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43話

「ジーク?」

「誤解です!」

「ジークさん?」

「無実です!」

「分かったわ。アーシャ、ミーシャを呼んできて。あなた達もついて来なさい!」


何故かパトラとアーシャに睨まれた俺は、1人、その場に取り残された。女性陣が全員で俺の家に入っていった。俺も行こうとしたらパトラに威嚇されてしまったのだ。


仕方ないのでグラーフと話をしに行く。

先日、相談があると言われていたのを思いだしたのだ。


「グラーフ、相談の件だが」

「おお、ジーク殿!実はな、この村にギルドを置いてはどうかと考えていたんだ」

「冒険者ギルドか?」

「そうだ。ヤマタイの村・・・もはや街だな。このヤマタイの街にギルドの支部を置いて欲しいとグランドマスターから相談が来てるんだ」

「メリットは有るのか?治安が悪くなるのは困るんだが?」

「メリットか・・・そんな事を言われるとは思わなかったな。普通は街の防衛にも役立つから、街からお願いされる程なんだがな」

「この街にこれ以上の防衛力が必要か?」


パトラ、サタン、コロマル、幻獣3体。

魔王である俺、天性の狩人の獣人達。

さらに、人間の住民のほとんどは元兵士だ。


「それはそうなんだが、まさかグラマスに元兵士が徒党を組んでいるとは言えないだろう?」

「他からはこの地域はどう見られてるんだ?」

「魔王ジークが治める獣人の村、人間とは付かず離れず・・・といった所だ」

「現状を見たら驚くな」

「全くだ。さっきの連中も含めれば150人位の住民だぞ?さらに奴隷も面倒みるんだろ?」

「そうだ。ついでにいえば信者達も家族を呼べるようにしたい」

「300・・・もしかしたら500人にも届くかも知れんな。で、あれば尚更、ギルドを置くべきだ。食いっぱぐれが出るのはマズい」

「冒険者ギルドは何を出来るんだ?」

「実は実際に冒険をさせる事はほとんど無い。薬草の採取。害獣の狩り、魔物の狩り。街の雑用も引き受ける。後は酒場と宿屋の管理かな」

「酒場と宿屋?」

「そうだ。建物はダイクン達に頼む事になるが、経営はギルドが受け持つぞ?どうせ、ほとんどの客が冒険者だからな」

「なるほど、理にかなっているな」

「だからジーク殿。この街にギルドを置いてくれないか?」

「・・・ギルドマスターはどうなる?」

「オレだ」

「スタッフは?」

「3人だけノースノートの街から連れて来る。他は住人を教育していく事になるな」

「・・・場所は湖の南側だ。木材確保の為に開拓するからその跡地な」

「お!それじゃ、許可を出すんだな?」

「ギルドの支部をそのまま砦として森への守りとする」

「おお、願ったりだ!森が近いなら採取や討伐も楽だからな!」

「当面は森の開拓からだな。グラーフはグラマスへの繋ぎと人員の教育を頼む。獣人と人間を調和させるように気を付けてくれ。もし、獣人が虐げられる事があれば・・・ギルドのグラマスはどこにいるんだ?」

「お、王都だ!だが待て!グラマスに何をするつもりだ!?」

「逆に獣人達に何をするつもりだ?」

「何もする気は無い!だから考え直せ!頼む!」

「今は何もしないぞ?・・・今はな」

「わ、分かった!オレからも厳重に教育しておくから!絶対に獣人達を無下に扱わん!」

「普通の人間と同じようにしてくれればいいぞ。悪さをした獣人はスティーブが裁く。納得出来ない時は俺かパトラの出番だな」

「分かった!」


神妙に頷くグラーフを置いて、俺は自分の家に帰った。


「パトラ、会議は終わったか?」

「完璧よ!イライザ、挨拶を」

「ジーク様、これからは私がこの家をお手伝いします」

「よし!おかしな信仰心は消えたな!」

「会議の内容を教えるわね・・・」


まずは女性陣に説教したらしい。パトラとミーシャを差し置いて俺の寵愛を求めるなど言語道断だと・・・。

そういう事なのか?

そして7人は散らばす事にしたとの事。

組織にして管理するとの事。

リーダーをミーシャにするとの事。

メイドにするとの事。

俺とパトラ、ミーシャ、アーシャ、スティーブの命令に従うとの事。


・・・メイド?今、メイドって言った?


「パトラ・・・今、メイドにすると聞こえたんだが?」

「萌えるでしょ?」

「元兵士だろ?」

「メイドに戦闘能力は必須よ!!」


何かおかしな事になってるぞ?


「メイド隊、隊長のミーシャッス!ウチも衣装を用意して貰うッス!」

「なぜこうなった・・・」


犯人はパトラなのは確定ですがね!

存外、メイド隊の皆は喜んでいるらしい。

民を守る為とは言え、重い甲冑を四六時中身に付けるのは苦痛だったそうだ。髪を増やして分かったが、若い子が多いからオシャレもしたいんだろうな?

しかし、この世界でメイドとは・・・。


「やっぱり違和感が・・・」

「そんな事は無いわ!あなたはメイド喫茶のイメージかも知れないけど、この世界はメイド、貴族、冒険者が存在するのよ?魔王にメイドが付いて何が悪いの!?」

「分かった!分かったから!落ち着け!何でパトラがそんなに積極的なんだよ?」

「これぞ異世界ファンタジーだからよ!!」


忘れてた。こいつ、それ系の知識が豊富だったんだ。つまり、それ系が大好きだって事だな。


「もう、好きにしてくれ・・・」

「ゴルドに急いで衣装の発注をしなきゃね!」

「お金はどうするんだ?」

「ミスリル出して」

「やっぱりな」

「今回はね。でも、安定の収入も欲しいわね」

「ミスリルとかオリハルコンはダメなんスか?」

「市場の混乱を招く」

「ん?」

「難しいか。沢山の商品が有ると価値が下がって安くなるんだ」

「ああ、なるほどッス」

「それに、ジークの鉱石は武器にすると異常な強さになるのよ。あまり多くを配るワケには行かないの」

「難しいッス。何か他の手が必要って事ッスね」

「冒険者ギルドはどうですか?」

「さっき、丁度グラーフと相談してきたんだ。この湖の南側を開拓してギルド支部を置く事になった。だが、俺達はギルドに加入はしないぞ?」

「どうしてですか?」

「単純に私達は強すぎるのよ。他の冒険者が活動出来なくなるわね」

「ま、そんなとこだ」


適当にぼやかしているが、パトラは気付いているだろう。俺達は魔物だ。そもそも登録出来るかも怪しい。

更に、ランクを上げすぎたり、活躍し過ぎると人の目が厳しくなる。

ただでさえ、王国とは友好的では無いからな。

身の安全が最優先だ。


「なら、住人から徴収はどうですか?税として」


イライザから提案が出る。


「税はそのうち徴収する。だが、俺の金にはしない。将来的にはスティーブを領主として街の運営をさせる。その為の税だ」

「全てを。ですか?」

「ああ。もちろん、未来への蓄えや街の為に働いてくれる人の賃金にも使うがな」

「そんな王は聞いた事がありませんよ!」

「そうなのか?パトラ、どうなんだ?」

「私はジークの案を採用ね。その感じが慣れてるしね。公務員と役所みたいなもんでしょ?」

「そうだ。議会は俺達だがな」

「後は司法かしら?」

「公明正大なチームか・・・難しいな」

「何の事ッスか?」

「さっぱり分かりません」

「ジーク様とパトラ様は・・・素晴らしい!」


しまった。狂信者モードに入ってしまう!


「とにかく、何か手を打たないとね」

「衣食住には困らないんだけどね」

「服はゴルド商会、食は狩りと農業、住も有るのからな・・・待てよ?ゴルド商会・・・」


パトラがキョトンとした後でニヤリと笑う。


「パトラ、顔が怖いぞ?」

「失礼なゴブリンね!あなたも悪い顔をしてるわよ?」


俺達はフフフと笑い合う。

ミーシャ、アーシャ、イライザは戦慄していた。


「パトラ、例の氷室を作るぞ。その利用料と開発権利をお金で貰う。他には魚の養殖場も始めよう」

「来たわね!異世界知識チートが!燃えてきたわ!」


まずはゴルドの所へ商談に行く。

交渉も無く、むしろ向こうから頭を下げて来た。

食物を冷やして保管は概念が無かったらしい。目が怖いくらいだった!

魚の養殖は水の管理が難しいらしいな。それも俺に考えがある。


俺はアーシャにミスリルを持たせて、メイドの衣装と幾つかの魔道具を手配させた。



まずはサタンに手伝ってもらい、氷室を作る。

サタンの特殊障壁で体育館程の空間を用意する。

その周りや屋根部分の上にに土を盛り、内側も外側も硬化していく。分厚い壁と屋根の完成だ!保温効果も期待出来るだろう。

家から水を出す魔道具と冷却の魔道具を持って来る。

冷却の魔道具をオリハルコン化させて永久稼働状態にする。それを地面に置いて水を出す。


俺とパトラとサタンの魔力を使って1メートル位の氷の床が出来た。

めっちゃ寒いので防寒具が必要だった。

これなら食べ物も無事だろう。


早速、ゴルドに報告。確認してもらう。


「これは凄い!天然の鍾乳洞よりも安全で冷えている!ジーク様!素晴らしい氷の倉です!」

「オリハルコンの性質のおかげだな」

「それを産み出したのもジーク様ですからね」

「ふふふ、満足してもらえれば何よりだ」

「・・・はっ!では、魚の養殖場も、もしや水の魔道具を!?」

「半分正解だ。魔道具と湖の水とどちらも使う」

「何故ですか?」

「魔道具だけでは水の栄養が足りないだろう。湖の水では流れの安定が難しい。だからどちらも使うんだ」

「水の栄養・・・ですか?」

「そうだ。水の栄養があれば目に見えない小さな生物が生きていける。その生物を食べて魚が育つんだ」

「・・・その知識も異世界なのですか?もしや、ジーク様のいた世界とは神の世界では!?」

「断じて違う!」

「あまりにも知識の次元が違い過ぎて、ワタクシも興奮してしまいましたよ!少し、信者の気持ちが分かりましたね!」


もはや、苦笑いしか無い。



次の日からは養殖場の作成に入った。

場所は湖の隣に設けた。

今度は先に土を集めて山にし、上から穴を開けて高質化。更に湖と貫通させる穴を開けた。オリハルコンの槍・フリードでぶち抜いてやった!

バレーボール位の穴から物凄い勢いで水が飛び出して来る!

俺は軽く身の危険を感じ飛び退いた。

水はある程度貯まると、そこからゆっくりと排水箇所から流れ出て行く。

後で網と屋根を掛けて完成だ。

さて、魚はどうするか?どこから捕まえて来ようか?


水の流れを確認しつつ思案する・・・。

ん?水の中に何か?

見てたらどんどん流れ込んで来る。


まさか?魚?湖が出来て2ヶ月も経って無いのに?

フリードで突き刺して確認する。

肉食っぽい魚?ブラックバスっぽい?


物知りゴルドさんに見せに行こう!



俺は意気揚々とゴルドの所へと歩いて行った。



「ジーク様・・・それは魚では無く魔物です」

「そうなの?食べれる?」

「どうでしょうね?漁師の網を食い破るタチの悪い魔物です。名前はザリーガと言って、網も周辺の魚も食い荒らす漁師の天敵ですよ」

「んー、ミーシャに調理してもらおう!」


「ってなワケでコイツを調理してみてくれ!」

「分かったッス!他にも何匹か欲しいッスね。幾つか試してみるッス!」

「なら、5匹くらい取ってくるよ」


養殖場に向かった俺は自分の目を疑った。

養殖場の中からバシャバシャとザリーガが跳ね回っている。

何故にこんなに大量に?

ま、いいか?

先程のようにどんどん串刺しにして持って帰った。


「とりあえず、焼いてみたッス」


フライパンの中で身崩れしてボロボロになった憐れなザリーガが・・・。

気を取り直して食べてみる。


「美味いじゃねーか!!」

「えへへっ、そうッスか?お嫁さんに欲しいッスか?」

「それは置いとく。ザリーガの味はいいな。後は調理法か・・・」


味はタラとアンコウの中間みたい。身崩れする程、身が柔らかくホロホロだ。

網で焼く事が多いこの世界では食べ物扱いされないだろうな。

そりゃ、いくらゴルドでも味を知らないワケだ。





「ミーシャ・・・唐揚げって知ってる?」




俺は禁断の味覚を世界に広げる事になる。






・・・かも知れない

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