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16話

今日から俺は未知なる世界へ一歩踏み出す!

ドキドキワクワクが俺を待っているんだ!

武器を手に持ち、左の革袋には非常食のリンゴ、右の革袋には投擲用にナイフを5本。

頼もしい幻獣、金華猫のサチと明日を切り開く旅に出るんだ!・・・なんつって!


「あなた、ゴブリンの凶悪な顔でニヤニヤしないでくれる?女性の私からすると鳥肌モノの気持ち悪さなんですけど?」

「自覚はしてる。でも楽しみでさ!ワクワクしてきたんだよな」

「川の向こう側か・・・あなたはこの前までパンチ1つで死んじゃいそうなゴブリンだったのよね?」

「今ではこんなに立派なゴブリンに成長しました!サチさんのおかげです!」

「私のおかげは間違いないわね!感謝しなさい!」


サチはアゴを前方斜め上にアゴを付き出す。

俺はしゃがんでアゴの下をくすぐる。


「むふ、ぶふふ、ぐふふ・・・」

うーん。何度やっても可愛くない。


「良し!テンションも上がって来たし、川を渡ろうか!」


サチはジャンプ1回で軽々と俺の肩に飛び乗る。分かってるけど凄い身体能力だな。俺相手なら一撃で殺せるんだものな。自然と遠い目になる。


川を渡った所でサチがフワッと地面に降り立つ。爪を立てられなくてホッとした。おそらく、痛かっただろうな。もしかしたら瀕死の重症にもなりかねない。

なぜなら、サチの狩りを見た時を思い出したからだ。大ネズミに猫パンチ!可愛く見えたが、ネズミはたった一撃で地面を抉りながら吹き飛んでいたからな。金華猫、怖い!それまでは電撃を当てていると思ってたからな。まさか、肉弾戦とは想像してませんでしたよ!


「ストップ。向こうに獲物の気配よ」

サチが前足を左に付き出す。

「・・・大物かな?」

俺は耳を澄ませて気配を伺う。足音が大きい。歩幅も大きい。ゴブリンの様に騒がない。もしかしたら・・・いきなり熊かな!?

「多分熊さんね」

「なら、俺が仕掛ける。サチは危なくなったらサポート頼む」

「分かったわ」


俺は前もって作戦を考えていた。一手目はナイフの投擲、熊が逃げたらナイフでの追撃。逆に向かって来たら薙刀で牽制しつつ魔術を熊の足元に放つ。ハマったらもう一度穴掘り魔術でぶちかます。大丈夫、ゴブリンで何回か試してる。俺はきっと、やれば出来る子だ!


意外と緊張はしなかった。予定通り、熊はこちらへ向かって来た。そりゃゴブリンだからな。殺せると思うだろうよ。あっさりと腰くらいの深さの穴にハマった。間髪入れずに脳天から穴掘り魔術を当てる。サックリと熊退治は終了した。


「やるじゃない?見直したわ」

「あれ!?見下されてたの!?」

「そりゃ、ゴブリンだもの」

「・・・そうだよな」

「何で落ち込んでるのよ?熊退治はお見事だったわよ?強敵相手にも落ち着いてて、凄いわ」

「隣にサチが居たからな。ミスっても大丈夫だって安心してた」

「嬉しい事言ってくれるじゃない!」

「案外アッサリと獲物が見つかったな」

「最初が熊さんなのはびっくりしたわね。鹿とか猪とかも居たはずたけど」

「そういえば、何で熊には『さん』を付けてるんだ?」

「熊さんはメーベルの婆さんが飼ってたのよ」

「へぇ、なら殺すのに抵抗はないのか?」

「無いわね。こっちの世界も弱肉強食よ?あなただって牛の牧場を見学した後に牛肉食べれるでしょ?」

「確かにそうだな。鹿を見て可愛いなと思いながら、鹿鍋を見て美味そうだって思うな」

「流石に私も猫が美味しそうだとは思わないけどね」

「俺もゴブリンは・・・色んな意味で食いたくないな!やっぱり共食いはキツイな」


この世界に日本の倫理観を押し付けるのもどうかと思うが、自分達が好きにすれば良い事だよな?



今日の獲物は熊。頭部の原型は無いが、お尻や手足だけで1日で食べきれない程の量だ。住みかに運ぶのもシンドイのでこの場で焼こうか。

手頃な枝を折ったり拾ったりしてバーベキューセットを作る。実は俺の硬質化魔法は火に対しても有効らしく非常に便利だ。サチに点火してもらったらまずは腕から焼いていく。

のんびり焼いていると、隣でサチが熊の解体を始めた。と言っても部位に引き裂くだけだが・・・。

恐ろしい光景を見た。足の付け根から爪で引っ掻いただけで切断!膝を前足で押さえてモモを牙で引きちぎる!しかも、ご自慢の毛皮には返り血の一滴もついていない。完全にエサだ。猫のエサって熊だったんだな!いや、ただの猫じゃないな。幻獣、金華猫だ。金華猫のエサは熊でした。って図鑑に載せるべきじゃないかな?


軽く戦慄しながらもバーベキューを続ける。

まぁいいか、ゴブリンが熊を食べるのも違和感有るからな。こんなに簡単に食物連鎖の頂点を倒せると思わなかったが・・・。


さて、焼いたお肉をいただきます。少し臭みが強いが、食べている内にクセになってきた。肉質は硬めだが俺達のアゴには敵わない。美味しく頂きました。


「他の食べれる所は木に吊るしておいて頂戴」

「食べれない所はどうする?潰れた頭とか内臓とか」

「そうねぇ、せっかくだからここにも空堀を作りましょうよ」

「分かった。スライムのエサにするんだな?」

「上手く行くかは分からないけどね」


残りの腕と足に枝を刺して木に引っ掻ける。その真下に深さ3メートル位の穴を掘る。以前より魔力が増えたみたいで、今ならこのくらいなら簡単に作れる。


さて、お腹も膨れて運動もしたし、今日はこのくらいにして早めに休むか。隣の木の上に枝と葉っぱで簡単なベッドを作った。

俺達は夕方、明るい内に眠りについた。



「ギィヤァァァァ!・・・」

何だ!?俺は薙刀を持って辺りを見渡す。

どうやら穴の中に何か落ちたみたいだ。

ゴブリンかな?恐る恐る穴の中を確認すると・・・

「待って!助けて欲しいッス!!」

ん?デジャブかな?何か覚えが有るぞ、この流れ。


今度は猫じゃなく、犬みたいだ。

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