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17話

「待って!助けて欲しいッス!!」

どっかで見た光景だなぁ。と思いながらとりあえずは観察。犬?人?何だ、この生き物は!?

念のため、慎重に様子を見よう。サチも木から降りてきた。


ずいぶん背が低い。と、思ったら立ち膝だった。

足首が痛そうだ。どうやら着地に失敗したらしいな。

髪の毛は短めでクリクリ。瞳がキラキラしてる。っていうか涙目だぞ。痛むのか?

胸は・・・見当たらない。男の子かな?

声は女の子みたいなんだがな?

お?牙があるな。いや、犬歯が発達してるだけかな?

服はザ・村人だな。ゴブリンや熊が出る森。さらに夜だぞ?正気か?

もしかして、手練か?でも、ワナに落ちてるし・・・


「あら、犬の獣人のようね」

「ぎゃぁぁぁ!猫がしゃべった!」

「失礼な犬ッコロね」

「・・・犬の獣人!?」

「ぎゃぁぁぁ!ゴブリンがしゃべった!」

「失礼な犬ッコロだな」

「殺っちゃいましょうか?」

「待て待て!先に話をしてみよう」

「降りちゃダメよ?」

「分かった」

「ゴブリンと猫が話をしてるッス!?あり得ないッス!?もしかしてウチはもう死んでお迎えが来てるんスか!?」

「やかましい!話を聞け!」

「なんか刺青の入った邪悪なゴブリンッスね!?こっち来るなッス!!」

「トドメ刺そうかな?」

俺は薙刀を構える。

「サーセンシタ!!」


こっちの世界も土下座ってあるんだな。


この世界がファンタジーなのは理解していたが、まさか、獣人が存在していたとは・・・。



「とりあえず話をしようか?あまり騒ぐと本当に他のゴブリンが寄ってくるぞ?」

「はいッス!ゴブリンさんと猫さんは何で喋れるんスか?」

「分からないわね。頑張ったからかしら?」

「サチ・・・」

「いいから。あなたは見てて?」

「分かった」

「頑張ればゴブリンも猫も?・・・いや、そんなバカな・・・」

「で、あなたは何をしに来たのかしら?」

「お腹が空いて食べ物探してたら肉がぶら下がってたッス!!」

「それでワナに掛かったのね?スライム用なのに。だって落とし穴にすらしてないのよ?」

「肉を見ながら近寄ったッス・・・」

「馬鹿ね」

「馬鹿だな」

「警戒するだけ無駄じゃないかしら」

「酷いッス。ゴブリンと猫に馬鹿にされたッス」

「お前の名前はあるのか?」

「もちろん有るッス!ミーシャッス!」

「ミーシャッス?呼びにくいわね」

「いや、ミーシャが名前ッスよ!?」

「なら、そう言いなさい!」

「申し訳無いッス。口癖ッス」

「・・・俺は」

「私はパトラ、こっちのゴブリンはジークよ」

「パトラさんジークさんッスね」

「お、おい」

「いいから」

「とりあえず助けて欲しいッス!」

「そーね、いいわよ。悪さはしない事をオススメするわ」


そう言って、サチは穴の上に俺と同じくらいの大きさの炎を生み出し、ミーシャを睨み付ける。


「もちろんッス。ゴブリンだったらウチ、食べられるかキズモノにされるかだったッスから」

「パトラ、火を収めてくれ、俺が行くから」

「気を付けてね」


俺は穴の底に飛び降りた後、ミーシャを抱えて穴のフチに投げ出した。その後は普通にジャンプで脱出。ん?これが出来無いなら、ミーシャって犬の獣人の能力は決して高く無いのか?

「凄いッスね?本当にゴブリンッスか?」

「自分でも分からないけどな」


言ってるそばからミーシャの腹の音が凄い。

仕方なくバーベキューセットで熊の肉を焼き始める。その間も腹の音がやかましいのでリンゴを渡し、少し離れた所で食べる様に指示した。夢中で貪っているで俺はコソッとサチに尋ねた。



「なあ、なんで偽名なんだ?」

「異世界から来ました。とでも言うつもり?」

「名前ぐらいはいいんじゃ無いか?」

「信用出来る相手なら後からでも教えたらいいんじゃ無いかしら?」

「・・・そっか。んでジークって?」

「英雄ジークフリードから」

「パトラは?」

「クレオパトラから」

「おお!冴えてるな!」

「私は街に居た頃からパトラの名前を使っていたわよ」

「そうなのか・・・なら、俺も今度からパトラと呼ぼう」

「二人の時はいいのよ?」

「名前、忘れそうだしな!」


俺達はクツクツと笑いあっていた。向かいでリンゴを食べ終わったミーシャが、俺の手元の肉を凝視していた。ヨダレがヤバい。どんだけの空腹だ?


「・・・っんぐ!はぁぁ、生き返ったッス!」

「熊のモモを1人で食べ切ったからな」

「お二人?は命の恩人ッス!助けてもらってありがとうございました!!」

「それで、ミーシャは何故空腹でこの森を歩いて居たの?仲間は?」

「実は・・・」


ミーシャの身の上話が始まった。どうやらこの森を抜けた先には獣人の村が有るらしい。ミーシャは戦闘用の魔法が使えず、村の手伝いを続けていたそうだ。


そろそろ大人になる時が近づいて来た頃に村長の熊の獣人に嫁に行く事を決められたミーシャは相手が気に入らなくて村を飛び出したらしい。


「無謀にも程があるわね」

「アホの子かな?アホの子だな」

「容赦無いッス」

「相手はどんなヤツだったの?」

「猿ッス!猿の獣人ッス」

「・・・ほぼ人じゃねーか!?」

「猿の獣人は私も見た事ないわね」

「なんか腹立つッスよ、あいつと居ると!」

「犬猿の仲って事かしら?」

「ん?なんスか?」

「何でもない。それで?村の連中はお前を探してるんじゃないのか?」

「昨日は探してくれてたッス。でも今日は・・・」

「何で分かるんだ?」

「こう見えて犬の獣人ッスよ?鼻が利くッス」

「そうか。・・・それで、ミーシャはこれからどうするつもりだ?村に帰ならないのか?」

「村長に逆らったッス。もう帰れないッス」

「どうやって生きて行くんだ?」

「他の村に行ってみるしか無いッスね。それまで生き残れたらッスけど」



俺とサチは目を見合わせた。


『生き残る』


俺達の状況と何が違う?放っておいたらコイツは多分死ぬ。熊どころか下手したらゴブリンすら危ういんじゃ無いか?


俺達はどちらともなく頷く。


「一緒に来るか?」



ミーシャはキョトンとして俺とサチを見比べた。



金華猫のサチ改め、パトラ。

ゴブリンかどうかも不明な俺、改めジーク。

信頼するには確かに怪し過ぎるよな?


だけど・・・。


「いいんスか!?本当にいいんスか!?これからよろしくお願いするッス!!」


アホの子ミーシャは疑う事無く肯定した。

やっぱりアホの子だ!

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