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37話

「さあジークさん!お次の面談ですよ?」

「次?誰か来るのか?」

「スティーブさんです」

「なるほど」


グラーフが帰った後、すぐにアーシャから次の予定が通達された。秘書みたい。


「ジークさん!この度は魔王認定、おめでとうございます!」

「おめでとう?え?祝い事なのか?」

「それは間違い無く!」

「おう・・・ありがとう?」

「実感が無いと言った所ですか?」

「違います。断じて違います。・・・そもそも魔王なんてなる予定じゃ無かったんだ」

「そうなんですか?だって、白銀狼や、パトラさんという金華猫。聞けば、金獅子すらも!・・・こんなに幻獣達を従えてるんですよ?村の皆も納得でしたし」

「な・・・なんて事だ」

「今回の件で人間に力を示して晴れて魔王認定。と、くれば、皆でお祝いですよ!」

「でもさ、他の村にも迷惑を掛けたし」

「あいつ等は気にしなくて良いんです!強い者に従うと決めたのはあいつ等自身ですから!」

「スティーブや村長にも・・・」

「私達は幾度と無くジークさん達に助けられていますよ!むしろ知己を持てているので幸運です」

「そう・・・なのか・・・こんな事件を起こしても、そう言ってくれるのか・・・」

「事件?何を言ってるんです?偉業です。この湖はジークさんの偉業なんですよ!」

「・・・分かった。俺は魔王にイメージが悪いんだが、前向きに捉えようと思う」

「はい!」

「ひいては、スティーブ。これからもよろしく頼む!」

「もちろんです!こちらこそ、よろしくお願いします!」


「それで、ジークさんはこれからどうするんですか?」

「まずは家だな。すまないがダイクンとサイクンをこちらに連れて来ていいか?」

「構いません。当然ですよ?ジークさんの奴隷達ですし」

「生活の土台が出来たら村にする予定なんだ」

「とうとうジークさんが村を・・・」

「そこで、だ。スティーブ。ここに来ないか?」

「・・・私達の村人も。で、あれば是非とも」

「説得は任せるが、いいか?」

「ジークさん達が居る所なら安全です。利点の塊ですよ!何より近い。今までの村から苦無く移動出来ます。今では40程の獣人がいますのでよろしくお願いします!」

「おう!こっちも早目に準備するよ」

「では早速、村長と・・・一応、兄にもこの話を持って行きますね」

「だが、強制はダメだ。分かるな?」

「お任せ下さい!」


のっしのっしとスティーブが帰って行く。

頼もしいな。見た目も中身も。将来的にはスティーブに村の運営を任せよう。

彼なら大事無く物事を進めてくれるだろう。


そして昼ご飯を食べた頃にダイクンとサイクンがやって来た。仕事道具を持って。


後ろには3人、タヌキ、熊、タヌキの獣人が付いて来ている。


なんだ?


「「ジーク様おめでとうございます!」」

「ああ、ありがとう。話を進める前に、その3人を紹介してくれないか?」

「弟子達だよ」

「他の村に住んでた人達だよ」

「弟子?まあ、お前達の技術は凄いのは認めるが・・・」

「「まだ、ダメですか?」」

「そいつ等の技術はどんな感じだ?」

「向こうの村で少しは覚えてるみたい」

「期待はしちゃダメだね。小間使いだよ」

「そうか。分かった。おい、お前達」

「「「あい!」」」

「邪魔すんなよ?」

「「「あい!」」」

「ダイクンとサイクンには向こうの村では無く、こちらの湖の近くに家、宿屋を建てて欲しい」

「またジーク様にもお願い出来ますか?」

「出来上がりの早さが全然違うんだ」

「何も無ければしばらくは手伝うよ。今回の件も予定外だったからな・・・」



その場の全員が乾いた笑い声を出した。

俺は無計画な大惨事に。

ダイクンとサイクンは俺の力に恐れて。

元の村人は予定外の一言で済ませた俺に。


その後は適当に挨拶して弟子達は先に返した。

ちなみに、さっきの熊の獣人はミーシャ、アーシャが前に居た村の元村長だったらしい。強い者に従うと自分達が体現する意味で、魔王の部下、つまり双子の部下になったとの事。

反抗的な態度はスティーブが改めさせたらしい。

体がゴツくなったスティーブが脅したら、そりゃビビる。俺でもビビる。




ダイクンとサイクンには実務の詳細を相談する。

実際に3人で歩きながら、立地、角度、規模、工期、予算等を決める。材料の仕入れが必要な分はミスリル鉱石を渡す事になった。

ゴルドさんは忙しそうなので、2人とグラーフ、アーシャを連れて買い付けに行ってもらう。

アーシャの安全が気になる所だが・・・グラーフが命懸けで守ってくれるだろう。逆に違う意味でアーシャが危ないかな?

よし、サタンも付けよう!大サービスだ!


俺も本当は行きたかった。この世界の人間の文化水準が未だに分からない。


・・・建前は以上だ。本音ではサタンとグラーフのアーシャへの特攻隊を見たい。


パトラはさりげなく付いて行く模様。

何だと!?後で詳細を教えてもらわねば!



さて、俺は実に忙しい。

明日はスティーブと打ち合わせをしながら河川の計画。そのまま作業の割り当てとなる。

やはり川が使えないなんて死活問題だからな。

当面は水の出る魔道具で急場を凌ぐ予定だ。

ミーシャが魔力を増やしたがっていたので好都合。


コロマルにはこれから警戒では無く、狩りをお願いする事になる。村の男手が土木工事に入るので食糧の確保を指示する。


「ねえ、ジーク。私達は明日から人間の街に行くんだけど・・・ジークが心配なの」

「俺は俺が心配だよ。村なんて作った事無いしな」

「そこじゃないわ。あなたを狙う輩が心配なの」

「魔王に挑むヤツなんて珍しいんじゃ無いのか?」

「もちろん少ないとは思うわ。でもゼロじゃ無い。そして能力が異常だとしても、あなたはゴブリン。恐らくは一撃で死んじゃうわ」

「そんな中で、仲間達が一時的に離れる・・・か」

「私ならこのチャンスを決して逃さない」

「もしかして、かなり危険?」

「大事を取るのは必要よ」

「とはいえ、何か出来るかな?」

「金華猫の肉はあげられないけど、血ならあげるわ」

「気持ち悪くね?血を吸われるの?ゴブリンに?」

「想像だけで鳥肌が立つわね。猫だけど」

「それなら止めよう」

「それでもやるの!」

「だって、俺がパトラに噛みつくのか?絵面がヤバいって!」

「方法を考えたのよ」

「それを悩むくらいなら、サタンとグラーフをほっといて俺の側に居てくれれば良くね?」

「頑張ったけど無理ね!好奇心には勝てないわ!好奇心は猫を殺すのよ!?」

「猫が言うセリフじゃ無いだろ!」

「安心しなさい!あなたが考えているよりは優しいと思うわよ?」

「微笑みが怖い!」


自信満々なパトラに促され、俺は地面に仰向けになる。

なるほど、木の上から血を垂らせば、直接噛らなくても良いな!

パトラが爪で自分のお腹を傷付ける。チクっと刺したか?狙い通りに爪から血が垂れる。


一滴でも効果有るかな?

俺は落ちて来た血をそのまま飲み込む。


おぷ!込み上げるナニかを根性で抑える!



今までで一番強烈な味わいだった・・・。

魔力が多ければ不味いのか?

そういえばスライムは美味しいんだよな!

やっぱり魔物って分かんない。


「俺の血も飲むか?」


何気無く聞いてみた。

「絶対嫌よ!」

「そうか」

「ジークが間違って弱くなったら困るわ」



パトラの気遣いに泣きそうになる。


「あっ!面白い事考えた!!しばらく待ってて」


さっきと同じ、怖い微笑み。イヤな予感が走る。

金華猫が2匹になった?


「お待たせ!じゃ、さっきみたいにね」

「どうしたというのだ?パトラ殿、2人きりの逢瀬では無いのか?」

「そんなワケ無い、あり得ないでしょ!」

「あり得ないって・・・」

「まずは木の上に登りなさい」

「・・・こうか?」

「そのまま、目を閉じて?」

「おお!こうか?こうか?なにやらドキドキしてくるのう!」


パトラがサタンを木の上に立たせる。

なるほど、サタンの血も飲めと言う事か!


そして、そーっとパトラの爪がサタンの腹に・・・。


「ギャン!!」


パトラの爪からサタンの血が滴る。

・・・多くね?


「ウギャアァァァァ!!」


俺は滴る血を溢さないように気を配りつつ口を開けたまま飲み込んだ。

サタンが叫びながら木から落ちるが気にしない。

・・・『き』だけに。


予想通り不味い。パトラの血とは別の不味さだ。

己の力にする為に我慢して飲む。

尊い犠牲を無駄にするワケにはいかない!

サタン、ありがとう!お前の事は忘れないよ!


「我、生きてますけど?」



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