23話
「パトラ、ミスリルについて詳しく教えてくれないか?俺のグレイブに違和感が有るんだが?」
「ミスリル?ごめんなさいね、前に教えた情報以上は私も知らないのよね。私は武器を使わないしね。それで、違和感ってどんな感じなの?」
「まず、直接ぶつかってる気がしない」
「そうね、凄い威力の砲撃みたいになってたわ」
「詳しい人って心当たりある?」
「・・・前の街には何人か居るわ」
「そうか。なら、村長に聞いてみるかな?」
「・・・というわけで、村長、詳しい人に誰か覚えが無いかな?」
「店をやってる儂の孫なら何か知ってるかも知れませんが?」
「村長の孫だったのか。じゃ行ってみるよ」
物々交換で営業してる村唯一の店に行ってみた。
「頼もー!聞きたい事が有るんだが?」
「あらジーク様!いかがなさいました?」
「突然すまんな。ミスリルって知ってるか?」
「ジーク様のグレイブもミスリルですよね?」
「おお!見て分かるんだね」
「これでも店を切り盛りしてますからね?ふふ」
「実は俺がミスリルの性質を分かってないんだが、知ってる事を教えてくれないか?」
「そうですね・・・魔法金属と呼ばれていて、凄く硬いのに魔力を通しやすい」
「ふんふん」
「ミスリルを使った武器は魔力を吸収し、纏いますね。魔力の強い人なら城の城壁に穴を空けるそうですよ?」
「そっか、魔力を吸って纏う・・・か」
「後は非常に珍しい鉱石なので入手が困難。人間の街なら価値は・・・拳くらいで家一軒」
「お、おぉ。もしもグレイブ一本なら?」
「貴族のお屋敷とか?そこまでは自信が無いですけどね。今度、行商の方に聞いてみましょうか?そろそろ品物を卸しに来る頃ですし」
「俺が直接話しをする事は出来るか?」
「・・・私と一緒なら多分大丈夫だと思います」
「じゃ、品物の取引が終わったら教えてよ」
「分かりました。その武器を売るんですか?」
「分からないな。このグレイブ以上の武器が有れば考えるよ」
「ミスリル以上の武器なんて・・・」
俺は店を後にした。帰りに川へ寄って拳くらいの大きさの石を拾った。
家でこっそりミスリルにして準備しておく。
そして、いつもの土木作業。それも、残りわずかな所まで来た。
穴堀魔術を駆使して、空堀を作る。魔力の修行も兼ねているおかげで、かなり凶悪な威力を誇るようになった。
なんと一発で5メートルくらいの距離を掘り出せる。
村を囲うように深さ3メートル位、幅2メートル位。
メジャーもないのでハッキリとは知らんけども。
階段も2ヶ所作った。村人達には村長を通して連絡済みだ。
他には東西南北に橋を掛けた。ここだけは本気で手を掛けた。主にミーシャが。
なんと、跳ね橋を作ってくれた!1本を2日で造り上げて取り付けた。流石にこの時は村人達にも手伝ってもらった。使い方もその時に教えてある。
他にも、空堀の向こうからロープを揺らして跳ね橋をおろしてもらう仕掛けを作った。
合図を鳴らしてしばらく待てば村人が橋をおろしに行く手筈だ。
翌朝、村長からお呼びが掛かった。
「ジーク様。この度は本当にありがとうございました!これで村人も安心できましょう」
「村には俺達も住まわせてもらってるからな」
「村人達なら1年は掛かる作業を僅か10日程で終わらせるとは・・・感服致しましたぞ」
「跳ね橋を掛ける時には皆にも手伝ってもらったからな。こちらも助かった」
「自分たちの村ですからな。これからも皆が皆の為に助け合ってくれれば何よりですな」
「そうだな。1人1人が自分に出来る事をすれば村は存続出来る。更に発展する事も出来るだろう。俺達は最初のほんの僅かな手伝いをしただけだが」
「ご謙遜を。魔物や野生の動物に襲われづらくなるだけでも大きな一歩ですとも!・・・これで私も次の世代へ長の任を譲れるというものです」
「次の世代?譲る?」
「実を申せば私も高齢、ジーク様の造って頂いた空堀を見回るのも難しいのでございます」
「そうなのか・・・次の候補でも居るのか?」
「熊の獣人でスティーブがおります。いや、まだ納得してはおりませんが・・・」
「何か資質が有るのか?」
「資質というのは難しいですが、そうですな・・・以前、負けた事が有る。と。試すようで申し訳ございませんがジーク様、お分かりになられますかな?」
「そうだな・・・傲慢にならない。弱い者の気持ちが分かる。といった所か?」
「ご明察でございます」
「上手く出来るかは分からないが、そのスティーブと話しをしてみてもいいか?」
「是非ともお願いしたいと思っておりました。ジーク様とパトラ様が説得して頂ければ、彼の考えも変わるかも知れませんので」
その日の夕方、熊の獣人スティーブが我が家を訪ねて来てくれた。
「ジ、ジーク様のお呼びと聞きましたが?何か粗相でもありましたか!?」
「あぁ、内容は聞いてないんだな?分かった。まずは楽にしてくれ。後、堅苦しい態度も無しで頼む。俺が疲れちまうからな。はっはっは」
「じゃ・・・ジークさんと呼んでもいいですか?」
「もちろん構わない。急に呼び出して悪かったな」
「とんでもない!ジークさんに助けてもらわなかったら、今頃は・・・」
「それは気にしなくていいんだぞ?この村に用事が有ったのは俺達だし、今もこの空き家を使わせて貰ってるしな!」
「ええ、出来るならずっとこの村に」
「それだ!俺が話しをしたいのはその件なんだ」
「なるほど、そうでしたか。なら、ジークさん、改めてこの村をお願いします!」
「ちがーう!そうじゃない!俺達はスティーブに村長を頼みたいんだ!」
「ダメですよ!僕じゃこの村を守れない!僕じゃ、僕じゃダメなんですよ!」
「何か理由が有るのかしら?」
ミーシャがお茶を用意してくれた。美味い。
「僕は負けて逃げ出してきたんです。他の村から」
「で?それがどうしたんだ?」
「どうした・・・って、村を守れない獣人が村長になったら村が危なくなりますよ!?」
「どうやったら村を守れる?」
「そりゃ、ジークさんやパトラさんみたいに強い人が村長として務めてくれれば問題無いでしょ?」
「俺達が居なくなったらどうなる?」
「・・・他に強い人を探して雇ったり」
「最初からそれでいいんだ。俺達を戦力として使ってくれればいいぞ」
「でもジークさんが村長をやってくれれば何も苦労は無いですよね?」
「なら、俺達はこの村を出ていく」
「ええ!?何でですか!?」
「俺は村の将来に興味が無い。酷な事を言えばこの仲間達が無事ならそれでいい。」
「そんな・・・」
「村の事は村の獣人が決めて、村を発展させて、村を広げ、村を守ればいい。いや、そうで無ければならないんだ」
「ジークさん・・・」
「それで、スティーブが負けた相手ってのは、もしかしてミーシャ達の村の長か?」
「大岩の塚から森を抜けた先の村ッス!村長の名前はノラーブッスよ?」
「はい。間違いないです。ノラーブが僕の兄です。跡目の話になった時、兄は強い者がなるべきだと言い出しました。僕はそうじゃない。村人の世話を出来るのが長になるべきだと喧嘩になりました。村の皆に判断を求めた結果、僕達は暴力に屈して逃げ出したんです。この村もやがて、そんな事にならないかと心配しているんです」
「はっきり言って、可能性は有るな」
「そうですよね・・・」
「だが、それなら、そう思う奴が出て行けばいい。何より、ミーシャ、アーシャの二人は強さが全ての村が嫌で俺が連れ出した。つまり、強いだけなら村人はいずれ、ついて行けなくなるんだ」
「・・・なるほど」
「そして、実際、ドーマは上手に長の任をこなしていると思うぞ。強さは関係無いだろう?」
「そうですね!少し自信が持てました!」
「ドーマは俺、ゴブリンと向き合って、戦うか交渉か撤退か・・・おそらく、全ての選択肢を持っていただろうよ。スティーブも色んな事を教えてもらいながらドーマの手伝いから始めたらいいと思うぞ」
「・・・分かりました!やれるだけやってみます!でもジークさんも助けて下さいね?」
「そうだな。少なくともこの村が安定するまでは協力させてもらおうか」
「なら、村の相談役ですね!」
「たいした事は出来ないと思うぞ?」
「まさか!村の空堀だけでも偉業ですよ!・・・でも、ジークさんの知識とか能力は本当に桁違いですね?どうすればゴブリンの身でそこまで?」
アーシャがお茶を用意してくれた。ゴメン、苦い。
「そうだな・・・知識は勉強だな。他人に教えてもらう事も大切だ。他人の考え方と自分の考え方を比べれるからな。能力は・・・正直言って俺も疑問なんだ」
「どういう事ですか?」
「オークキングより強いゴブリンってのは聞いた事が無いよな?」
「私もびっくりしてるのよ。私はケットシーから幻獣に進化出来たんだけど、ジークはゴブリンのままなのよ。鑑定魔法も使ったから間違いないわ」
「魔力の修練はしているが、他は訓練していないんだ。この体の模様も意味が分からないしな」
「つまり、禍々しい模様があって、自然と強い。そんなゴブリンなんて私も知らないのよ。スティーブは何か聞いた事が有るかしら?」
「強い魔物を倒したとか食べたとかですかね?」
「え?強い魔物食べると強くなれんの?」
「はい。だから魔物がでる地域は、それぞれの地域の魔物の強さが一定になりやすいんですよ?」
「パトラ、知ってた?」
「自然界の魔力で魔物の強さが変わると聞いていたわ。初耳で驚いてしまったわ!」
「獣人達は何となく気付いてましたよ?人間とはあまり仲良く出来ないので教えて無いかも知れませんね」
「・・・その辺りを詳しく教えてもらえるか?」
どうやら、メタルなスライムは強かったらしい!
そりゃ、ケットシーのアゴの力にも負けない皮を持ってたしな。レア種族だしな。
でも、もう二度と食べたく無いな・・・死ぬよりマシかな?
それより、獣人と人間の関係が気になるな。
この際だからスティーブに教えてもらおう!




