22話
「さて、パトラ。俺達が戻って来たとき、なんでワッショイしてたんだ?村長の態度も格別だったんだが何故だ?」
「私の正体に気づいた獣人がいたのよ。金華猫ってね」
「そんなに有名なのか?金華猫様は」
「ジークさん、まさか知らないんですか?金華猫は幻獣ですよ?」
「いや、幻獣だからなんだ?って感じなんだが」
「有名ッスよ?そもそも幻獣ってそんなに居ないッス。金華猫と白銀狼、極楽鳥と、えっと」
「金獅子ね」
「それぞれ一体しか存在出来ないって言われてます。そして魔物を統べる力を持つとも・・・」
「え?パトラ、魔王になるの?」
「パトラさんは魔王なんスか?」
「なるわけ無いでしょ?面倒だわ」
「なろうと思えばなれるんですね・・・」
「まだ無理よ。ドラゴン一体がやっとじゃないかしら?」
「パトラって凄いんだな。強いのは分かってたけど、それほどとはな」
「敬ってくれてもいいのよ!」
「ああ、無理だな」
「照れてるのかしら!?」
「ウザイ!」
「本当に、ジークさんとパトラさんは仲良しですね」
「うぅ!妬けるッス!こうなったらウチはジークさんと一緒に寝るッス!」
「「却下だ!」」
「諦めなさいよ?ミーちゃん」
「無念ッス!いつかハートを撃ち抜くッス!」
「さて、部屋割りだが・・・俺は入り口に近いこの部屋を使う。もしかしたら急な来客もあるかも知れないしな」
「私は隣の物置きでいいわよ」
「マジで?ああ、そうか。一部屋は余すもんな?すまん、アーシャ、片付けるから手伝ってくれ」
「はい、いいですよ」
「あれ?ウチ達が二階の大きな部屋ッスか?」
「そうだな。二人で一部屋だから大きい方がいいだろう?」
「今まで六人で一部屋だったッス。二人ずつベッドを使ってたんスよ?本当にいいんスか?」
「あぁ、構わない。夜にあまり騒ぐなよ?」
「子供じゃないッス!」
皆で笑いながら夜を迎えた。家っていいな!
違うな、家族みたいなのがいいのか?
前は1人寂しく晩飯を食う生活だったからな。
物思いにふけっていると、
「ジーク?私、今晩はちょっと出かけるわね?」
「今から?どこに?」
「ひ・み・つ!」
叩こうかな?
いやぁ、ベッド。いいっすねぇ!決して品質は高くはないが・・・痛くない!腰も肩も痛くない!
俺は幸せな気分で眠りについた。
「ただいま、ジーク、いる?これ洗って頂戴」
「お帰り、本当に朝帰りだったな。なんだ?」
「私の荷物よ」
「食器?・・・はぁ!?お前、一晩であの住みかまで行って来たのか!?とんでもない体力だな」
「流石に寝不足よ。一度寝るわね」
「分かったよ。洗っとくからゆっくり休め」
俺は苦笑いで見送った。
さて、朝飯を狩って来るかな?まさに朝飯前!
オヤジギャグは許さないだろうな。パトラさん。
俺も朝からオークを殲滅した塚の辺りに走った。
居た居た。スライム達が・・・。
大きめな枝を4本硬質化してスライムを挟んで家まで持って帰る。
村の中でめっちゃ見られた。俺はおはようと声を掛けながら帰る。獣人娘達も起きて来たな。
「さて、朝飯食ったら働くぞ」
「はいッス!」
「何をやればいいんでしょう?」
「一応村長に話しをしてからだがな・・・俺は柵と空堀を作る。お前達にもお願いする事があるけどな」
早速、村長を訪ね、許可を取る。二つ返事のオーケーが出た。
村の雑貨屋さんにロープを大量に貰いに行く。正確には物々交換だ。スライム二匹で3束もくれた。村の為なのを理解しているのだろう。
俺もお礼を伝え、もう一度村長の元へ向かう。
「村長、村はどのくらいの広さが望みだ?」
「欲を言えば畑の分も欲しいですな。家も他に10件程場所が有れば助かりますの」
「なら・・・川からあっちの森までの広さで空堀を作ろうか。10日位掛かるかな?」
「・・・ご冗談を。村人を全員参加させる気ですかな?いくらなんでもそれは・・・」
「いや、俺達でやるよ。村人達はいつも通りでいいかな?あ、手に負えない敵がいたら遠慮無く教えてくれ」
「・・・分かりました。無理はなさらなくて結構ですよ?」
「そうだな、のんびりやらせてもらうよ」
俺の仕事は空堀作成に決まった。魔力の修行を兼ねて村の防備を整える所から始めよう。
まずはロープを張って空堀の目印を立てる。
獣人娘達はナイフと槍を作って貰う。他にも家で必要な物も粘土で作らせるか。
パトラには得意の狩りを頼んでおいた。この村の周りには森があって獲物も豊富らしい。獲物以外にもスライムのエサとしてゴブリンの死骸を狩ってくれている。
そして8日が過ぎた。
「ジーク様!パトラ様はどちらに!?」
「どうした?」
「オークが!オークが出ました!!」
「分かった。俺が行こう」
「え?ジーク様お一人で?奴ら十匹位居ますよ!」
「その程度なら問題無いかな?あ、空堀に落ちない様に気を付けてな。奴らはどっちだ?」
「川を少し下った所です!本当に大丈夫ですか?」
「分かった。しばらくしたら男手をよこしてくれ」
家に寄ってグレイブを握り締め、ナイフを2本指で挟む。こんなもんでいいかな?
少し急いで川沿いを進む。居た!奴らだ。
正面からだったのでオーク達も俺に飛び掛かる。
とりあえずナイフをダーツの要領で投げ、それぞれ仕留める。後は普通に振り回す。振り回す。
あれ?当たって無いのに、切れたり潰れたりしてるぞ?どーなってんの?
2分で殲滅完了。頼んでいた男手が来るのを待つ。
しばらく待った後、ようやく男達が来た。
随分と重装備だ。ん?戦う気で来たのかな?
そんなに着込んだら動けなくて、かえって危ないだろうに。
「ご無事ですか!?ジーク様!」
「問題無い。それより、どうしたその格好は?」
「村の者からジーク様がお一人でオークの群れを食い止めに向かったと・・・あれ?終わって・・・る?」
「2分位で片付けたぞ?むしろずっとお前達を待ってたんだが?オークは美味しく食えるんだろう?さっさと持って帰ろう」
「パトラ様が居ないのに?この戦闘力?」
「ほら、早くしないとスライムが寄って来るぞ?」
「は、はいっ!分かりました!」
オークを持って帰ったら俺達は英雄扱いだった。
今日は村の広場で宴だそうだ。せっかくなので俺達も参加させてもらった。
「私が居ない間に面白い事してたのね?」
「スネるなよ」
「危ない事はやめて欲しいッス」
「ミーちゃん?ジークさんなら大丈夫じゃない?」
「そうだな。問題無い。だが、パトラ、聞きたい事があるんだが?」
「どうしたの?」
「オーク、弱くね?」
「あの時は私もびっくりだったわ」
「どういう事なんだろ?」
「私は進化の途中ね。今でも日々強くなってるもの」
「そうなんだ・・・マジで魔王になれそうだな」
「もっと強い敵と闘いたいわ」
「あ、ヤベえヤツ発見。バトルジャンキー発見」
「え?どこ?」
「俺の目の前に居るよ!金色の毛皮のヤベえヤツ!」
「この気品漂う美人をつかまえて失礼ね!」
「猫ですけど?」
「あの、ジーク様。少しよろしいでしょうか?」
「おや村長、どうしたんだ?」
「ジーク様は本当にゴブリンなんでしょうか?信じられない強さと、見た目も・・・その・・・禍々しい感じも、儂の知るゴブリンとは随分かけ離れておるのですが?」
「アーシャ、魔法の事を伝えてもいいかな?」
「私はいいですよ」
「村長、実はこのアーシャは鑑定の魔法が使えるんだ。俺も鑑定してもらったんだが、ゴブリンだったそうだ」
「そう、ですか・・・いや、まさかジーク様も幻獣のお一人では無いかと思いましてな」
「それこそ、まさか。だろうよ」
「でも関係無いッス!ダーリンは最強ッス!ウチの為に悪者をやっつけるッス!」
「ミーシャ?どうした?」
「ミーシャ、ダメよ?お酒を飲んじゃ」
「誰だ?アホの子に酒を飲ませたのは?」
「すいません。あたしです・・・」
「アーシャ?ミーシャは酒が飲めるのか?」
「見ての通りお酒に飲まれます。面白いでしょう?」
「さてはアーシャも飲んでるわね?」
「宴ですぞ?たまには息抜きも必要でございましょう。この年で村を越えて来たのですから。心に溜まった疲れもあったでしょうとも」
「・・・そうか。ミーシャ、アーシャお前達も頑張ってたんだな。良し!今日は酒を解禁にしようか」
「「ヤッホーい!」」
「どうなっても知らないわよ?」
「最悪家まで持って帰るよ」
「ダーリンも大変ね?」
「それは勘弁してくれ」




