41話
「面白いわね!信者が出来たのね!」
「よりによって魔王崇拝だぞ?」
「魂が救われたのなら、神だろうが魔王だろうがどうでも良いんじゃない?私も幻獣だからって危うく祀られるとこだったしね」
「髪の毛を生やしただけなのに・・・」
「心の底から感謝しているのね」
「そこまでか?」
「あら?あなたも髪が生えた時に大騒ぎだったでしょう?」
「はい。そうですね!・・・そもそも、あいつ等のハゲ具合に同情しちゃったのが始まりか・・・」
「そんなモンでしょうよ。気まぐれで奇跡を起こしてしまったのよ、あなたは」
「気まぐれで幻獣の仲間が出来たり、気まぐれで湖を作ったりしてるもんな」
「まさに魔王の所業ね」
「返す言葉もございません」
「自業自得よ?諦めて信仰を受け取るべきね」
「あのー・・・助けてくれたりは?」
「無理ね!面倒だわ!」
「ですよねー・・・」
バートン達、元ノースティン王国守護兵達が俺の信者になっていた。
信仰の証として、俺の模様に似せたタトゥーを腕に刻んだらしい。
さらに、王国へ再度の勧誘に遠征中だ。
メンバーは俺が髪を生やした連中のようだな。
結構な人数になって来れば王国も静観というワケには行かないだろう。
遠くないうちに、軽ければ抗議、重く見られれば武力抗争が起きるかも知れない。
こちらはどんな対応をするべきか・・・。
髪を生やしただけなのに・・・。
パトラと悩ましい問題を吟味してる中、アーシャが来客の知らせを持って来た。
「お久しぶりですね、ジーク様」
「おお!ゴルドさん!無事で良かったよ!」
「ご心配をお掛けしたようですね」
「いや、元気な姿を見せてくれれば何も問題はないよ」
「恐縮でございます。一応、定期的にグラーフには連絡を入れていたんですがね」
「あの野郎・・・最近はアーシャに付きまとっているみたいだな。仕事を投げ出してな」
「後程、キツく叱っておきますよ」
「お手柔らかにな。はっはっは」
「ワタクシの評価が左右されますからね。手加減は無用でしょう?フッフッフ」
俺とゴルドさんは笑い合った。お互いに無事な姿で再会出来たのはそれほど幸運な事だったのだ。
俺は魔王となり、いつ王国からの刺客が現れてもおかしくない。
ゴルドさんは、伝説の鉱石、オリハルコンの所持者として有名となっているはずだ。
本当に無事で良かった!
「さて、ここからはお仕事のお話ですね。まず、ワタクシはオリハルコンの性能を調べる事にしました。」
「ふむ」
「鑑定ではそれがオリハルコンである。と、いう所までしか結果が出ません。そこでワタクシは王都の研究所を訪ねてみました。研究所にオリハルコンを持ち込むと、すぐに大騒ぎとなってしまいましたよ」
「伝説の鉱石らしいからな」
「それも、子供の物語にしか出てこないような代物ですからね!まずは鑑定の魔法での確認からでしたよ」
「間違いない事が分かって、尚更に騒然となったワケだ」
「その通りです。性質の確認を始めるまでに5日掛かりました」
「何故だ?そんなに忙しい所なのか?」
「研究所の所長が国王に報告したそうですよ?報告を受けた国王はワタクシを呼び出し、いきなり国で買い取る話を持ち出しました。当然、断りましたがね」
「国が動く程の発見だったという事か?それとも単純に独占したかったのか?」
「おそらくは後者でしょうね。念のため、断る際に『国に災いが訪れる可能性』をほのめかしました」
「国王にハッタリか?はっはっはっはっは!」
「・・・自覚が無いのは困ったモノですね」
「おやおや?俺は善良な魔物だよ?」
「魔物は魔物でも、魔物の王、魔王ジーク様が持ち主ですからね?」
「その頃だったか?公表されたのは」
「それこそグラーフから聞いておりましたよ?もちろん、王国に正式に連絡が入ったのはもう少し後でしたがね」
「俺も指定された話を聞いた時は驚いたがな」
「間違いが起きれば、国に災いが起こりかねないのは事実であると証明されましたね」
「間違いがあれば。ね。早速ちょっかいは出されたが危険は無かった。意味の違う問題は起きているがな」
魔王崇拝の話はオリハルコンの話の後にしよう。
「ジーク様であれば問題はアッサリと打ち砕くでしょうね」
「まあ、今の所は害の有る事ではないからな」
「それは重畳。さて、ワタクシが国王と交渉中も研究は進んでいました。次に分かったのはオリハルコンの錬成方法でした」
「そのままでは使い道も何も無いからな」
「答えはお湯で茹でる。です」
「茹でる?・・・それはオリハルコンの弱点になりうるのではないか?」
「いえ、弱点とはなりませんね。何しろ、3日間の茹で時間ですよ」
「それは確かに無理だな。むしろ、良く分かったな」
「伝説の鉱石という事で、慎重に調べたせいか、かなり時間が掛かりましたがね。研究者の1人がオリハルコンには僅かに水分を蓄える性質があると気付いたのです。試行錯誤を繰り返して、何日も掛けてようやく調べたらしいですね」
「その研究所とやらは暇なのか?」
「まさか!日夜ひっきり無しに研究三昧ですよ。それでも伝説が目の前に有るのなら、研究者なら真っ先に取り掛かるでしょうね。実際、オリハルコンの研究は所内でも最も優先されていたようです」
「王都の研究所が総出で研究か」
「それだけの話題性は有りますよ?その後オリハルコンを2つに分けました。1つはそのまま研究所に、もう1つは信頼出来る鍛冶師の元へと運びました」
「魔術的な研究と物理的な研究といった所か?」
「流石はジーク様!話が早い!それで物理的な所から説明します。鍛冶師も驚嘆と号泣で大変でしたよ!」
ミーシャがお茶を淹れてくれた。
危ない危ない。すっかりゴルドさんの話術に釣られていたよ。一息ついて続きを促す。
さて、どこで主導権を握るか?だな!
「ゴルドさんには予想以上に手間を掛けさせているな」
「とんでもない!研究所も鍛冶師も興味の対象ですから無料で協力してくれましたしね」
「それはゴルドさんの話術の高さのおかげだろう?」
「そう言ってもらえれば光栄ですね」
「それで、鍛冶師は何と?」
「金属としては類を見ない程、粘りが強い。と」
「・・・加工次第では刃物の切れ味が増すな」
「おっと!もしやジーク様は鍛冶にも造詣が深いのですかな?」
「いや、雑学程度だよ?しかし粘度が高くても武器にはなりにくいのでは無いか?」
「それだけならば、伝説にはなりませんよ」
「では、他にも特性が?」
「はい。衝撃を与えた瞬間、硬度が増します!」
「何!?それは気付かなかったな」
「いくらジーク様でも貴重なオリハルコンを使っての戦闘はしていないでしょうから、至極当然の事ですよ?とりあえずはオリハルコンの物理的な側面はこれまでの事が分かりましたね」
してる。実はしてるんだ!金華猫を叩き伏せた。全力では無かったがな。
「そうか・・・では、魔術的な研究は進んだのか?」
「ここからが驚愕でしたよ!まず、オリハルコンを魔道具にしてみました。塊のままでは研究が進みませんでしたからね?」
「魔道具か・・・」
「ご不満ですかな?」
ここで仕掛けようか?
「・・・ミスリルは使用者の魔力を吸収し、その魔力を纏う。だが、オリハルコンは一度魔力を込めれば物質内で魔力を循環し、効果を増加させる。持続型の魔道具では半永久的に効果を及ぼし続ける。そして、瞬間的に効果が現れる物には、絶大な相乗効果が現れる・・・それは、神話を体現する程の効果を。な」
「・・・」
ゴルドさんは目を見開き、口を大きく開けて絶句。
してやったり!
ゴルドさんからしたらオリハルコンとは伝説の鉱石だ。
だが、俺は魔道具も武器もオリハルコンにしてある。加工の話は初耳だったが、使い勝手は分かっているんだ。湖の件は相乗効果の最たるモノだ。
試しに照明の魔道具をオリハルコンに変化させた後は一切の魔力注入はしていない。それなのに明かりは絶える事がないのだ。
更に武器としては面白い点が抜けている。
「ゴルドさん。武器としての利点がもう1つ有るのを知っているかな?」
「・・・伺いましょう」
「どれ程の大きさになろうと、重量を感じ無い。だ」
「・・・本当・・・ですか?」
「そうだ。俺が渡した量が少な過ぎて実感が無いのだろう?おそらく、魔力が少ない者が持つとその特性は発揮されないのでは無いかと思うがな」
「・・・」
そう。不思議な事に重さは有る。体感で500グラム。1人前のペットボトル位だな。多分、握りの部分の重さだけだと思う。
「・・・完敗でございます・・・」
「まだだ!それにはまだ早い」
「他にも!?」
「ゴルドさん。これより先は他言無用で頼みたい」
ゴルドさんは息を飲む。
顔色も悪いが大丈夫かな?
「かしこまりました」
「これを見てくれ」
俺は愛槍・フリードの布を解いた。
「こ、こ・・・これは!これはもしや!?」
「・・・そう。俺は物質をオリハルコンに変化させる事が出来る」
「・・・」
ヤバい!ゴルドさんが白目だ!
あぁ!椅子から落ちちゃった!
俺は慌ててアーシャに助けを求め、治癒促進の魔術を掛けてもらった。
「ジーク様。貴方は間違い無く、魔王であらせられる!」
どっちの意味だろうか?
「驚かせてすまなかったな」
「それはもう・・・ジーク様は・・・神の使いでいらっしゃいますか?」
何を言い出すんだ?まさか、ゴルドさんも信者に?
「それは絶対に違う!むしろ神が居るなら恨んでいるさ!よりによってゴブリンとして喚び出されてな!」
「・・・失礼致しました!」
「顔をあげてくれ。すまん、ゴルドさんに物申したいワケではないんだ」
「ジーク様・・・」
「ゴルドさん、今日1日は時間があるかい?」
「もちろんです!ジーク様との交渉は生半可な真似は出来ませんからね!」
「そうか!・・・では、俺の『これまで』を聞いてくれないか?」
「よろしいのですか?」
「ああ。ゴルドさんは信頼してるんだ。俺の過去は仲間しか知らないと思う」
「分かりました。それでは、これよりの話は口外しないと誓いましょう!」
俺は召喚される前から、これまで。進化の点や魔法の内容も包み隠さずに話した・・・。
「・・・」
「・・・」
無言が場を支配する。
「にわかには信じられません」
だろうな!
俺だって信じられません!
「が、ジーク様の知識、能力、人間臭さ。どれを取っても証拠となりうる」
「・・・」
「・・・ジーク様。ワタクシは信じます!そして、これからはジーク様の力となることを認めて頂けませんか!?」
「ゴルドさん・・・」
「これからは呼び捨てで結構ですよ?」
「ああ。分かったゴルド!」
俺はまた、ゴルドと握手を交わした。
おそらくは男として、いや漢としてお互いを認め合った瞬間だろう。
そして、俺達は酒を酌み交わし・・・。
翌日、パトラにしこたま怒られた。




