3話
どうやら朝を迎えたようだ。体が痛い!なにせ体育座りで夜を過ごしたからね。木のウロからゆっくり外に出て体を伸ばす。残念ながら、非常に残念ながら俺はゴブリンのままだった。
川に降りて水を浴び、雑巾みたいな服を洗う。ついでに自分の体の隅々までチェックしとこう。全体的には人間に近い作りかな?血も赤かったみたいだし、流れの緩やかな水面で自分の顔もチェック。
・・・誰?コレ?スッゴい違和感!面影すら無い!そして凶悪犯の雰囲気!しかし不思議な事にテレビとかで見たことありそうな感じ・・・。誰という訳でもないが人間にもこんな顔の人居るよね?って感じ。ただし色が、肌の色が茶色かった。泥んこみたいな色をしてる。頭だけ見たらマジで泥団子だな。
念のため、下半身は・・・おっと!以前と比べて満足してしまった・・・。ゴブリンも悪く無いかも・・・いや!そんな訳無い!
ともあれ裸も恥ずかしいので生乾きのボロ切れをまとって、いざ、朝ご飯。といってもリンゴを探すだけ。すぐに見つけて棒で落とす。昨日収穫した方を食べる。
このまま野生で死ぬのかな?なんだか泣けて来た。俺、何でこんなトコ居るんだろう?ご飯が恋しい、ベッドが恋しい、テレビが恋しい、友達が恋しい、アニキどうしてるかな?心配してくれてるかな?・・・。
・・・ダメだ!泣いてる場合じゃ無かった!俺は生き残るという覚悟を持ったはずだ!なんとしてでも生き残ってみせる!もしかしたら帰れるかも知れないから!
今出来る事から始めよう。まずは寝床だな。他のゴブリンはどうしてるんだろう?食べ物は多分今の俺とあまり変わらないだろう。
えっ!?ゴブリンって草食系?まさかそんな訳無いだろ?昨日オッサンに狩られてたよ?人畜無害なら強そうなオッサンなんて来ないよね?という事は肉食の害獣?何の肉を食うんだ?さっぱり解らん。
ゴブリンの、いや俺の生態が不明過ぎる。なら先輩ゴブリンを見習おうか?誰かに聞こうか?
そして俺はゴブリンとして生きる為に世界中を旅した。嘘です。怖くてキョロキョロしながら他のゴブリンを探してるだけです。
物陰を巡って耳を澄ます、嗅覚に頼る、目を凝らす。五感を駆使してゴブリンを探す。でかいネズミしか見当たらない。後は鳥かな?
でかいネズミって食えるかな?
ネズミって言いながら膝くらいの大きさがあるからイケるんじゃないかな?よし!狩ろう!棒で叩く?罠を仕掛ける?どっちも難しいな。まずは投石で行こう!
川原に帰って手頃な石を探す。
ぶつける用に5個、石と石をぶつけて鋭利な石を作り2個用意。準備万端、抜かりは無い。
いざ決戦!改めてネズミを探す。ゴブリンの五感は鋭いのかあっさり見つけた。こっちに気付く前に石を投げる、外す、投げる、外す、投げる、当たる、しかしダメージは無い!逃げられる、投げる、外す、諦める。
ゴブリンって不器用だな。俺は種族のせいにした。
諦めて住みかに戻る途中、八つ当たり的に石を適当に放り投げる。
「ギィヤァァァ!」
遠くから聞こえた叫び声の方へ俺は走った。
目の前には撲殺された猫の亡骸が・・・いや、辛うじて生きてる様だ。非常に可哀想な事をしたな。せめて美味しく頂こう。南無さん!
石のナイフ、石器で首を落として血抜きかな?昨日の光景よりはだいぶマシだろう、何よりも俺が生きる為だ。多少のグロは堪えよう。
「待って!助けて!」
はて?後ろを確認、左右を確認。・・・気のせいかな?では気を取り直して、石器を構える。
「嫌ぁぁぁ!殺されるぅぅぅ!」
「もしかしてお前喋れんの!?」
そこには意識を取り戻した猫しか居なかった・・・。
目の前の猫が涙目でこっちを見てる。
「来るなぁぁ!ケダモノぉぉぉ!」
「いや、ケダモノはお前だろうよ」
俺は的確なツッコミをかました!猫は痛恨のダメージを受けた!こうかはばつぐんだ!
「うっ!ゴブリンが!ゴブリンがぁぁぁ!イヤ!汚される!私の大事な何かが奪われるぅぅぅ!」
「とりあえず、うるさい!」
喋る猫って世の中に居るの!?初めて見たわ、聞いたわ!
「猫が喋ってる!気色悪!」
「えっ!ゴブリンが喋ってる!?キモ!」
叩く。
「痛っ!暴力反対!ってか助けて!」
「それはお前の態度次第だな。歯向かうなら容赦しない。」
俺は一歩離れて棒を構える。
「おまわりさーん!ここに凶悪犯がー!」
「凶悪犯面は今コンプレックスだからそっとしておけ!」
ん?今、こいつ、気になる言葉を?
「今、おまわりさんって言った?」
「ここには警察なんていないけどね!」
もしかして?もしかして!?もしかすると!?
「お前、日本人?」
・・・
「猫だけど?」
素でとぼけてんのか?それとも俺の勘違いか?




