はじける闇の人々
迷宮都市ユバ。
ここに1つの志を持つ者たちが集まった。老いも若きも男も女も関係ない。
ただその光に誘われ、光と戯れ、光に恋をする。
儚く愚かな者達よ。
今日も集いしその者たちはユマちゃん見守り隊の面々だ。
今日も今日とて偶像を追いかけ享楽にふける。
最初は、ユウマが街を離れていることへの、寂しさを埋めるためとして始まった。
――いない間、ユマちゃんを称える発表会なんかしたらどうだろう?――
そんな一言が沈んだ皆の心に、温かな灯火をもたらした。
内輪だけのいつもの部屋ではなく、少し広めの会場でやろう。
それに近しい人だけでも呼んでさ、と用意をしていた。
すると、次々と参加したいと、申し込みがやってきた。
あまりの多さに驚き、制限をかけるため有料の入場としたけど、それでも勢いは収まらない。
仕方ないので、街で一番広い施設を借りることにした。 しかも2DAYS。
前売り券だけでも、各5000枚を超えてしまったのだ。もうなんか手がつけられない状態だ。
No.4「ヤバいです……。展示物は良くても即売会の品数が足りません」
No.7「僕も農作業の合間に作っているから、フィギュアは200体が限度だよ」
No.1「出店する飲食店も増やさないといけない。心当たりのある人は当たってくれ」
No.19「もし出店に躊躇するようだとしたら、600食の売上保証をつけると言ってくれ」
No.4「つまり、それだけは用意を求めるとともに、売れ残っても、お金の心配はいらないってことですか?」
No.19「その通りだよ。金銭は私が出そう。これを機にユバの名産も広められるだろうし、街の活性化にもなるさ」
No.1「すまないがNo.19、頼みます。
それと即売会はメンバーのみの出店だったね。客数を考えると増やしていきたいが、みんなはどう思う?」
No.7「下手に増やすと、ヨカラぬ作品も出てきますよ。今回は僕らのみで、頑張るのがいいんじゃないかな」
No.11「それしかないですね。それに私たちみたいに、自分たちの職業を生かした作品は、同僚の力も借りれますし、なんとか頑張れますよ」
No.16「任しておきなよ。私たち針子も、総動員するから心配ないさ」
No.1「よーし、ユマちゃんの名前を穢さない為にも、なんとしても成功させるぞ」
「「「おーーーーーー!」」」
当日までにする事は沢山ある。
会場内で言えば、ブースの割り振りや色分け、会場の飾りつけ、休憩場所を広めに取ったりと、考えるだけでも楽しいことがいっぱいだ。
でもそれだけじゃなくて、ゴミ処理問題や警備員の巡回ルート、武器持ち込み禁止の徹底告知など、やることは山積み。
ありとあらゆる、人手を借りてもまだ足りない。
それと会場の外に目を向ければ、近隣住民への挨拶回りや、会場までの道案内に、期間中の治安維持への配慮と、忙しすぎて目が回るとはこの事だ。
どれだけ準備をしても、不安なことだらけ。でも失敗はしたくない。
もしそうなったら、ユマちゃんにどんな顔で会えば良いのか、分からなくなってしまう。
自分たちでやると決めたのだ。必ず成功してみせる。
そして遂に当日を迎えた。
盛大な花火とともに『ユマちゃん見守り隊 やってて良かったあなたの為に! 祭り』 開場。
外で待っていた人達も、ヒートアップしていて、私たち会員たちも興奮している。
まず、会場に入って目に付くのが、真正面に飾られている、ユマちゃんの巨大タペストリーだ。
長さ6㍍で天井から吊るされ、来場する人全てが釘付けになる迫力だ。
No.11「ヤッタワ! タペストリーは大成功よ」
まず、ユマちゃんの可愛さで、来場者を惹きつける。
そして最初のブースでは、ユマちゃん基礎情報の、展示物が置いてある。
これこそ正に我々の研究成果で、彼女の優しさ、強さ、気高さが十分に表現できるよう、飾ったつもりだ。
エピソードとともに、等身大フィギュアを飾り、まずは日常のユマちゃんを紹介したコーナー。
ここではみんなに、ホッコリとした気持ちになってもらいたい。
そして次に、彼女の戦闘スタイルや、模倣した装備セットを展示したりと、冒険者だけじゃなく、一般の初めて見る人でもわかりやすくした。
「ああ、ユマ様。格好良すぎます」
この場所でウットリとして、時間忘れてしまう人が続出したくらいだ。
そして、このエリアを通過したら、即売コーナーだ。
当然全てユマちゃんに関連した商品ばかり。
例えば刺繍やハンカチやニット帽とかの普段使いの物から、ユマちゃんの髪と同じ色のワンピースや、模倣した装備品もある。
よりユマちゃんに近づきたいという、要望に答えたラインナップだ。
しかも全てに、ユマちゃんの顔や、イニシャルが入れてあるのだ。
あとは団扇や似顔絵、フィギュアや少し小さめのタペストリーと、幅広く揃えてある。
「ユマちゃんクションあるよー」
「ワァー、カワイイー!」
「シール3点セットは、ココでしか買えませーん」
「うおー! 持ってきたお金だけじゃ足りないぜ」
「うわ、なんだあれ!」
来場者は思い思いに楽しみ、満足しているようだ。
ユマちゃんの話題で、出店者もお客さんとの会話を楽しみ、大いに盛り上がっている。
あと飲食ブースは広く取ってあり、ユマちゃんが、普段使っている店などは大人気となった。
「皆さんご安心くださぁーい。数は充分揃えてあります。順番を守って列にお並びください」
各店、大盛況。
初日が終わる頃には、各店各ブース、わかっている問題点に対しても対処して、2日目に備えている。
その熱量は見習わなければいけない。
そして2日目、初日を上回る人だかり。
No.1「みんなー、水分補給を忘れないで! それと何か困ったことがあったら、すぐ連絡を。
1人じゃない、僕らは仲間だ。じゃあ、張り切っていこう」
各ブースを回り声をかけ、騒ぎは起きていないか、人手は足りているか奔走し続けた。
釣り銭が足りていない! ちょっと待っていてね。
この子が迷子? 大丈夫、すぐ見つけてあげるからね。
お昼はもう食べた? 今代わってあげるから行っておいでー。
え、ソールドアウト? そりゃいいじゃん。
無我夢中で駆け回り、気付いた時には、終わりの時間を迎えていた。
関わった者全員、笑顔でその場に座り込んだ。
本当に疲れた。でも、それは僕たちが、頑張った証なんだ。
みんな、ありがとう。
このあと、打ち上げの用意もしてあるからね。
この自粛のなか、気分だけでも味わって下さい。