時間経過するから、獲物達が腐ってしまうからな。
・・・それなら氷を入れたら良かったんじゃないか?
今さらながら妙案だった!
今さらだけども。
食事もおざなりにパパッと済ませて就寝。
明日は朝から忙しくなりそうだ!
・・・寝過ごした!もう昼だ!
だって、帰ったの明け方だし!疲れてたし!やっとご飯食べれたし!
しょうがないじゃん!!
誰にともなく言い訳しながら起き上がる。
髪をセットしてネクタイを・・・違った。
ゴブリンだったわ。
・・・習慣って怖いよね?
いや、いつも遅刻してたワケじゃ無いよ?
いや、ホントだよ!?