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24話

「そもそも、獣人と人間は共存出来ません」

「何故だ?魔物とは違ってお互いに意志疎通が可能だろう?」

「好き嫌いの問題も有ります。食べ物、寝床。簡単に言えばそれだけかも知れませんがね」

「それだけでは納得出来ないな」

「確かにね。本当にその程度だと思うわよ?元をたどれば・・・ね」

「すまんパトラ。俺は人間とは接点が無いから良くわかってないんだ。今の言い方だと、既に修復が難しい関係だとは想像出来るがな」

「はっきり言って人間は僕達を奴隷にしようとします」

「なんだと!」

「ジーク、こんな所で怒らないで!」

「あ、ああ。すまんな」


俺はつい、ミーシャとアーシャが奴隷として追われる想像をしてしまった。


「もちろん、全ての人間では無いですよ」

「そうなのか?」

「はい。村の店に品物を卸しているゴルドさんとか普通に接してくれますし」

「そうね、街でも獣人を見た事もあるしね。問題は貴族の連中なのよ。いや、国の中枢ね」

「僕達は自然を好む性質を持っていますが、何よりも王国の首都から離れたいんです」

「王国・・・」

「ごめんなさい。ジークには教えてなかったわね。ノースティン王国。人間至上主義の連中よ」

「なるほどな、パトラが街を追われる原因はそこだったんだな」

「パトラさんを・・・何て奴らだ!」

「スティーブも落ち着きなさい。私はおかげさまでジークに出会えたから気にしてないわ」

「パトラ・・・ごめんな、石をぶつけて」

「アレは痛かった!もんのスゴい痛かった!」

「あっはっは!時効だな!水に流そう!」

「あなたが言うの!?」


「ジークさんとパトラさんは本当に仲が良いですね?」

「そうなんス!使い魔のウチを差し置いて!」

「え?使い魔?ミーシャさん・・・でしたよね?どういう事です?」

「「あ」」


そういえばスティーブに言って無かったな。ミーシャが俺の使い魔だって事。でも奴隷みたいな扱いじゃないし。命令してないし。特に問題無いな。


・・・無いよな?


一応、獣人二人との出会いを説明してみた。

ついでに俺の穴掘り魔術と硬質化魔法もザックリ説明する。ミスリルの件は内緒だ。

どう思われるかは知らんが、スティーブは信用出来そうだからな。


「そういう事があったんですね。ミーシャさん、アーシャさん、大変でしたね」

「それでもジークさんに逢えたッス!今は幸せッスよ?ただし、女性として見られてないのが無念ッス」

「私は幻獣のパトラさんと知り合えたのが夢の様です。何か、お手伝い出来る事があればいいんですが・・・」

「アーシャには毛繕いをお願いしてるんだけど最高に上手いのよ!ジークも覚えてね?」

「何でだよ!?」


俺達は笑いながらお茶を飲んでいた。

暗くなって来た頃、スティーブは帰って行った。


本当はビールが欲しい所だったが我慢する。

先日の宴会は楽しかったがコイツらの酒グセの悪さは半端無い。特にパトラ。俺の目が黒い内は絶対に酒は飲ませない!絶対にだ!


アレは酷かった!周りの村人を集めて演説!俺の事を好き勝手に宣伝しやがって!幻獣の威光をフルパワーで発揮してまでな!

おかげで、村の皆が俺を神様の様に語る始末!居心地の悪さは筆舌に尽くしがたい!


挙げ句の果てに次の日に問い詰めると「記憶に御座いません」だと!?どこの政治家だ!頭に来た俺はパトラの首根っこを持って川に投げ入れた!


流石に反省した様だが俺は二度と忘れない!!




村長の願いが順調そうなのでホッとひと安心。

これからパトラと相談する事がある。


次の日の朝、パトラを部屋に呼んだ。


「昨日のスティーブの話で魔物を食べると強くなるって話が出たな」

「本当にびっくりよ!まさかレベルとか経験値とかが存在するのかしら?」

「数値にはならないが何らかの能力の継承が有るのかも知れない」

「・・・面白そうね。あなたの顔もニヤついてるわよ?ちょっと気持ち悪いわね」

「失礼な猫だな!っと、冗談じゃ無くて俺もワクワクしてきた。生き残るって目標から、強くなるって目標にステップアップもいいかもな」

「うふふ、私は魔王になるつもりは今のとこ無いけど、魔王よりに強くなるなら楽しみね」

「村が落ち着いたら暴れてみようか?」

「あら、悪い顔!ある意味素敵よ?ゴブリンらしくて!」

「フッフッフッ、ファッハッハッハー!」

「うふふふふ・・・」



「ジークさんの部屋から魔王みたいな笑い声が聞こえるッス!スッゴい怖いッス!」

「ジークさんとパトラさんの声だと思うけど、何故か戦慄を覚えます」



強い魔物か・・・勝てるかな?パトラもいるし、大丈夫かな?大丈夫だな!

オラ、ワクワクすっゾ!


ふざけてたらお客さんが訪ねて来た。

「ジーク様?例の行商さんがいらっしゃいましたよ?都合は付きますか?」

「おお!今行くよ!」

俺はミスリルの石を二個とグレイブを持って店に向かった。


「待たせたかな?」

「本当にゴブリンが・・・は!失礼しました。ワタクシ、ゴルドと申します」

「ジークだ。見ての通りゴブリンだから固くしないでくれ」

「いえ、村の英雄と聞いておりますぞ」


くっ!パトラめ!


「本当に、それほどでは無いんだが」

「そして、その手に持つグレイブですかな?ミスリルでは御座いませんか!?」

「そうなんだ。このミスリルについていくつか話をしたくてな。店の人に無理を押して繋いでもらったワケだよ」

「いえいえ、ワタクシとしても大変興味深いですよ」

「それで、早速だか、ゴルドさん。俺にミスリルの価値を教えてくれないか?」

「一言で言うと、拳の大きさで家一軒。というのが相場ですね」

「なら、このグレイブのサイズならどうだろう?」

「確認させて頂きますが?」

「構わない。検分してくれ」


実は懐にミスリルナイフも隠し持っている。グレイブの強奪も視野に入れて、だ。

店の中ならグレイブを振り回し辛いだろうからな。


「とんでもない純度ですな!これなら王国の首都にも家が建つ程ですよ」


すんなり返してくれた。何事も無くて良かった。


「これよりも上の武器は用意出来るか?出来れば槍に近い形がいいが・・・」

「・・・無理!ですな。ミスリルの量、純度。とても見合う物は御座いません。王族であれば国宝クラスの何かが有るかも知れませんが・・・」

「となると、このグレイブは国宝に近い価値。という事か?」

「少し違いますね。グレイブとしてでは無く、グレイブの形をしたミスリルとして、ですよ!」

「ほう?」

「正直、グレイブとしての出来は悪い!しかし、グレイブ風のミスリル鉱石としてなら、逆にそれ以上の価値が出る!」

「素晴らしい商いだ!あなたは信用出来そうだ」

「ふふ、ワタクシは試された様ですね」

「すまない。適当な奴にコレの価値を決められたくはなかったからな」

「それはそうでしょう!それ程の一品です!」

「では、ゴルドさんが良ければ取引をさせてくれ」

「本当によろしいので?」

「こちらも必要なモノがあるんだよ」

「是非、交渉させて頂きます。が、場所を移しませんか?人前では加減が難しいので」

「全くだな。俺の家でもいいか?」

「よろしくお願いします」


さて、出来る商人のようだ。

ここからは俺の、原田 久の営業テクで勝負だな!


「それではこちらの必要な品だ。このグレイブと引き換えと思って欲しい」


前持ってアーシャに書き出してもらった木の板を渡す。この時点では結構吹っ掛けてある。


「まずは武器だ。変わりとなる武器が必要となる。しかし、先程の話では難しいとされたんでな、少し譲歩しよう。俺が使い慣れているのはグレイブだ。切れ味の鋭いグレイブを頼みたい。」

「もちろんですとも!駄作を変わりとして渡す訳にはいきませんからね!」

「次に奴隷を頼む。獣人と人間では価値が変わるのかな?」

「どちらもピンキリですな。私の信頼する奴隷商人がおりますので手配しましょう。どのような者がお望みでしょうか?失礼ですが虐待は認めませんぞ?」

「はっはっは、もちろんだ。こちらの望みは家を建てれる技術者。後は小物を作れる技術者の二人だ」

「戦闘用の奴隷はよろしいですか?この辺りは魔物も多い様ですが?」

「そうだな・・・パトラ、来てくれるか?」


もったいぶってパトラさん登場。


「呼んだかしら?あら、お客さん?」

「猫がしゃべ・・・失礼。ワタクシはゴルド。商いをしております」

「そう、パトラよ、よろしくね」

「・・・はっ!まさか・・・幻獣、金華猫!?」

「正解。凄いねゴルドさん。流石商人、物知りだ」

「た、大変失礼を致しました!」


ちょっと刺激が強すぎた様だ。まさかのDOGEZA!


「そんなに怖がらなくてもいいわ。意味も無く暴れたりしないから。ふふふ」

「平に!平にご容赦を!」

「パトラ、尻尾で脅すなよ。俺の商談中だよ?ゴルドさん、どうぞ椅子に掛けてくれ」

「はぁ、失礼します・・・」

「あら、少し遊んだだけよ?」

「ゴルドさん、見ての通りだ。この辺りの魔物には何も出来ないよ」

「その通りですな」

「奴隷の件はゴルドさんも確認してくれると助かる」

「お任せ下さい!きっと満足する人材を探します!」


いい感じの流れだな。最後にもうダメ押しだ。


「最後になるが、ゴルドさんは魔道具の取り扱いはあるか?」

「御座いますとも!残念ながら軍で管理するような殺傷性の高い物はほとんど無いのですがね」

「具体的には?」

「茶碗を温める道具、また、冷す道具。水の出る道具に照明の道具。少し高いですが結界、障壁、治癒促進の魔道具も有りますよ」

「なら、コレも上乗せで一通り用意出来るか?」


ミスリル鉱石にした石を1つつテーブルに上げた。

カジノで勝負を仕掛けている気分だ。

さあ、どうか?


「う・・・んー・・・」


もう1つも出す。

「どうだ?」

「商談成立とさせて頂きます!」


決まった!

先にこちらが優位に話を進めて、後からギリギリ納得の対価を用意する。

営業の極意だ。もったいぶるのがポイントだ。


パトラがなんとも言えない顔をしてこっちを見てる。

セコいって言うな!お互い満足の結果なんだ!


「ジーク様。素晴らしい腕前でしたね」

「ゴブリンとは思えないだろう?」

「完敗ですね!しかし、気持ちのいい商談でした。このヒリヒリする感覚はまさに『あきない』。はっはっは!」

「俺も燃えたよ?ふふふ・・・」

「・・・良く分からない世界ね」


パトラは理解出来ないだろう。単純に値切りそうだしな。暴力で。


「ワタクシと一緒に商人をしませんか?」

「いや、他にやることがあるからな」

「そう・・・ですか・・・非常に残念です。しかし、これを機会に是非とも今後、良い関係を!」

「こちらこそ頼むよ!」


俺達は固い握手を交わした。


このゴルドさんは本当に信用出来そうだ。俺をゴブリンと侮る事無く、誠実に商談を進めてくれた。

他の人間もこんな風に出来ればいいのにな・・・。


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