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19話

「ふつつか者ですが、末長くお願いするッス!」

「ちょっと待ちなさい!ミーシャ、どういう事なのかしら!?」

「ウチ、ジークさんにテイムの魔法を放ったんス。ジークさんも受け入れてくれてたんスけど・・・あまりに魔力の強さが違い過ぎて逆流しちゃったッス!」

「そんな事あるのか?」

「聞いた事が無いわ。相手が強過ぎて失敗するのは分かるんだけど、逆転なんてやっぱり聞いた事が無いわね」

「ミーシャ、・・・そもそも俺を使役する気持ちが有ったか?」

「無かったッスね!むしろ、ウチがジークさんの使い魔になった方が楽しそうだなって思ってたとこッスよ!」

「「それだな」」

「え?あ、え?でも、普通にテイムの魔法を放ったッスよ?特別に何かしたわけじゃ無いッス」

「違うのよ、確かにあなたはテイムの魔法を掛けたんだろうけどね」

「要は力加減とイメージの問題だと思うぞ?」

「どういう事ッスか?」

「そうね・・・例えば火の魔法なら炎を相手にぶつけるイメージよね?でも魔力が少なければ相手に飛んで行く前に自分の近くで爆発しちゃうでしょうね」

「なるほどッス・・・つまり、ウチがジークさんに魔力を届けれなかった、ウチに向かう様にイメージしちゃった・・・って事ッスか?」

「多分な」

「・・・まぁ、いいッス!!」

「いいのかよ!」

「いいッス!これでジークさんと一緒に居られるッス!!」

「ちょっとミーシャ!?どういうつもり!?」

「ウチ、ジークさんのお嫁さんになるッス!!」

「却下よ!!」

「なんでパトラが決めるんだよ?・・・まぁ、いいや。ミーシャ、俺はまだ結婚する気は無い。が、一緒に居る事は問題無い」

「ちょっとジーク!?」

「何より、俺も今のまま野生で死ぬまで過ごす予定じゃ無いんだ」

「でも、使い魔に慣れなかったんスから街には入れないッスよ?どーするんスか?」

「パトラ、誤魔化せば俺も街に入れるんじゃないか?ミーシャを見たところ、使い魔になったからって外見の変化は無さそうだが、どうだ?」

「見た目はね。街には登録所って・・・そうね、役所みたいな建物が有るの。そこでは個人情報を確認する魔道具が有って、簡単にバレるわよ?」

「なら、獣人の村ならどうだ?」

「・・・行けるかも知れないわね」

「いや、無理ッスよ?ウチの村には鑑定の魔法を持ってるウサギの獣人が居るッス!」

「いや、他の獣人の村に行く予定だ。ミーシャは故郷の村に未練は無いんだろ?」

「そうッスね・・・そのウサギの獣人は仲良しだったッスけど、ジークさんと一緒に居る方が楽しそうッス」

「・・・そのウサギの獣人も連れて行くか?」

「ちょっとジーク!?正気なの!?私達ならともかく、ミーシャともう1人の食糧とか大変よ?」

「俺の知ってる映画とかゲームでは、武器、食糧、情報の中でも情報が一番重要なんだ」

「何の話ッスか?」

「ミーシャは黙ってて!」

「酷いッス!ウチはジークさんのお嫁さんッスよ?」

「「断じて違う!」」

「はぁ。分かったわよ。そのウサギの獣人も連れて行きましょう。ただし、本人の意思を確認してからよ。誘拐なんて馬鹿な真似は許さないわ!」

「分かってる。俺らも誘拐の被害者みたいなもんだしな・・・」

「そうなんスか?」

「あぁ、詳しい事はそのウサギの獣人と会ってから説明するよ」

「ジークさんもパトラさんも何か秘密が有りそうッスね!なら、ウチも信頼してもらえる様に頑張るッス!」


俺達は作戦を考えた。結果的に一度、許さないと言われた誘拐をする事になってしまった。

もちろん、本人の意思を確認して嫌なら村に戻してあげる予定だが。

ついでにミーシャが泥棒的な事をしようかと提案してきたが却下した。村に迷惑を掛けたいワケじゃ無い。それに悪事はバレる。俺は魔物、それもゴブリンだ。が、日本人の感覚も持っている。


要は、心まで魔物をなりたくないだけだ。



「連れて来たッスよ!」

「おぉ、早いな!」

「昼は強い人達が狩りに出るから村は手薄ッス」

「やっぱり、その村長は役立たずね」

「・・・ミーちゃん、ゴブリンと猫が喋ってるよ?」

「お二人に紹介するッス!ウサギの獣人でアーちゃんッス!」

「アーチャンッス?」

「・・・名前はアーシャです」

「その口グセはややこしいわね」


少し、お行儀が悪いのは承知でアーシャを観察する。

聞いていた通りのウサギの獣人。

・・・リアルバニーガールだ!

ただし、服装は村人。ついでに言うと胸は無念だ。

あくまで『ついで』だからね!

年も中学生くらいだろうか?完全にアウトコースだ。

色気が無い。無念だ。


「ジーク、顔に出てるわよ?」

「全く、何の事か分からんな!!」

「このゴブリンが!」

「俺は無実だ!」


俺達はひとしきり笑った後、リンゴを食べながらアーシャと話をしていた。


「話は聞いてるかしら?」

「あたしとミーちゃんを連れて他の村に行くって聞いてますけど・・・」

「どうかしら?」

「まず、この森を出れるんですか?熊とか猪とか居ますよ?」

「問題無いな。むしろ、美味しいご飯だな」

「すいません、失礼でなければお二人を鑑定しても良いですか?」

「いいわよ。ジークもいいわよね?種族が分かるかもよ?」

「俺も構わない。むしろ頼む!」

「それではパトラさんから・・・」


サーシャが魔法を放つ。鑑定の魔法か便利だな。と思っていたら、強力な魔力がパトラに飛んでいった。ヤバいな、この魔法。


「パトラさん、いや、サチさん?偽名ですかね?えっ?サチさんって魔物じゃ無くて幻獣なんですか!?金華猫?初めて見ました!凄いですね!」

「あら、本当に凄い魔法ね。説明するより楽ね」

「ありがとうございました。次はジークさんですね。いいですか?」

「どんと来い!」


同じようにアーシャが魔法を放つ。ミーシャの魔法みたいに引き返すなんて事は無い様だ。

おぉ、ちょっと恥ずかしいけど、見られてる感があるな。いくつもの目がこっちをガン見している様だ。おかしな性癖なら興奮するかもな。少なくとも俺はしないが。


「本当の名前はヒサシさんですね。種族はゴブリン?あれ?見た目はもっと禍々しいのに、ただのゴブリン!?」

「進化出来て無かったのか・・・」

「元気を出して?あなたが強くなった事に変わりは無いわ!まだチャンスは有るわよ!・・・多分」

「最後に自信が無さそうだったんだが?」

「進化の方法は解明されて無いからしょうが無いでしょう?とりあえず、また修行をしながらメタルなアイツを食べましょう?」

「うわぁ、アレか・・・」

「ジークさん、ありがとうございました」

「納得してくれたかしら?」

「はい、あっ!呼び名はどうしましょうか?」

「パトラとジークで頼む。ミーシャもな」

「分かったッス!呼ぶ時はダーリンでもいいッスか?」

「「却下!」」

「うーん。残念ッス!お二人の絆にはまだまだ敵わないッスね」

「ジークさんはゴブリンなのに何で喋れるんですか?」

「・・・それを教えるのはアーシャが一緒に来るかどうか次第だな」

「はい!行きます!行かせて下さい!パトラさんみたいな幻獣が居るなら安心ですし」

「ジークさんも強いんスよ?」

「ミーちゃん?ゴブリンって最弱種族なんですよ?あたしみたいなウサギの獣人なら魔力が、ミーちゃんみたいな犬の獣人なら俊敏な動きが出来るけど、ゴブリンって繁殖力だけなのよ?」

「ボロクソ言われてるんだが・・・」

「ジーク・・・何度も言うけど事実なのよ?」

「分かってるから反論出来ない・・・」

「ジークさんは凄いッスよ!!ウチのご主人様やってるだけの事はあるッス!!」

「え?ご主人様?どういう事?」

「落ち着いて聞いてくれ、まずは俺から今までの事を話すから」

「ウチにも分かる様にお願いするッス!」

「難しいな」


俺とサチは最初、この世界に召喚された事からゆっくりと説明していった・・・



「ジークさん、パトラさん・・・ウチ達と一緒に頑張るッスよ!!」


アホの子ミーシャに励まされ、複雑な心境になった俺だが、隣のアーシャには流石に引いた。

涙と鼻水とヨダレを垂らして号泣していた。いや、サチに会えたからそんなにはツライ思いはしてないんだが・・・。


「じーぐざん、ばどらさん!がんばっでびぎでいぎまじょうで?」

「何を言っているか分からないんだが?」




ウサギの獣人アーシャ、鑑定の魔法を持っている。

どうやら愉快な仲間が出来た様だ。しかし、俺って進化出来て無かったのか。・・・泣きそう。


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