31話
「まずはダイクンとサイクンの家の方が良いかな?この家はちょっと手狭になるし」
「そうね、私達の家の前に作らせた方がいいわね」
「じゃあ二人とも、早速、予定変更だけど良いかな?」
「構わないよ」
「とりあえずの家にするけどね」
「どの位掛かる?」
「「2日」」
「マジか、凄いな」
「小屋みたいにするけどね」
「道具と材料が必要だけどね」
「そうだな。アーシャ、ミーシャ、二人と一緒に粘土で道具作りだ。」
「分かったッス」
「ジークさん、水の魔道具をひとつ借りて行っても良いですか?」
「おう。気を付けて行ってこい」
「「どういう事?」」
「後で分かるよ」
「もうお昼ね、食べてから行ったら?」
俺達は昨日パトラが狩っていた鹿の肉を焼いて食べた。ダイクンとサイクンが遠慮していたが、一緒に食べる様に命令した。
ご飯は皆一緒が美味しいからな。
「パトラ、新しいグレイブを一気にオリハルコンにするぞ」
「あのハゲ、どう思うかしら?」
「その点と、俺が動けなくなる点をフォローして欲しいんだが」
「いいわよ。あっ!そうだ!今度で良いから私の食器もオリハルコンにしてくれない?」
「おう。もちろんだ・・・必要な事が終わってからな?」
「オッケーよ!!」
俺は全魔力を硬質化の魔法に乗せて、新しいグレイブに注ぎ込む!
・・・終わった。俺は額の汗を拭いて部屋に行き、寝る。もう無理、動けない。
そのまま、気を失った。
気付いたのは夕方になってからだった。
「ジークさん!仕事の道具を作ったッスよ!」
「硬質化をお願いします」
「ああ、今行くよ」
「ジーク、大丈夫?魔力は回復したの?」
「今度はあまり、魔力を使わないだろうから大丈夫だと思うよ」
「無理しないでね?」
「ああ、ありがとうな」
俺はミーシャ、アーシャと外に行く。どうやら空堀の近くのようだ。職人の二人が待っていた。
「ジーク様?流石に粘土では仕事が出来ませんよ?」
「ジーク様?これから、何をするんですか?」
「まぁ、見ててくれ」
俺は20個程の大工道具に魔法を掛けて行く。
思った通り、ほとんど魔力は減って無い。
・・・俺も成長したもんだ!
「「硬くなってる!?」」
「俺の魔法は硬質化。粘土でも木でも魔力を使って硬く出来るんだ。後は、この腕輪。魔道具になってて穴堀が出来る。この村を囲んでいる空堀も俺の仕業だ」
「「ジーク様、凄いです」」
俺は胸を張ってみた。
ゴブリンである俺が、戦闘以外で褒められる事って少ないからね!
「ジークさん、晩ご飯はどうするんスか?森の奥に猪の匂いがするッスけど」
「狩っとくか。どの辺?」
「あそこの低い木の奥ッス」
「分かった」
俺は空堀を飛び越え、足音を消しながら近付く。
猪の頭を蹴り飛ばし、後ろ脚を持って血抜きしながら皆の所へ戻る。
猪を吊るしながら空堀を飛ぶのは危なかった。
ギリギリ反対側に届いて、体勢を整える。
「「ジーク様って本当に凄いね」」
「本当に凄いッスよ!お前達も見習うべきッス」
「なぜ、ミーシャが威張るんだ?」
獲物と大工道具を抱えて、皆で家に着いた。
「ただいま」
「おかえりー。スティーブが来てるわよ」
「そうか、なら早速白銀狼を焼くか」
「じゃ、皆で手を洗ってから支度ッス!」
「「「「はーい」」」」
ご飯に関してはミーシャが一番の権力を持つ。
後は戦闘ならパトラ。掃除ならアーシャ。
俺はそれ以外の全般だ。
パトラは面倒臭がってか、俺に判断を委ねる事が多い。
ちなみに、パトラは野生でも苦労しないので、何事も執着しないようだ。食器以外。
「ミーシャ、ダイクンとサイクン、コロマル用に猪も焼いてくれ」
「了解ッス」
「コロマルは生でもいいと思うわよ?」
「新鮮だしな?白銀狼だしな?」
「共食いをさせるワケにはいかないですね」
「そうだな、猪は家の中で食べてもらおうか?俺達が外でバーベキューだ!」
「さてと、スティーブ。覚悟はいいか?」
「・・・大丈夫です。食べましょう」
「じゃ、挨拶だ」
「「「「「いただきます」」」」」
「美味しいじゃないですか!?ジークさん!」
「スティーブ・・・正気か!?俺は今、必死に吐き気を堪えているんだが・・・」
「これなら、いくらでも食べれますよ!」
「熊の獣人は味覚が違うのかな?」
「スティーブだけだと思うッス」
何とも言えない空気が漂う中で、俺達は決死の覚悟で白銀狼の肉を貪った。
熊の獣人は喜んで居たが・・・。
「さあ、寝るぞ!一気に体力を持っていかれるからな!」
「分かりました。僕も家に戻りますね。美味しい晩ご飯をごちそうさまでした!」
「お、おう。さて、ダイクン、サイクンは俺の部屋だ」
「「はい」」
「じゃ、コロマルは私の部屋ね」
「アン!」
コロマルは言葉が分かるみたいだな。色々と便利だ。しつけが要らないのは助かるな。
翌朝、普通に目が覚めた。
前回のように三日間も眠る事は無かったようだ。
俺達はリビング?に集まってお互いを確認する。
「体の調子はすこぶる良いな」
「特に顕著な変化は無いけど、全体的に能力の向上を感じるわね」
「ウチも力がみなぎるッス」
「あたしも体が軽く感じます」
突然、家の扉が勢い良く開いた。
「ジークさん!おはようございます!」
「誰だ?」
「えっ!?・・・スティーブですが・・・」
そこには、縦も横もでっかくなったスティーブが居た。
「ずいぶんと変わったな?」
「そういえば、ジークさんの家が小さく感じます」
「鏡をみてみろ」
俺は鏡を指差す。
「あれ!?これが僕!?・・・信じられない」
「だろうな」
「でしょうね」
「だと思うッス」
「そう思います」
満場一致で賛成です。
「一度、白銀狼を食べただけで・・・」
「それがね、私達は少ししか変化が無かったの」
「多少は能力が向上したようだがな」
「そうなんですか?」
「ああ。しかし、スティーブ。難しいだろうが、白銀狼を食べて変化。いや進化したことは秘密にしてくれ」
「・・・分かりました!コロマルも危ないですしね」
「そうだ。さらに、パトラも危険かも知れない」
「私はいいわよ?・・・代わりに村が無くなるだけだから」
「は、はい!!肝に命じます!」
「さて、スティーブが来たとなると・・・」
ドタドタと足音が近付いてきた。
「スティーブ殿!スティーブ殿!」
「喧しいのが来たわね」
「グラーフ、朝からうるさいぞ!」
「ジーク殿!スティーブ殿が、スティーブ殿が」
「分かってるよ、デカくなったんだよ」
「何で落ち着いてるんだ!?」
「・・・白銀狼の魔力に当てられたんだろう」
「はい?」
「そうね。間違い無いわ」
「いや、そんな」
「間違い無いわ」
「でも、だって」
「間違い無いわ」
「・・・分かった」
スティーブもグラーフも納得してくれたみたいだ。若干、無理矢理だがな!
少し、皆でお茶を飲みながら雑談。
「ジーク殿、今日もアーシャちゃんに治療を頼みたいんだが・・・」
「アーシャ、どうするの?気持ち悪いなら交代しましょうか?」
「いえ、大丈夫ですよ?魔力は回復してますし」
「そういう意味じゃ無いんだけどね・・・アーシャが嫌じゃ無いなら任せるわ」
「分かりました」
「脳筋ハゲ!・・・アーシャに何かしたら首から上を無くすからね?」
「わ、分かってるよ・・・」
「じゃあ僕は仕事があるので、行きますね?村の衆と昨日の狼達を検分してきます」
「俺達は結構散らかしてるからな・・・他の魔物も寄って来てるかも知れないから気を付けてな」
「スライムがいっぱい居たら、少し分けて欲しいッス」
「ふふっ、分かりましたよ」
今日からは家を建てる。
俺も暇だからダイクンとサイクンに付き合う。
さっき、スティーブに新しい家の許可を取った。
少し、川に近い方。森からは遠くなるが、俺達のスピードなら1分も掛からないだろう。跳ね橋からロープを伸ばす予定なので、昨日みたいな緊急の時にも駆け付けるのが遅くならないと思う。
「さて、俺が手伝える事が有ったら言ってくれ」
「「いいんですか!?」」
「ああ、しばらくは暇だからな」
「じゃ、目印を置くので」
「穴堀の魔術をお願いします」
「よし、任せろ!」
もの凄く楽しかった!空堀の時は黙々と1人で作業をしてたからな。やっぱり誰かとワイワイは楽しいな。
午前中で基礎までは終わった。日本のようにセメントを使う事は無いからな。代わりに俺の硬質化魔法を掛けておいたので、見た目以上の強度にはなるだろう。
職人二人も驚いていた。
そして、俺は力仕事や硬質化魔法を駆使して家作りを手伝った。
次の日にはほとんど家の形になっている。
家だ。小屋ではない。
俺の魔法が便利だったらしく、燃えてきた二人が本気を見せてくれた。
中はがらんどうだが、2日で家が建つなんて信じられない。いや、俺も手伝ったんだが、1人では何も出来ないだろう。
それだけ、二人の技術が優れていたんだろ。
二人とゴルドさんに感謝だな!
「じゃ、まずはこの家が二人の家だ!」
「ボク達は奴隷だよ」
「本当にいいの?」
「構わない。・・・あ、グラーフもしばらく住ませてやってくれ」
「「ありがとうございます、ジーク様!」」




