26話
白銀狼を我慢して食べた俺達は深い眠りについたらしい。なんだか、周りが騒がしい・・・。
ゆっくりと目を覚ました俺は頭を振って辺りを見渡す。俺の部屋だ。問題無い。
だが、部屋の外から声がする。
「大丈夫ッスよ!ジークさんもパトラさんも眠っているだけッスから!」
「3日間も眠っているなんて、どう考えてもおかしいでしょう?」
「そう言われても、本当に眠っているだけなんですよ?」
「とにかく、一度、回復師に見せてもらった方がいいんじゃないですか?」
ミーシャとアーシャ、もう1人はスティーブかな?
3人の声がする。俺はゆっくり体を起こして部屋を出る。
3人が驚愕の顔を見せる。
あれ?どうした?
「おはようさん。朝からどうしたんだ?」
「ジ、ジークさん!?」
「やっと起きたッスね!心配したッスよ!!」
「3日も眠ってたんですよ!?」
「そうなのか?ぐっすり眠れたのは間違い無いがな。ちなみに体はなんとも無いぞ?」
「ジークさん?・・・なんとも?無い?」
「いやいや、見違えましたよ!?」
「何が?」
「え?気付いて無いッスか!?ジークさんの髪が!!」
「どうしたんだ?」
俺は頭を触る・・・おや?おや!?
「もしかして・・・もしかする?」
「生えたッス!」
「髪が!?・・・」
「ジークさん?」
「よっっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
俺、大興奮!
「これでハゲじゃ無い!髪があるぞぉぉぉ!!」
「落ち着いて下さい!ジークさん!」
「おっ!?・・・おう!済まんな」
「こんなに興奮する姿、初めて見ましたよ?」
「そりゃあな、アーシャ、これがどんだけ嬉しいか・・・」
「じゃあ、鏡で確認して見て下さいね」
狼と戦った時より俊敏に鏡の前に走る。
おお。髪が。有る。緑の。髪が。有る。・・・
いかんいかん、放心しかけた!
こういう時こそ冷静に!冷静に。よし、落ち着いた。まずは状況確認だ。
ゴブリンの顔は変わらない。髪が増えただけだ。髪?本当に髪か?・・・触る。髪だ!
やはり間違い無く生えている。
頭皮から生えている!
俺の髪だ!
さて、俺の髪だが、前髪は無い。モミアゲも横の髪も無い。モヒカンにも見えるが、頭のてっぺんから後頭部、首、背中にかけて長いツンツンの髪が生えたようだ。
そう、髪というよりタテガミと言った方が正しいのかも知れない。
俺は認め無いがな!髪だ!誰がなんと言おうと、これは髪だ!!
「ジークさん、カッコいいッス!」
「ありがとう!似合うかな?」
「めっちゃ似合うッス!魔王みたいッス!」
・・・複雑だ。
「あら!?ジーク!髪が生えたのかしら!?」
「おっ?パトラ?どうだ!?ハゲじゃ無くなったぞ!」
「素敵よ?そして、より、邪悪になったわ!」
・・・そうなの?
「なんか、思った反応と違うな・・・」
いやぁ、幸せだ!やっぱり髪が有ると何か違う!
「パトラ、俺達、3日も眠ってたそうだぞ?」
「え?そうなの?体は何とも・・・無いかしら?」
「待て、パトラ。毛の色が違う」
「毛の色?」
「金色が強くなってるぞ?鏡を見てみな?」
パトラが鏡の前に移動する。クルクル回りながら、全身を確認する。
ポーズを取り始めた。・・・長い!
「おーい、満足したか?」
「なんか・・・慣れないわね」
「でも、気品が溢れる感じだぞ?格好いいし」
「そう!?やっぱり!?」
「パトラさんも素敵ですよ!」
「気品・・・と言うよりも、威圧感が溢れるって感じッス!」
「そうか?パトラに威圧感って・・・感じる?」
「感じますよ!」
「ビリビリ感じるッス!」
「そ、そうなの?自分では分からないモノなのね・・・」
パトラが若干、しょんぼりしている。
多分、俺と同じで思ってたんと違う的な予想外の反応だったんだろう。
スティーブがようやく口を開く。
「いずれにしろ、ご無事で何よりです!」
「ん?心配させたか?」
「もちろんですよ!白銀狼と戦って、3日間も寝込んでたんですから!」
「いや、普通に気持ち良く寝てただけだな」
「今はスッキリ爽快よ?」
「はぁ、分かりました。それじゃあ僕は戻りますね?体に異変が有ったらすぐに教えて下さいね」
「分かったよ、ありがとうな」
「ミーシャ、アーシャ。お前達に変化はあったか?」
「ウチは筋肉痛ッスね」
「あたしは魔力が増えてます!」
ゆっくりお茶を飲みながら話を聞いた。
二人は次の日に目が覚めたそうだ。
ミーシャは寝起きと同時に筋肉痛が酷く、丸1日動けなかったそうだ。お手洗いにはアーシャに付き添われる程。今日でも少し痛みがあるそうだが、動けない程では無いらしい。
逆にアーシャは帰った次の日は何とも無かったそうだ。更にその次の日、ミーシャが心配になって鑑定の魔法を掛けたんだが、その瞬間、倒れてしまったらしい。
いつもの通りに魔法を放ったつもりだったのに、予定以上の情報量が入って来てしまった様だ。
少し休んで良くなったので、今はそこら辺の物に魔法を掛けて馴らしているとの事だ。
「そうか・・・クソ不味い肉を我慢して食べたおかげかな?」
「それぞれの変化がバラバラなのが面白いわね」
「獣人でも変化するんですね」
「ウチはジークさんと同じ模様が良かったッス」
「禍々しいわよ?」
「邪悪に見えるよ?」
「お前ら、酷くない!?」
とりあえず、皆で森に来た。能力の確認と測定だ。
まずは、ミーシャに獲物を探してもらう。
まずはパトラだ。
大ネズミに向かって電撃を放つ。
「マズい!離れろ!」
俺は後ろのミーシャとアーシャを抱えて飛び退いた!
ドドン!!!と雷轟が響く!
「あー・・・二人共、無事か?」
「・・・はいッス」
「・・・あぁ・・・はい・・・」
ショックが大き過ぎた様だ。腰を抜かしてしまった。
「悪く無いわね!コレでも抑えたのよ?コレくらいなら10回くらい打てそうね!」
「おっそろしい猫だな!」
「次はドラゴンと戦いたいわね!」
「猫まっしぐら。・・・魔王街道だがな!」
「次はあなたの番ね?ジーク?」
「俺は魔力の変化が大きいかな?硬質化を試そうか」
手頃な枝を見つけて集中。全力で魔力を振り絞る!
「ふー・・・つと、あれ?ミスリルか?コレ?色が変だな。金色だ」
「鑑定してみます」
アーシャが魔法を放つ。なるほど。魔力量がかなり増えているな。しかも、魔法に当てる量の調整も上手だな。上から目線にはなるが、素質があると思う。
「オリハルコン?・・・オリハルコン!?」
「おっと?聞き覚えのある単語が出たな!コレも実在するのか?」
「実在する・・・と、言えるかは難しいわね。どうやらそういう鉱石があるらしいって話ね」
「何とも言えないな」
「ここに!ここに実在してますよ!!」
「今度ゴルドさんに聞いてみようか」
「そうね、ミスリル以上の価値があるかもね」
「使えそうなら武器を強くしようかな?」
「お二人共!何をノンキな!伝説の鉱石が実在してるんですよ!?」
「まぁ、ファンタジーの王道だしねー」
「ミスリルがあるならオリハルコンもあるのが普通よねー?」
「二人にはオリハルコンすら当たり前・・・なのですか?」
呆れ果てているアーシャは置いておく。
「さあ、ミーシャ。ミーシャは身体能力が上がったみたいだよな?熊でも倒すか?」
「熊ッスか!?ジークさん!正気ッスか?」
「俺の見立てでは苦戦しないと思うぞ?」
俺はオリハルコンの枝を渡す。一応、武器だ。
「・・・ジークさん、この枝、ヤバいッス」
「どうした?」
「重さが無いッスよ?」
「不思議だね」
「不思議ッスね」
「だから、伝説の鉱石だって・・・」
「まあ、とりあえず、それで熊を殴ってみようか」
「そうッスね」
「金色か・・・なんか親近感を感じるわね」
ミーシャは鼻をスンスン動かし、敵を探す。
・・・見つけた様だな。深呼吸をしてから走り出す。
おお!早いな!俺と同じ位じゃないか?
念のため、俺も後を追う。
本気で走ってようやく追い付けた!流石、犬の獣人!
「い、行くッスよ!」
「おぅ!軽く捻って来い」
「捻る?こうッスか?」
ミーシャはグッと溜めを作ってから腕を捻りながら熊に枝を撃ち込んだ!
コークスクリューパンチみたい。
そして、アホの子だ。やっぱりアホの子だった。
違うんだ。そうじゃ無い。
『軽く捻って来い』は『簡単にやっつけて来い』という事だ。
決して『腕を捻る』事では無い。
だか、それで熊は上半身が吹き飛んだ!
「おっ?予想以上の強さになったな!」
「いや、ほとんど武器のおかげッスね。ほら?」
ミーシャが枝を一閃する。
ミーシャの周りにあった木の幹が切断される。
「体は辛く無いか?」
「何とも無いッスよ?」
「それなら上等だよ。俺が本気で走って、ようやく追い付けたくらいだからな」
「マジッスか?自分で分からなかったッス!」
うん。間違い無くアホの子だ。




