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44話

「カラアゲ?カラアゲってなんスか?」

「大量の油でカリッとさせるんだ」

「大量の油ならギトギトになるんスよ?」

「高温に熱して使うんだ。確かに温度調整が難しいな・・・それもゴルドに頼んでみるか?」


後は小麦粉と卵かな?

タレも考えなきゃな!

そうだ、先にパトラにも相談してみよう。


「パトラって人間時代に料理してた?」

「サチの時ね。もちろんよ?花嫁修業はバッチリ!・・・なのに・・・」


どっちだ!?

なのに異世界に飛ばされた、か!?

なのに相手が出来ない、か!?

どっちなんだ!?ここで選択をミスると協力してもらえないかも知れない!


「・・・」

「彼氏は居たけど、浮気されちゃってね・・・」


よりヘビーだったぁぁぁ!!

あっぶねえぇぇ!地雷踏まなくて良かったぁぁ!


「そうか、何か言いづらい事を言わせてしまったな。すまん」

「別にいいわよ。もう、随分と前の事だしね」

「俺は遠くに行かないからな」

「ありがとね、ジーク・・・」


ちょっと恥ずかしいセリフだったかな?


「ああ!そうだ!そうじゃなくてさ、今度はミーシャに唐揚げを作らせようかと思ってな!」

「わお!食べ物チートね!最近のジークは積極的で面白いわ!魔王効果もあるのかしら?」

「・・・張り切り過ぎかな?」

「定番では神様が降りてきてダメ出しするわね」

「なら、その時に考えるか?」

「違うわ!!その時までに強くなるのよ!!」


パトラが輝いて見える!

いや、普段から金色に輝いているんだが・・・。


「とりあえずは魚の唐揚げの話だ」

「そうね!魚の唐揚げなら・・・小麦粉か片栗粉、後は塩が有れば大丈夫よ」

「卵とかタレは要らないのか?」

「それは鶏肉ね」

「そうなのか?俺はいつも外食かスーパーの弁当だったからな・・・」

「もしかして・・・給料が高かったの!?」

「ぼちぼちだったなぁ・・・何でギラついてんの?」

「玉の輿!?」

「いや、そこまでじゃないよ!ただの営業マンだったよ」

「あぁ。それでゴルドとやり合えたのね?素人の私から見ても結構な手腕だったわよ?」

「おう!成績はトップを取り続けてたからな!商談と暇潰しなら自信があるよ!」

「暇潰しは余計ね」

「ま、そんなワケで、俺は食べる専門なんだ」

「私もこの体だからね。知識なら提供出来るけど・・・」

「それでも十分だよ!」


猫の手も借りる事態は避けたい。


「じゃ、しばらく出掛けるわよ、ミーシャ?」

「よろしくお願いするッス!」

「アーシャにも運搬を手伝ってもらうか?」

「いいの?助かるわ・・・ジーク?私達が居ない時にメイドに悪さしたら・・・」


パトラさんが怖いです。

瞳も金色に光って、爪を剥き出し、尻尾の1本には放電、もう1本には火の玉が・・・器用だな。


「しません!・・・何で信じないかなぁ?」

「ゴブリンだからよ」

「ゴブリンッスよ?」

「ゴブリンですよ?」


3人が『何言ってんの?』くらいでツッこむ。


「そうっすね。すいませんでした!」


俺はヤケになって、開き直る。

・・・他にどうしろと?



「コロマル!!」


急にパトラが白銀狼を呼ぶ。びっくりした!

(パトラ様?どうしました?)


どこからともなく現れるコロマル。忍者か!


「私達は3日くらい家を空けるわ。その間にジークをかん、んん!護衛して頂戴!」

「今、監視って言おうとしてたよな!?」

(お任せ下さい!パトラ様達はどちらまで?)

「人間の街まで買い物よ」

「食べ物の調味料とかを買って来るッス!」

(そうでしたか!分かりました!ジーク様は僕が守ります!安心して下さい!)

「いい?家の無い人間や信者でない人間、敵意のある者。後はメイド達にも気を付けてるのよ?」

(分かりました!人間達は特に気を付けます!)


あれ?普通に会話してる?じゃ、パトラの血のおかげで、俺も念話が可能になったんだな!

しっかし、なんて教育をしてるんだ!

コロマルも素直過ぎる!そして俺を何だと思ってるんだ!?



・・・あっ、ゴブリンか!



「他には・・・もし売ってたら仮面も頼む」

「仮面?・・・ふふっ!そうね!仮面ね!」

「センスは任せるよ」

「分かったわ!待っててね!」


3人が立ち去ったので、のんびりとすごそうか?

それとも・・・。


(ジーク様、悪い顔ですね!パトラ様に報告しますよ?)

「ごめんなさい」

(なるほど、僕の護衛が必要なワケですね)

「いや、理性は有るんだが?」

(理性が有るのに湖や幻獣達や狂信者や王国と・・・)

「ごめんなさい」

(ふぅ。魔王の護衛も大変そうですね)


子供の白銀狼が苛めてくる。

誰だ?コイツの保護者は!?

・・・俺だな。知ってるよ。思ってみただけだ。


「さて、遊んでないで仕事しようか」

(何をするんですか?)

「ふっふっふ!」

(また悪い顔ですね!)

「パトラはこの表情をいい顔って呼ぶけどな」

(パトラ様もたまにその顔しますからね)


あいつは何をやってんだ?


「今日のメンバーは俺と護衛のコロマル、サタン、後はサイクンと弟子達だ。本当はダイクンとスティーブも頼みたいが、今は手が離せないからな。・・・さ、行くぞ」

(はい!)


増えた兵士達の住宅作りにダイクンと弟子達は忙しい。もちろん、本来はサイクン達もだが。

メンバーを集めて向かったのは湖のほとり。


「さて、ここに温泉を作る!」

「おんせんって何?」

「お湯を溜めて皆で入るんだ!気持ちいいぞ!」

「主殿!我、猫の姿だが温泉は堪らんぞ!」

「結構な大きさの温泉にする。まずは土を集めて山にしてくれ」


サタンの障壁で型を取り、ザクザクと土を盛り上げる。

魚の養殖場を作った時にピンと来たんだ!

同じ要領で温泉もイケるとな!


山の頂上を水平にならし、広さを見る。


「これなら4つってとこかな?」


半径5メートル位の穴を作る。半分は深さを腰くらい。もう半分は膝くらいの高さに調整する。

その穴を少し離して4つ。


「サイクン。ここにお湯を溜めて、皆で入るんだ。どうだ?ここまで出来れば想像出来るだろう?」

「なるほど、水浴びをお湯でやる感じですね?」

「そうそう。弟子達には椅子と手桶を作って欲しい」

「あれ?僕は?」

「穴の中に入ってご覧よ」

「・・・なるほど。殺風景ですね。後、男女で分けた方が良いかも知れませんね」

「当然だ。この街は女性が極端に少ない。だからこそ、女性は大切にしなきゃならないんだ」

「分かりました!まずは壁ですね!ジーク様の硬質化をあてにしますよ?」

「おう!任せてくれ!」


外枠の障壁を消したサタンに今度は内壁の型枠をお願いする。

何気にコイツの魔力もかなりのモンだよな。

さすが金華猫!そして、協力的だ!誰かと違って。

誰かさんって結構メンドくさがるんだよね・・・。


心の中で愚痴ってる間に壁も作り上がった。

土木業は確実に技術が向上しているな!

氷室じゃなく、こっちを収入源にしようかな?

・・・無理だ。サイクンの手際には勝てない。

サイクンは壁にどんどん絵を描いて行く。

あれ?・・・何だと!?俺?俺の絵か!?


「待て待て!サイクン!それは無い!あり得無い!センスが無い!何故にゴブリンの絵だ!?」

「えっ!?そんな!?自信が有ったのに・・・」

「サイクンよ、主殿の絵は素晴らしいのだが、主殿に見られての温泉は落ち着かないだろう?」

「・・・そうかな?」

「サタンの言う通りだ!そして、俺の絵の完成度が半端じゃないんだが?」

「えへへ、ジーク様の絵は高く売れるんですよ?」


何て事だ!どこの馬鹿だ?俺の絵を欲しがるのは?

考える間も無く答えは知ってる。信者達だ。

狂信者の連中ならお金すら出すだろう。

しかし、サイクンの副収入になる程とは・・・。


「とにかく、その絵は却下だ!」

「ガーン!」

「くつろげる風景と言えば・・・何だ?富士山?」

「それでは銭湯であろう主殿」

「うーん・・・なら、いっそ露天にするか?湖が見える様に」

「虫が気になるのじゃ」

「なら虫避けの工夫を考えたら?」

「障壁か、毒か、匂いか、光りか・・・光り?照明だ!」

「照明とな?逆に虫が寄って来るじゃろ?」

「遠くに強い光を用意するんだ!」

「ほう。やはり面白い事を考えるお方だ主殿は」

「ジーク様、光りで虫が集まるのですか?」

「そうなんだ。更にその光りがこの温泉にも届けば夜でも入れるしな!まさに一石二鳥!」

「して、どのような細工を?」

「魔道具だな。炎が出るのは有るかな?」

「王国軍とか王都の鍛冶場なら有るかも・・・」

「そうか。やっぱり魔道具はゴルドさん経由かな?」

「グラーフの奴ならどうだ?冒険者なら攻撃用や酒場の料理用も有るかも知れん」

「グラーフか!早速聞いてみよう!」


とりあえずは照明とお湯以外をその日の内に終わらせた俺達は、帰る前に魚の養殖場を見に行く。

やっぱりとんでもない量のザリーガが集まっている。


「主殿、この中に魔力を発する物が有るのでは?」

「有るよ?水を出す魔道具が。常に稼働してる」

「それじゃ!魔力にザリーガが集まっておる」

「そうなのか!じゃ、ザリーガをいつでも取り放題だな!本物の魚じゃないけど結果は良かったな」

「ううむ。ザリーガだけなら良いが・・・」


食糧の安定は、いつでも最優先の悩みだ。

この街がこのまま発展すれば、狩りと農業だけでは間に合わなくなるからな。


夜はメイドのイライザが皆の食事を用意してくれた。

食べた後は1人で自分の部屋に帰ろうとしたのだがコロマルに止められた。コロマルが俺の部屋で待機するそうだ。

そういえば、パトラが『メイドにも気を付けて』と言ってたからな。

コロマルとしては俺から離れるワケには行かないのだろう。


ちなみにイライザの部屋はミーシャ、アーシャの隣の部屋だ。お互いに悪さをする予定はないんだがな。


翌朝、グラーフを訪ねると不在との事だった。


そして、2日後・・・。


「ただいまー!ジークいる?」

「ああ、おかえりパトラ」

「コイツどうする?」

「コイツ?」


パトラが外からグラーフを引きずって来た。


「一体どうした?」

「コイツはアーシャが街に出掛けたのを聞いて勝手に付いて来たのよ?」

「違う!誤解だ!オレはギルドの仕事を・・・」

「なら、どうして四六時中アーシャの近くに居たのよ!?」

「それは、その・・・体が勝手に・・・」

「ストーカーじゃねぇか!?」

「2日目から、なんかおかしいと思ってたんだけど、今日も朝からずっと居るの。アウトでしょ?」

「アウトだ。グラーフ。何か言い残す事は有るか?」

「ひぃぃぃ!御慈悲を!ご容赦を!」

「パトラ、お仕置き」

「かしこまりー!」

「うぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!!」


かなり強烈な電撃だな。

俺なら死ぬかも?


「サーセンシタ」


当然の土下座。


「グランドマスターにチクろうかな?」

「勘弁してくれ!後生だ!」

「・・・どうする?アーシャ?」

「うーん、可哀想ですし、そこら辺で・・・」

「そっか、良かったわねストーカー脳筋ハゲ」

「助かったなストーカーギルドマスター」

「何も言えない・・・」

「あっ!そうだ!グラーフに用事が有ったんだ」

「何でも言ってください!」

「炎を出す魔道具が欲しい」

「まさか・・・オ、オレに!?」

「希望するなら燃やしてやるよ」

「そんなぁぁぁ!」

「違うって、虫を集めるのに使うんだ」

「ジーク?虫はゴブリンくらいしか食べないのよ?」

「だから違うってばよ!実は皆が出掛けてる間に温泉を作ろうとしたんだ」

「へぇー・・・それで?」

「露天風呂にしようとしたんだけど、サタンが虫を気にしててな」

「金華猫の風上にも置けないわね」

「いや、人間も入るから指摘は助かったよ」

「あんなのでも役に立ったのね」

「と、言う事でだ。虫避けの為には炎の魔道具が必要になったんだ。グラーフの方で用事出来ないか?」

「用意は出来るが安くはないぞ?」

「用意出来るのね?」

「だから高価なんだ」

「用意出来るのね?」

「あれ?これはマズいパターン?」

「用意出来るのね?」

「いや、だから・・・」

「用意出来るのね?」

「・・・」

「用意出来るのね?ロリコンストーカー脳筋ハゲギルドマスター?」

「はい。よろこんでー」


脅迫だよな。

罪を水に流す代わりに魔道具を無料で提供しろと。


「分かったよ!用意はする!しかし、炎の維持は大変だぞ?」

「それなら問題無いぞ?オリハルコンなら半永久的に炎を展開し続けるだろう」

「オリハルコン?オリハルコンって・・・あのオリハルコンか?伝説の?どういう事だ?」


あ、しまった。

ゴルドはグラーフに言って無かったんだな。

俺も知ってると勘違いしてたわ。


「分かった。グラーフ。全て忘れろ」

「はい?何を言ってんだ?さっきから」

「ん?お仕置きが足りないのかな?」

「シャァァァ!!」

「ひぃぃぃ!」


ナイスアシスト!流石はパトラ!



記憶を消す魔道具が有れば・・・。


ま、いっか?

どうせグラーフごときが何か言っても相手にする気も無いしな。




可哀想なストーカーギルドマスター脳筋ハゲだ。



自業自得だがな!



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