18話
昨夜はアホの子、犬の獣人ミーシャがスライム用の罠にハマって騒いだせいで俺は寝不足気味。
挙げ句の果てに身の上話を聞いて同情してしまった俺とサチ、改めパトラはアホの子をしばらく面倒をみる事にした。
「おはようッス」
「ああ、おはようさん」
「あら、起きたのね。おはよう」
「サ、パトラ、スライムは捕獲出来てるか?」
「ちょっと待ってね・・・大丈夫、たくさん居るわよ」
「1人一匹でいいかな」
「もしかして朝からスライムッスか!?」
「嫌かしら?」
「そんな事は無いッス!スライムなんて美味しいヤツを朝から食べれるなんてびっくりッス」
「でも毎日は飽きるぞ?」
「なんて贅沢言ってるんスか!?」
「贅沢なのか?」
「ウチのいた村はご飯が無しの日もあったッス」
「おかしいわね。ミーシャの村は何人くらい住んでるの?」
「ウチも入れて22人、その中で狩りが出来るのは7人ッス」
「・・・村が飢えるってのは解せないな」
「熊にケガをくらったり、ゴブリン達に狩り場を荒らされたり、思った通りに行かない事も有ったッス」
「・・・パトラ、もしかして獣人って皆、頭が悪いのか?」
「多分、村長に問題があると思うわ」
「でも、村長が村で一番強いッスよ?」
「強い事と飢えさせない事は別問題だ。ワナとかリンゴとかあるだろう?このスライムだってそうだしな」
「そう言えば、不思議なんスけど、何で穴にスライムが居るッスか?」
「そこからかよ!?はぁ。ミーシャはスライムのエサって分かるか?」
「魔物とか動物の死骸ッス」
「スライムが入れるけど、出れなくなる所にエサを置いたらどうなる?」
「スライムだけ、残るッス」
「それがワナって事だよ」
「でも、死骸も無くなるッス!肉をスライムに食べさせるなんて考えられないッス」
「エサは食べない部分とか食べられない部分な」
「全部、焼いたら食えるッスよ?」
「後はゴブリンの死骸とかな」
「ゴブリン達の死骸は強さの証ッス。村に飾るッスよ?」
「その掟を作ったのも村長なのかしら?」
「そうッス、村長は偉いッス!!」
「アホの子の村は、村長もドアホだった・・・」
俺とパトラは村が飢える原因が分かってガッカリした。救いようが無い。村長をすげ替えるしか無いんじゃないか?このままだとミーシャの村は滅びる事もあり得るぞ?
強い者だけが生き残り、弱い者が飯を食えないならそれは村じゃ無い。強い者が分け与え、弱い者はサポートし、子孫を残す。魔物ですらやってるぞ?
「ミーシャ・・・村に未練は無いか?」
「仲の良い村じゃ無かったッスね。弱い種族は奴隷みたいになってたッス。」
「ミーシャはそれを受け入れてたのかしら?」
「そんなワケ無いッス!でも熊とかゴブリンとかが居る、この森では1人では生きていけないッス」
「村では他にどんな種族がいるんだ?」
「村長が熊の獣人で、後は犬、猿、猫、ウサギ、タヌキ・・・ネズミの獣人もいるッス」
「村の人達は皆、魔法を使えたか分かるか?」
「子供じゃないなら全員使えると思うッス」
「ミーシャの魔法は戦闘用じゃないって昨日は言ってたわよね?どんな魔法なの?」
「テイムッス」
「なんだ?それ?」
「あら、テイムなんて凄いじゃない!」
「凄いッスか?初めて言われたッス」
「パトラ、テイムってなんだ?どんな魔法か教えてくれないか?」
「あら、ジークは知らなかったのね。テイムって魔法は魔物を使役する、もしくは従わせる魔法よ?」
「・・・力づくで?」
「正確には主人、つまり術者に対しての忠誠心を与える魔法よ?考え方によっては精神系、契約系の魔法とも言えるわね」
「恐ろしい魔法だな!無条件で命令出来るのか?」
「まさか!従わせた魔物は使い魔って呼ばれるのだけれど、本人の意識は普通に有るわ。強制的に命令するには魔物の抵抗力以上の魔力が必要よ。」
「その契約は破棄出来るのか?」
「術者である主人が死んだら解放されるわね。」
「・・・パトラの世話になったメーベルの婆さんもテイムの魔法を使えたのか?」
「良く分かったわね。」
「テイムの魔法に詳し過ぎるからな。後は使い魔ってワードだな」
「そうね。私は召喚された後、すぐにテイムの魔法を掛けられたわ。でもね、抵抗出来なかったワケじゃ無いのよ?メーベルの婆さんは私の人格を認めてくれたからなの」
「どういう事だ?」
「私の方が魔力が強かったのね。でも、婆さんと話し合いをして私からテイムを受け入れたってワケ。つまり、テイムは魔力が強ければ強制出来るけど、魔力が弱くても、説得で成立させる方法もあるのよ?有名な話では魔物が赤ちゃんの時に契約しちゃうとかね」
「魔物に殺されたりしないのか?」
「有るわ。主人に悪意を持った攻撃は出来ないんだけど、他の魔物に殺させたり、主人が自滅する様に仕向ける事は出来るのよ?」
「・・・パトラさん、凄いッス!!テイムの魔法を使えるウチより詳しいッス!!」
「会話出来る魔物は少ないからね、仕方ないわよ」
「ミーシャは今、テイムしている魔物は居ないのか?」
「居ないッス。実は魔物だけじゃ無くて動物も出来るんスけど、村に連れて行ってたら食われたッス」
「切ない!」
「一度、ゴブリンも連れて行ったら村長が殺しちゃったッス」
「戦力として数えるとは考えなかったのかしら?」
「無理ッスね!ウチがゴブリンをテイム出来ても強制する程の魔力は無いッス!」
「反抗的な魔物はテイムするだけ無駄って事か」
「ミーシャ、テイムのメリットは知ってるわよね?」
「言うこと聞かせれるッス!」
「他には知ってるの?」
「他に・・・他に?なんかあるんスか?」
「使い魔を連れて街に入れるの!」
「なんだって!?なら俺をテイムしたなら普通に街で買い物も出来るって事か!?」
「手続きを済ませれば大丈夫よ」
「・・・パトラ、質問がある」
「何かしら?」
「ミーシャに勝てるか?」
「一瞬ね」
「酷いッス!!」
「ミーシャ、俺をテイムしないか?」
「え?ウチがジークさんをテイム!?」
「どうだ?」
「・・・パトラさんは納得するッスか?」
「ジークがいいなら構わないわ。ただし!あなたがジークに悪意を持って命令したら・・・あなたの寿命はそこで終わりよ?分かってるわよね?」
「怖いッス!!でも大丈夫ッス!!そもそも命の恩人に命令なんてしないッスよ!」
「パトラ、他に気を付ける事はあるか?」
「いえ、特には無いわね。気に入らなければ殺すから大丈夫よ。いつでも気軽に言ってね?」
「気軽に殺されるッス!!」
「分かった。頼むぞパトラ。・・・じゃあミーシャ」
「いくッスよ。気に入らない事があった時は、パトラさんの前にウチに絶対、絶対、ぜーったいに先に言うッスよ!?」
ミーシャは俺に体を向けて魔力を集め始めた様だ。
俺に向かって熱風が飛んで来る様だ。
なるほど、これにビビったら服従という事かな?俺は腕を広げて無抵抗を示した。・・・が、熱風が通り過ぎ、ミーシャの魔力が俺に直接当たる直前、魔力の塊はミーシャの胸に引っ込んでいった。
すると、ミーシャは目を閉じてゆっくりとその場に倒れ込んだ。
ミーシャが目を覚ましたのは次の日の朝だった。
「ウチ、ジークさんにテイムされちゃったッス!!」
・・・「「は!?」」




