46話
「まずはドラゴンがどこにいるか?だな」
「極楽鳥の居る火山よ!明後日の朝に出発すれば、夜、満月が輝く頃に到着よ」
「武器は?」
「今、私達が装備してるので良いじゃない!ジークのフリード、私のイージスの指輪、ミーシャのシルフィードにアーシャのウンディード。全部オリハルコンで神話級の装備よ?」
「サタンは特殊障壁の係だしな」
「ブレスは障壁、爪は武器で、尻尾はあなたの得意な穴堀魔術よ」
「噛みつきは?」
「私達に当たるとは思えないわ」
「むぐっ!確かにな」
「遠距離戦にさえならなきゃ大丈夫よ!」
「遠距離ならサタンの障壁でいいもんな」
「・・・ほらね?負ける要素が無いわ!」
「行くって決めたからには準備は怠らない。薬は・・・アーシャが居るから要らないか」
「なんだか遠足の気分ね!」
「命懸けのな!!」
何でこんなに楽観的なんだ?うちの猫は!?
最強の生物、ドラゴンを相手に遠足だと?
・・・手遅れだ。完全に手遅れだ。
バトルジャンキーの末期症状だ。
廃人、いや廃猫寸前だな。
最後は神でも相手するんだろう?
・・・うん。
神は俺も恨みがあるから手伝うけども。
「明日は簡単な買い出しだけだぞ?魔力を温存するんだ」
「分かったわ!」
ミーシャとアーシャとサタンはどう思うんだろ?
強制はしたく無いな・・・。
怖いよな?ドラゴン。
「いいッスね!ドラゴン!美味しそうッス!」
「ジークさんとパトラさんが行くなら行きますよ?ドラゴン?いえ、怒ったパトラさんの方が怖いですし」
「我、行かなきゃならんのか?どうしてもか?・・・そうか!我の力が必要なのじゃな!良かろう!我の力の一端を見せてやろうでは無いか!大船に乗ったつもりで安心するが良い!」
否定の言葉は有りませんでした。
次の日は簡単な買い出しとスティーブに連絡。
「もし、ドラゴンの素材が余ったら少し分けてもらえます?余ったらでいいので!」
だから、何で最強の生物を恐れない?
普通はヤメトケ的な発言が出て来るだろう?
せめて、気を付けて!くらいは有るんじゃない?
何で皆して、討伐成功を疑わない?
パトラとサタンはともかく、俺はゴブリンだぞ?
俺が皆の反応に苦悩していても時間は過ぎる。
なんやかんやでぐっすり休んだ俺達は出陣する。
「じゃ、スティーブ、行ってくるぞ」
「晩ごはん・・・は難しいですね。明日のご飯はドラゴンの唐揚げにしましょう!」
だから、何故心配してくれない?
「コロマルも街を頼む」
(お任せ下さい!明日まででいいですもんね?)
「その予定だが」
(なら、いつも通りですね)
いつも通りでドラゴン退治?変じゃない?
「お、おう」
「さ、ジーク?さっさと行くわよ?遅くなると疲れちゃうから」
親戚の家に行くんじゃないよな?
「珍しいですよね?ジークさんが面倒臭がるなんて」
違う。怖いんだ。
「すぐに事を大きくするのがジークさんッスよ?ドラゴン相手じゃ、楽しく無いんスよね?」
ドラゴンが楽しいってどういう事だ?
「主殿・・・気持ちは分かる!もっと強い相手が欲しいのであろう?」
分かって無い。全然分かってない。
「ん?ドラゴンより強い相手なんて・・・私?」
どうしてそうなる?
・・・はあ。諦めるか。
「パトラ、ドラゴンって俺の思ってるヤツか?」
「今さら?そうね・・・西洋式かしら?」
「胴長じゃなくて、大きい爬虫類系って事?」
「流石ねジーク!ドラゴンをトカゲ扱いね!」
「ただの形状の確認なんだが・・・」
「大体合ってると思うわ。これから討伐するのはファイアドラゴンよ!炎のブレスを吐くらしいわね。ちなみに胴長のドラゴンは海の底に居るそうよ?」
「ファイアドラゴン・・・」
「ジークさんのバトルを見れるんスね!興奮して来たッス!」
「そうね。ジークはオークキング以来のバトルじゃないかしら?」
「一応、サタンの時も居たんだが・・・」
「これで魔王の名前に箔が付くわね!」
「・・・箔って、必要かな?」
「たまには良いじゃないですか?ジークさんも息抜きしないと!いつも街で頑張ってくれてますからね!」
「息抜きでドラゴン退治?・・・あれ?俺が勘違いしてんのかな?」
「主殿どうした?」
「ドラゴンって強く無いのか?」
「・・・むー・・・その鱗は何物も寄せ付けず、ブレス1つで村を焼き尽くし、その牙はあらゆる物を貫き通す。そんな化け物を強くないとは・・・流石は主殿だ!」
思ってたよりヤバそうなんだが?
俺の物語、終わっちゃうんじゃね?
半日程歩いただろうか?
水辺を見つけたので休む。
水は魔道具があるんだが、景色が良いんだ。
「ジーク!お客さんよ?」
「ん?あれ、馬の・・・何だっけ?」
「ケンタウルスよ」
「知性は有るのか?」
「上半身は人の形だから有るんじゃ無いかしら?」
「おーい!少し話をしようか!」
「ぐあぁぁ!下賎なゴブリンが俺様に声を掛けるだと?なんたる侮辱!許せん!許せんぞぉぉ!」
「うるさい」
しまった。つい、フリードで叩いちまった!
「・・・」
「・・・」
「・・・死んでるッス!」
「・・・マジで?」
「魔王!ジークさん、魔王の所業ですよ!無礼な事を口走っただけで・・・撲殺なんて!」
「・・・ごめーんね!」
「軽い!魔王ジークにとっては、魔物の命が軽い!」
「いや、殺す気は無かったんだ」
「犯罪者は皆、そう言うのよ!」
「犯罪者・・・」
「いいんスよ!パトラさん!ジークさんにとってはちょっとした間違いッス!頭蓋骨を砕くのもちょっとした間違いッス」
「ずいぶんと殺る気が溢れているようねジーク?」
「もう、好きにしてくれ・・・」
皆さんの勘違いに連れられて、とうとうドラゴンの住みかまで来た。
「火山だよな?活動してるのか?」
「おそらくわね。でも噴火は無いと思うわよ?」
「何で?」
「ドラゴンが溶岩を飲んでるそうよ。ま、伝説の1つね!」
「伝説って・・・解体したら分かるだろ?」
「さぁ?解体されたなんて聞いた事無いわね」
「解体なんて、討伐出来なきゃ無理ッスよね?」
「そうそう。討伐したのは最近だといつなんだ?」
「ジーク・・・」
「「ジークさん・・・」」
「主殿・・・」
「ん?何だ?この空気は?」
「ジーク。ドラゴンってこの世界で最強の生物なのよ?」
「そうだな!」
「最強を倒せるの?」
「・・・あれ?」
「倒せないから最強なのよ!」
「もしかして・・・討伐された事無いの?」
「だから言ってるじゃない!最強の生物って!」
「うっそぉぉぉ!!」
「主殿は剛毅じゃのう?ドラゴンの住みかで笑い話とは・・・」
笑わせる気は全く無い。
これから未討伐の魔物と戦うのか?
こんなにヤバい相手なのか?
何で皆は平然としてるんだ?
どうしてパトラはドラゴンと戦いたがるんだ!?
「来たわ!ターゲットよ!」
でっか!無茶苦茶でっかい!
3階建てのビルかよ!?
うわっ!目が合ったよ!舌舐めずりしてますけど!?俺を食べる気マンマンですけど!?
来た!ドラゴンブレス!
「サタン!」
「任せろ!」
おお!完全に防いでる!良かったぁぁ!
ブレスが収まり、サタンの障壁も解除した。
そのままでは攻撃出来ないからな!
さて、次はどうする?
はっ!尻尾だ!
「ジーク!穴堀よ!」
「分かってる!」
俺はなるべく尻尾の根元へと飛び出した。
サタンが皆を守る為にもう一度、特殊障壁を広げる。
「くらえ!」
「グルギャァァァ!!」
ドラゴンの尾を無理矢理引き千切る!
皮一枚残ったので、思いっきり蹴り飛ばす!
「ドラゴンの尻尾を千切ったぁぁぁ!!」
「ミーシャ、うるさい!」
俺はパーティーに戻り、態勢を整える。
ドラゴンの腕が振り上げられる!
「来た!今だ!!」
俺は愛槍フリードをドラゴンの左腕にぶつける。
「うおっ!」
衝撃で離れたところまで吹き飛ばされたらしい。
背中が痛い!急いで顔を上げると、大砲でも打ったかのように、俺が吹き飛ばされた道が出来ていた!
「くっそ強いな!」
「ジーク!無事なの!?」
「ああ、大丈夫だ!けど段々腹立って来た!」
俺は戦略を無視して前に出る!
ドラゴンの左腕をチラリと見る。
手が半分に削れていた。
大丈夫だ!俺の攻撃も効いてる!
もう痛いのは嫌だ!
一撃で決めてやるよ!!
「オラッ!」
「グッ!!!」
ドラゴンの喉を掻き切ってやった!
ドラゴンが背中を向ける!
あっぶねえ!翼を振り回して来やがった!
とっさに後ろへ飛び退く!
だから!危ないのは嫌なんだ!!
「しつこいんだよ!!」
俺は痙攣を始めたドラゴンの首筋に飛び付く。
翼の付け根に足を掛けて翼を切り落とす!
俺もバランスを崩し、落下!
途中で後ろ足が見えたのでフリードを突き刺す!
このまま、障壁の魔術を使ったらどうなるか?
特に後先考えずに、思った事を実行する。
バゴン!
「ぬあ!?」
変な呻き声が漏れてしまったが、何とか障壁の斥力でドラゴンと距離を取れた。自分から弾き飛ばされた格好だ。
「ジーク!無茶しないで!!」
「ああ、もう大丈夫だ!ごめん、少しキレちゃった」
「少しキレて、最強生物ドラゴンが瀕死とは・・・やりおる!」
ドラゴンはもう息が継げないハズだ。トドメは時間の問題だが・・・。
「動いた!?」
最後の力を振り絞っているのだろう!
もう、目が合う事は無い。
「トドメも俺でいいか?」
「いいわよ?」
アッサリとパトラの許可が下りた。
いや、散々戦略を無視して今さらか・・・。
俺は無言でドラゴンの正面に回る。
見上げるとやっぱりデカイ!
喉から大量の血が流れている。
放って置いても死んじまうんだろうがな。
「・・・介錯だ!」
俺は気合いを入れてジャンプした!と同時にドラゴンの首の骨ごと頭を切り落とす!
ズドドォォォォン!!と物凄い音と共に頭が落ちて来た!
だから!あぶねえって!!
ギリギリ避けた俺はさらに首なしの巨体に押し潰されそうになる!
俺はとっさに地面に穴を掘って身を隠す!
ドゴォォォォォォン!!
穴に隠れてる俺の背中から物凄い衝撃が走った!
慌て障壁の魔術を発動したが・・・意識が遠のく。
「つ!あ~!いってぇぇぇ!」
「ジーク!気が付いたのね!?」
「おう!痛!背中が痛い!」
「ジークさん、横になって下さい!魔術を掛けます」
アーシャから優しい魔力が注ぎ込まれる。
しばらくして、楽になった俺は周りを見渡す。
辺りはいくつかの木々が薙ぎ倒され、地面に穴が空き、ドラゴンの血だけが跡を付けていた。
「やったわねジーク!!」
「流石はジークさんッス」
「やはり主殿だ」
「ジークさん。凄いです!エンシャントファイアドラゴンをほとんど1人で倒すなんて・・・」
「あれ?何か名前が変わってない?」
「あいつは伝説ドラゴン達の中でも最上位のドラゴンだったのよ!」
「あたしが鑑定の魔法を掛けたんです!」
「異常な大きさだったから、撤退しようかとも思ったんだけど・・・」
「主殿がプッツンしてしまっての」
「ウチ達もどうしようか迷ったんス」
「そしたら、ドラゴンを倒しそうな勢いじゃない?」
「とりあえず、様子を見ることにしたッス!」
「見ているうちに倒しちゃいましたけど」
「最後に巨体に挟まれた時は焦ったわよ!?」
「すぐにドラゴンを亜空間に入れてジークさんの生存を確認してホッとしましたよ!」
「・・・それで、今に至る。と」
「本当に大丈夫?でも、キレてるジークは格好良かったわよ?」
「惚れ直したッス」
「・・・ありがとう。で、いいのかな?」
「私の当初の予定ではもっと小さいヤツを相手取るつもりだったのよ?」
「他の個体もいるのか?まだ、ドラゴンが?」
「いるわ。でもおそらく、さっきのヤツが縄張りの主だと思うわよ?」
「他が雑魚なら助かるな・・・」
「歩けるかしら?」
「大丈夫・・・んー、あんまり力が入らないな」
「あれだけの攻撃だもの。物凄い魔力が籠ってたのよ?良く、体が無事だったわね」
「さっきは千切れるくらい痛かったけどな、アーシャのおかげで楽になった!」
「もう・・・無茶し過ぎよ!!」
「無茶させたんだろ!?最初はめっちゃ怖かったんだからな!?」
「どうして、そんな怖い相手に突っ込むのよ!?」
「・・・痛いのは嫌なので・・・先に・・・」
「ヘタレ!?ヘタレなの!?ドラゴンスレイヤーはヘタレだったの!?」
「違うもん!ヘタレじゃないもん!」
皆で笑い合った瞬間、ミーシャが・・・。
「ジークさん!走れるッスか?」
「どうした?」
「・・・多分、大物が来るッス・・・」
「大物?」
「もしかしたら・・・」
「ミーシャ、来たわ!幻獣、極楽鳥よ!!」
「逃げるか!?」
「嫌よ!今度は私の番だもの!」
だから、どこの戦闘民族だよ!?




