仲間としての信頼
パーティとして揃ってきました。
「ふー、皆さん言わなければいけないことがあるのなの。……それは、このパーティは攻撃力が弱いですのなの」
ハーパー、今の戦いは危なげなく勝てたよ? むしろ圧勝だと思うよ。
「いいえ、もっと圧倒的強大な力でないといけないの、そうでないとカッコよくないのなの」
いやいや、エリカは攻撃してないし、僕も分身の術を使っていたら、もっとも~っと圧倒的になるんじゃないかな。
「フィールドによっては、それらが使えないところもあるの。
だから攻撃力の底上げが必要なの。特に後ろからの力が欲しいのなの」
「にゃははは、これは私の出番だぎゃ」
「小ちゃなエブリンはお呼びじゃないのなの」
「なんだぎゃー!」
エブリンのこと放っておいて、それは僕も考えていたことだ。
サポーターと魔法職は揃っている。もしここに強力な前衛か弓使いが加わったら、きっと凄い事になるだろうってさ。
「エリカがいるし、加えるなら弓使いなの!」
ハーパーは、レベルで補わない地の力を求めているみたいだ。
ただ、そうなるとうちのパーティは7人になっちゃう。
人数が多いと全体的に攻撃力は上がるが、狭いところではその力を活かせない。
だから他のパーティでも5~6人が主流だ。
それを7人にするっていうのは躊躇しちゃうんだよねぇ。
それよりも当てはあるの? 弓を使うモンスターっていたっけな。
「マイマスター、私に心当たりがあります。北の森の奥深くにテリトリーを持つ集団、ケンタウロスの一族です」
ケンタウロスか、僕でも知っている。半人半馬の弓の名手じゃん。
それと森の番人、静かな識者、大いなる知恵の継承者だっけ?
「いえ、弓使いは合っていますが少し違いますね。ヤツら凶暴なモンスターですよ。
言葉は話せますが、話が通じないしタイマンが大好きな頑固者です」
えー、そんな変なの仲間にするの? だいぶ不安だなぁ。もう少し他を考えませんか?
「ようし、決まりじゃな。明日からはケンタウロスをティムする準備ぞ」
…………みなさ~ん、お~い!…………こういう時って誰も僕の話を聞いてくれない。
ケンタウロスをティムする事は決定事項となり、次の日は買い出しとかの準備をする事になっちゃった。
もうここまで来たら、観念するしかないか。
リストアップした紙とお金を用意したので、手分けして、午後から当たる事にした。
「あれ、もう昼なのにエブリン遅くない?」
「さぁのう、そこら辺におるのではないか」
いつもなら誰よりも早く『お腹すいたぎゃーゴハーン』てやってくるのに何処にもいない。
「マイマスター、大変です。買出しのお金も無くなってます」
いやそれよりも、エブリンが帰ってこないんだよ。
「マイマスター、あいつは朝からおりませんでした。トンズラこきましたよ! お金がないのがいい証拠です」
ちょっと変なこと言わないでよ。
「バカマスターはエブリンの物欲を甘く見ています。トンズラゴブリンの本領発揮ですわ」
「そうです、強力な武器を欲しがっていたし、最初の服を買いに行ったときなんか、私たちの10倍は買ってもらおうとしていました」
だからといって、エブリンが逃げたってことにならないじゃん。それよりも、何かあったのかもしれないよ。
「野蛮なゴブリンですからその内、何かするんじゃないかと思っていました」
「バカエブリンなら必然的ですね」
日頃の悪ふざけの掛け合いだけど、本人がいないときに言うのは違うと思う。
「ちょっと、2人共いい加減にしなよ!」
「は、はい! マスター」
「僕はね、エブリンだけじゃなく、みんなのことを信じている。だから、僕の信じるものを、みんなにも信じて欲しいんだ」
2人とも言い過ぎだ。そういうこと言うのはあまり好きじゃない。
「も、申し訳ございませんでした。本心ではないのです……」
「すみません。私も調子乗りました」
……分かってくれたらいいよ
「ふむ、それにしてもどこに行ったかが問題じゃのう」
「スラム街とかで、事件に巻き込まれてなきゃいいのなの……」
なんか嫌な予感がする。みんな悪いんだけど、手分けをして探すよ。まず僕はスラム街に行ってみるよ。
「マイマスター、護衛でお供をいたします」
他のみんなは思いつく武器屋とか、お菓子屋とかを回ってくれる。そっちにいてくれた方が嬉しいよ。
初めて来る塀の外にあるスラム街。バラック小屋とかがひしめき合い、思ってた以上に暗い所だ。
「ちょっと怖いね」
「マイマスター、何があってもお守りします」
扉が閉まる音にさえ、ビクリと反応してしまう。レベルが高くなったとはいえ、漂う雰囲気にビビっちゃう。
普段モンスターと戦っているけど、人の悪意には慣れてないもん。
「マイマスター、ここでは弱みを見せると付け込まれますよ」
キンバリーについてきてもらって正解だったよ。
でも泣き言を言っていられないし、僕も覚悟を決め奥に進み、人が集まりそうな場所を探した。
「すみません、こんな感じの女の子見ませんでしたか?」
薄暗いスラム街で尋ねるたびに、鋭い目つきの住人たちが『知っているよ』と明るく教えてくれる。
アハハッ、エブリン、痕跡を残しすぎだよ。これは多分、エブリンの固有スキル〝意気投合〞による効果かな。案外心配しなくて良かったかも。
そして、あっさりとエブリンを見つけることができた。しかも、たくさんのお婆ちゃんや子供たちに囲まれている。
「お姉ちゃん、私にもちょうだい」
「ギャハハ、1人1枚を守ってぎゃ」
場違いに明るいし、何かをみんなに配っているようだ。
「エブリンここにいたのかい、みんなで探していたんだよ」
「ああ、マスターだぎゃ! 今みんなに親切にしてたんだぎゃ」
それはイイ事したね、何をやったのかな?
「お金だぎゃ、このキラキラしたのをあげるとみんな助かるぎゃ」
あ~あ! 袋の中には金貨が100枚以上入ってたよね?
「これで私もハンナと同じだぎゃ」
あ、そういうことか。以前に僕が言った言葉を覚えていて、自分で考え頑張ったんだ。
人に親切に……か、フフフ、これはもう仕方ないね。
「そうだねエブリン、偉いよ。今度やるときはみんなでやろうか? その時はキンバリーも手伝ってね」
「は、はい。マイマスター。……エブリン」
「なんだぎゃ?」
「今夜の肉の半分、あんたにあげるよ」
「な、な、な、どうしたぎゃキンバリー! はっはぁ~ん、やっと私の偉大さが分かったぎゃ?」
「ああ、そうだな」
「冗談じゃなくてぎゃ? ……えへへへへへっ」
従魔のみんなは僕との生活に慣れようと、必死に頑張ってくれているんだ。
僕がもう少し気にかけてあげればよかったな。
「お昼ご飯まだでしょ? 帰ってみんなで食べよ」
多分こういった事が積み重なって、僕らは本当の仲間になっていくんだ。
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