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27話

「ねえジーク?ちょっと心配があるんだけど?」

「どうした?」

「白銀狼って一匹だけなのかしら?」

「・・・俺もその事は考えたんだが、多分、大丈夫じゃないかと思うぞ?」

「どうして?」

「幻獣はそれぞれ1体しか存在出来ないんだろ?」

「それこそ私も考えたわ。でもね、あの狼が死んだら、他の狼が変異するかも知れないんじゃないかしら?」

「そういうモノなのか?」

「私も幻獣だけど、確証が無いの。いずれにしろ、1体しか存在出来ないってのが信じられないくらいよ?」

「どういう事だ?」

「自分に制約が掛かってる気がしないの」

「・・・他にも、同種の幻獣がいるかも知れないって事か?」

「・・・うん。存在しててもおかしくないってところかしらね」

「確かにな。例えばあの時、狼も数匹でオークキングの肉を食べて、それぞれ成長してるなら、可能性は・・・有るな!また、遠征するか?」

「今は守りに入るわよ?まだ、私達の力が定着してないもの」

「そうだな。分かった。念のため、村長とスティーブには話をしておこうか」



「なんですと!?白銀狼が他にも!?」

「あくまで可能性が有る。というだけだな。しかし、否定の根拠も伝説しか無いのだろう?」

「それは、そうですが・・・」

「警戒しておくに越した事は無い。いつも通りだが何か異変が有ったらすぐに教えて欲しい」

「はい!とても心強いです!よろしくお願いします!」



俺に髪が生えた事も村中に広まった頃、俺に不思議な事が起きていた。

「ジークさん!体の模様がおかしいですよ!?」

「ん?あれ、本当だ。どうしたんだろ?」


俺は腕を見ながら確認する。痛みも痒みも感じない。だが、色が変わっていた。

今まではアザのように青っぽい色だったのが、今日は紫色に変色している気がする。

かといって別段、他の異変は無いので放置していた。


異変が有ったのは翌日。

「ジーク、昨日より色が赤黒くなってるわよ?」

「分かる?俺、レベルアップしたかも」

「はい?」

「レベルアップは違うのかな?もしかしたら進化したかも・・・」

「だから、そんなタトゥーまみれのゴブリンなんて聞いたことも無いのよ」

「最初に模様が浮き出た時みたいだ。多分、身体能力も魔力も今までとは別人みたいだ・・・」

「ほほーん・・・そこまで言うなら森で試して見ましょ?」

「すまんな、付き合ってくれ」

「んん!いい言葉ね!」

「意味を取り違えるなよ?」

「分かったわ。ジークが私に付き合ってくれって言ってただけよね!?」

「・・・もう、いいや・・・」



何故か上機嫌なパトラと森まで出かけて来た。

どうなるか分からないので獣人の二人は置いてきた。すっごく不満顔だった。

・・・まぁ、ゴブリンだから危険は無いだろうが・・・


「それじゃ、力を見せてみて?」

「そうだな・・・まずは筋力!」


なんだかイケそうな気がする!

木の幹を蹴ってみる。ローキック!


ほらな!折れた!根元からゴキっとな!


「私のキック並みの威力じゃない!?どんなゴブリンよ!?」

「次は瞬発力かな?」


俺は他の木を蹴りながら飛ぶ、次の木も蹴りながら飛ぶ、その次も・・・7本の木を渡り、一気にパトラから距離を取った。着地と同時にしゃがんで溜める。今度はパトラの方に一気に距離を詰める。


「どうだ?なかなかだろう?」

「完全にゴブリンの枠を越えてるわね!1回私と戦ってくれない!?」

「い・や・だ!!」

「つれないわね」

「まだ、魔力を確認して無いだろう?」

「硬質化はこの間、試したわよね?」

「おそらく魔力量が増えてるからオリハルコンも苦労は少ないかも知れないな」

「あまり増やしても伝説感が薄れるわよ」

「そうなんだ。俺達の武器以外は作る事を控えたい。そして、今は違う魔法を試したい」

「何ですって!?違う魔法!?使えるの!?」

「・・・多分、使える。この模様の色が変わったら・・・使い方が分かったんだ。だが、どんな魔法か分からない」

「だから二人を置いてきたのね?」

「ああ。早速試してもいいか?」

「・・・さあ、いいわよ!」


パトラは俺から距離を取った。

俺は木に向かって仁王立ちする。

魔力を体内に巡らす。そして凝縮。凝縮。・・・


硬質化魔法は息を吐き、更に絞り出すように。

穴堀魔術は腕輪にポン!と瞬間的に込める。


そして、この魔法は自分のヘソの下辺りにかき集める感じだ。


魔力の凝縮が終わり、腹の中に火の玉があるかの様に熱い力を感じる。

その力の塊を目の前の木に送り出す!


木に魔力がぶつかった瞬間、木から何かが!

俺は瞬時に構える!・・・が、その何かは動かない?

近くで確認してみようか?


「・・・毛が生えた?」

「毛ね」

「木から・・・毛?・・・なんだそりゃ?」

「謎ね」

「ワケが分からない・・・」

「無駄ね」

「否定出来ない・・・」




どうして俺は報われない?

この身体中の模様は毛を生やす為のモノだったのか?邪悪で、禍々しいと言われても、いつかきっと、この模様が自分の為になると信じて来た・・・。

その結果が、コレですか。


馬鹿か!?ゴブリンって馬鹿なのか!?

いや、ゴブリンは本当に馬鹿ですが。


もし、遺伝子に魔術式が刻まれているとして、生き残る為に毛が生える魔術が必要と?

種族固有の魔法が、種族の強さに関係するとするならば、毛が生える魔術が必要と?


何処まで行ってもゴブリンはゴブリン。


ダメだ、心が折れそうだ・・・。



しかし、何故かそのゴブリンの領域を俺は超越してしまったらしい。

毛が生えたら強くなるんですか?


ホントにゴブリンの生態って意味不明だな!?


俺は自分の種族のキレながら能力把握を終えた。


パトラは俺に同情して慰めてくれる。人間なら惚れそうだ。


それからは修行を始めた。森の奥へ行き、毛が生える魔法を研鑽し、使いまくった。

たった1日で魔力量は飛躍的に増加したようだ。

加減も出来るくらいに魔法に慣れてきた頃、使用の用途を考える。


・・・思い浮かばない。

毛が生えても敵を倒せるなんてあり得ない。

生活が便利になるとは思えない。


・・・俺は一体、何をしているんだ?


「良し、決めた!毛生え魔法は封印しよう!無かった事にしよう!」

「特に問題無いんじゃない?身体能力の向上と魔力の強化が白銀狼の恩恵だと思えばいいのよ」

「そう。この模様は身体強化の魔法という事にすればいい!」


身体能力は格段に上がった。白銀狼の肉を食べたせいだろう。

魔力は日々の鍛練によるものだろう。

無駄な毛生え魔法はゴブリン固有のモノだろう。


なぜ、俺はゴブリンという種族に打ちのめされているんだろう?

全ては無かった事にすればいいのだ!幸い、毛生え魔法を知っているのはパトラのみ。魔法を使わなければバレるワケが無い!



とある魔法のせいで感情を揺さぶられたが、俺は強靭なポジティブ思考で立ち直った。

一生懸命、励まし続けてくれたパトラに感謝しつつ帰宅の足を進めた。



「あっ!ジークさん達が帰って来たッス!」

「ミーシャ、アーシャ。どうやら、俺の体の模様は魔術の術式だったようだ」

「そうだったんですか!?なんの魔術ですか?」

「身体強化だな。自分でも驚く程に強くなった」

「凄いッス!ジークさん凄いッス!」


俺は帰りながら考えた嘘を並べる。

心が痛い。

でも、毛生え魔法だったとは言えない。

多分、二人の同情に俺の心は砕け散るだろう。

絶対に言えない。

パトラに目配せをする。パトラは力強くうなずいてくれた・・・。





今までで一番、パトラが心強く思えた・・・。

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