29話
「最後が魔道具の紹介です。これらはワタクシの店で取り扱いをしています」
「ああ、頼むよ」
「まずは食べ物を温める道具と逆に冷やす道具です。」
「鍋の下に敷く様に使えば良いのかな?」
「左様です。ただし、魔力を込め過ぎると焦げてしまったり、逆に凍ってしまう事も有ります。お気を付けてくださいね?」
「分かった」
「次の紹介は治癒促進の道具です。杖の形をしていますが、強度は有りませんので戦闘には使えません」
「分かったよ。手荒には扱わない。それでこの道具はあくまでも治癒促進。なら、死んでいたり、毒素分解は出来ないな」
「その通りです。しかし、コレ以上の効力は王族付きの回復師しか持っていないでしょうね。ワタクシも自信の有る品です!」
「そうなのか。こちらは貴重な物だな」
「コレは先程の道具と反対に非常に大きな魔力が必要です。この村ではジーク様かパトラ様しか使えないかもしれません」
「ああ、問題無い」
「ではこちらが照明の道具と水の出る道具ですね」
「いくつか出てきたが・・・使い捨てか?」
「いえ、照明の方は家中に置くと思いますので10個用意しました。水の方はジーク様の家と外出時用に3個の用意と致しました」
「助かるよ」
「照明は簡単に扱えると思いますが、水の出る道具は微調整が難しいかと思いますのでご注意下さい」
「了解した」
「さて、最後は結界と障壁の道具ですね」
「おお、これは気になる!」
なんだかテレビショッピングみたいだ。
ゴルドさんの語り口のついつい引き込まれる。
「まず、勘違いする方が多いのですが」
ゴルドさんが、グラーフをチラリと見た。
コイツの様に。という事だろうな。
「結界は進入を阻む事は出来ません。結界とは陣地という使い方が正しいのです」
「進入者に反応するという事かな?」
「流石はジーク様!こちらも説明がはかどります」
「反応を感じる距離はどの程度かな?」
「魔力の量によりますね。ただし、この道具の優れている点は持続性に有ります。照明の道具と一緒で、一度魔力を込めると長時間、作動し続けます」
「ほほう。使い勝手がいいね」
「自慢の品ですからね」
「納得の一品だ、水晶球のような見た目もいいな」
「ありがとうございます。最後、障壁の道具です」
「コレがまさに進入を拒む。になるワケだ」
「はい。こちら主に戦闘用になりますね。誰でも使える様に指輪くらいの大きさにして有ります」
「これ程の魔術式を、この大きさに!?凄まじい技術力だな!」
「芸術品としても価値を高めました。魔術式は作るのに時間が掛かるので安売り出来ませんし、戦闘用となると不要な方も出てきます」
「そうだろうな」
「そこで、貴族や王族向けに苦心したのでございます」
「素晴らしい!どれも非常に価値有る品々だ!」
「喜んでいただいて何よりでございます!が!実はこれだけでは御座いません!」
「あれ?契約の品は出揃ったんじゃ無いかな?」
「ワタクシはジーク様の期待を誘った次第です。ここまでは契約内容の内ですとも!」
「と、いう事は!?」
「今回はこちらもオマケとさせてもらいましょうか」
ゴルドさんが外から持って来た、細長い箱をテーブルに置く。箱は簡素な作りだ。
焦らす様にゆっくりとフタを開ける。
凝った演出だねぇ!
「こちらもプレゼントさせて頂きます!」
「これは・・・ダガーかな!?」
俺とパトラが検分する。
「ジーク、このダガーは珍しいわよ?」
「ああ、俺にも分かる。大きさだな?」
「普通のダガーは逆手に持って肘くらいの長さよ」
「これは肩の辺りまで届くんじゃ無いか?」
「面白い武器ね」
「ゴルドさん、良いのか?特殊な一品だろう?」
「是非とも受け取って頂きたい!言ったでしょう?値を吊り上げた・・・と!」
「くっ、後悔はしていない!」
ニヤリと笑うゴルドさん。
覚悟を決めたグラーフ。
対象的な二人の表情が物語る。
立場はグラーフが上になるかも知れないが、中身の出来は明らかにゴルドさんが上だな!
そりゃ、ゴルドさんに負けを認めさせた俺の事は驚きだろうな。
「ゴルドさん!契約以上の品々を用意して貰って感謝する!・・・取引、成立だな!」
「ありがとうございます!」
・・・と油断させといて。
「では、こちらはどう思う?」
俺はテーブルの上に布を敷く。
ゴルフボール程のオリハルコンを布の上に置く。
相手の反応は?
「・・・コレは?一体・・・」
「オリハルコン」
「・・・なんですと?」
「まあ、信じられないのも無理は無い」
「オリハルコン・・・伝説の鉱石。ですか・・・」
「そこで、この鉱石の価値を決めて欲しい」
「価値を決める?・・・アッサリと言ってくれますね!商人として、それ以上の誉れは無い!分かりました!乗りましょう!・・・いえ、やらせて下さい!」
「ああ、ゴルドさんなら安心して頼める」
「必ず!満足させて見せましょう!」
俺達は笑顔で再び硬い握手を交わした!
さて、またしてもポカンとしているな皆。相手側はしょうがないか?伝説の鉱石だもんな。
価値を決めるという事は、一方的に値段を付けるという事だ。日本では独占禁止法という法律があるからパトラも話の内容がピンと来ないのだろう。
例えば、石油の価値は?土地の価値は?お米の価値は?誰が決める?
普通なら需要と供給のバランスで、ある程度の安定があるモノだろう。
ならば、世界に一つしか無いモノならどうだろうか?
答えは『上限が無い』だ。
日本人ならオークションが分かりやすいのではないだろうか?
◯◯の絵画が◯◯◯億円といえば伝わるか?
そう、値を吊り上げ放題なのだ。もちろん、価値有る品でなければならないが。
・・・伝説の鉱石なら言うまでも無いだろう。
そして物の価値を決める事が出来る人も誰でも良いわけでは無い。
目利き。人脈。交渉術。何より度胸!
これらが揃って初めて信用出来るのだ。
つまり、オリハルコンの価値を決めさせる。というのは、俺からゴルドさんへの賛美と挑戦、そしてチャンスをプレゼントする事に他ならない。
そして、きっと、ゴルドさんも俺の期待に応えてくれるだろうと信じている。
「今回は簡単には行かないと思うが頑張ってくれ」
「もちろんですとも!」
「ゴルドさんが狙われる可能性もある。十分に注意してくれ」
「あっ!そうですね!お心遣い、ありがとうございます!」
皆は話について来れて無いが、何となく察してくれた様だ。
「ゴルド、護衛はオレか、オレの信用出来る冒険者を付けるから、王都での行動は教えてくれ」
「はい!グラーフ様、よろしくお願いします!」
さて、大きな取引も終わって、のんびりお茶を飲んでいた俺達はスティーブの乱入にドキリとする!
「ジークさん!大変です!」
「スティーブ!?どうした!?」
「狼です!狼の群れが村に近付いています!」
「分かった!今行く!パトラ、来てくれ!」
「ガッテン!承知の助!」
「古い!」
「さあ、行くわよ!」
「頼りにしてるよ!ああ、皆は家から出ないように待っててくれ!」
「おいおい、オレも行くぜ!」
「そうか、助かるよ!じゃあ、急ごう!」
スティーブに付いて家を飛び出す。熊の獣人だけあって豪快に走って行く!四つ足になってるが・・・。
しかし、武器はどうしたもんか?ミスリルグレイブはグラーフに渡したし、新しいグレイブはまだ強化して無いので置いて来た。腰に差してるミスリルナイフで十分かな?
ちなみにグラーフはミスリルグレイブに頬ずりしながら走っている。気持ち悪い。
森の方へ走って行って、空堀の跳ね橋が見えて来た。
「うーわ、うじゃうじゃ居るな」
「狼臭いわ!」
「コイツら、ただの狼じゃ無いぞ!気を付けろ!」
俺達はグラーフの言葉に疑問を覚える。
「コイツら、魔物なの?」
「目が赤くなってるだろ?群れのボスは多分魔物化していると思うぞ!」
「「・・・」」
「どうした?変な顔して」
「「白銀狼!?」」
俺とパトラは軽く緊張がよぎった。
グラーフとスティーブは泣きそうだ。
群れも前回より大きい。百匹近く居るんじゃないか?
「じゃ、行こうかパトラさん」
「行きましょうかジークさん」
俺達は軽く笑いながら橋をジャンプで飛び越す。
「グラーフ!スティーブ!橋の防衛だけ頼むぞ!他は全部任せろ!」
「マジか!?あの大群に突っ込みやがった!」
「あの二人なら心配有りません!ほらっ!狼が飛び散ってる」
「な!?・・・うわぁ・・・ありゃバケモンだな」
「いえ、ゴブリンと幻獣ですよ?」
スティーブのすっとぼけた声がグラーフに刺さる。
「うん。知ってる」




