まずは猿が先だっけ?
冬の厳しさも過ぎ去り、いつのまにか過ごしやすい季節になっていた。
今日は森の探索をして、薬草探しを楽しもうかな。
そうだ。トンスケーラさん達と出会った、遺跡の上に行ってみよう。
すごくたくさん生えていた穴場だもん、大量ゲットは期待できるよ。
道中ゴブリンにも出会い、蹴散らしながら進んでいく。
武器はいつものククリナイフをしまって、トンファーにしてみる。
これだと僕の服にも血は付かないし、大地も汚れない。
そろそろだったかな。あっ、あったよ。ここの岩場を曲がればすぐだ。
思っていた通りだ。誰にも荒らされず、沢山の薬草が芽を出している。
思わずニヤニヤしちゃうよ。
害となる玉虫草がないことを確かめ、端から順に採取始めていく。
ただ、前回の嫌な記憶もあり、気になったので崖の下を覗いてみた。
…………ウソ! 鼓動が速くなる……またゴブリンだ。
またあの時みたいな、恐ろしいことなるんじゃ……。
あ~、頭はクラクラするけど、確かめないといけない。
数・上位種の有無、そしてあの暗黒魔術師を。
しかし、僕の早とちりだったと気付いた。
数は確かに多いけど60匹がいいところ。上位種なんていないし、ただ集まった感じかな。
ふーっ、よかったよ。ん? あれ……ヒュームの子供がいる?
その子は僕より少し年下の12·3歳ぐらいのカワイイ女の子で、ゴブリンと同じような腰蓑を、胸元までたくし上げた格好をしている。
その服で変装をしているせいか、上手く群れの中に溶け込んでいる。
捕まっているんじゃないの? なんでだ?
それにしても真っ黒に汚れた顔で、大声上げて棍棒を振り回しているよ。
う~ん、どういう状況だろうか。
でも僕が理解をするのを待ってくれずに、更なる事態が起こった。
袋小路の入り口付近に、オークの群れがやってきたんだ。数は14匹。
その群れの中にもまた、ヒュームが1人混じっている。
20才くらいの女の人で、こっちもなんか汚く野蛮な感じがする。アマゾネスといった風貌だ。
全然理解が追いつかないよ、モンスターと人類が共存共闘を始めているってことなの?
そんな僕の考えをよそに、2つの群れは戦うつもりか睨み合っている。
これってヤバくない? さっきの女の子は大丈夫なの?
こんな集団での戦闘となったら、無事じゃ済まないよ。これは僕が動かないとダメだ!
幸いというか、女の子は他のゴブリンに弾き出され、最後列で騒いでいる。これは助けるチャンス!
僕は気配を殺して群れに近づき、救い出すタイミングを計った。
オークがいるから、もしバレたとしても、全部はこっちに来ないだろう。
呼吸を整えてチャンスを待つ。
今だ! 彼女の手を掴み引き寄せ、肩にかついだあと、一気に崖を駆け上った。
上まで上がればなんとかなる。必死に手足を動かせ、休むな! この子絶対死なせない。
よし、上に辿り着いても、追ってくる気配がない。
「君、大丈夫? もう心配いらないよ。
急なことで驚いたかもしれないけど、あのままだったら君は……」
「だぎゃーーーー!」
思いっきり、こん棒で叩かれた。いったーーーい。HPは減らなくても、ものすごく痛い。
「こ、怖がらせてしまったんだね、ごめんよ。
でも、君を助けたんだよ。オークの群れを見たでしょ? あのままだったら君は……」
「だぎゃーーーー!」
もーーう、又おでこにキたよ。
うぐっ、まだ殴り続けているじゃん、イタッ、痛いってば。ちょっとストップってば、もーう。
「いい加減にしろーーーーーーーー!」
「ヒィッ…………………………」
ちょっと大きな声を出しすぎたかな?
固まっちゃってるよ、ゴメンね。こんな小さな子を怖がらせてしまった。
でもあんなに叩くなんてこの子も悪いよ。
というかこの子何処の子、誰なの? もう、ステータスオープンだ。
エブリン
ゴブリン(レア):メス
Lv:1
マジ? この女の子てゴブリンなの? 見た目まんまヒュームじゃん。あ~、理解が追いつかないよ。
あれ? それに名前もあるじゃん、初めて見たよ。
これがネームドモンスターってやつか。でもレベル1ってことは、生まれたばかりなのかな?
そんなことを考えている間も、この子は僕に怯えたままの状態だ。
そんな様子を見ると、僕も少し落ち着いてきた。
ゴブリンだけどレアモンスターで、しかもネームド、そして僕に怯えた状態。
こ·れ·は! 〝サルマワシ〞いってみようか。
もしティムを出来れば、珍しいネームドモンスターをゲットできる!
ゴブリンだから基礎能力は低いんだろうけど、やってみる価値はあるよね。
失敗しない為にも全力でいくよー。
「♪モ~モタロさん モモタロさん おっこしにつけたきびだんご~ ひっとつわたしにくださいな♫ あ~げましょお あげましょお わたしについてどこまでも~ ついて~くるならあげましょお♪」
出したアイテムは直感で選んだ3つ。
MP丸薬 ――HPポーション ――しびれ薬だ。
「だぎゃ!」
反応はいい。手を伸ばし選んだのは、しびれ薬。
で、食べたーーーー!
倒れたーーーーーー!
…………何してるのこの子? ステータスを改めて見てみると。
エブリン
ゴブリン(レア):メス
Lv:1
従魔契約主人:ユウマ·ハットリ
スキル:意気投合
おお! ティム成功したよ。ネームドモンスターでも出来るんじゃん。
感動して酔いしれていたけど、まだ崖の下では戦闘のま最中だったね。
やっぱりゴブリンが押されているか。いくら数が多いとはいえ、格上のオーク相手では無理もない。
そういえば、ヒュームそっくりなこの子がゴブリンだったという事はもしかして……。
当たりだ! あの女の人もオークだった。
キンバリー
オーク(レア):メス
Lv:3
しかも、ネームドモンスター。本日2匹目! ついてる♪ ついてる、ついてるーーー♪
テンション上がるー。これはやるしかないでしょ。
まず、ティムするためにも他をすべて排除して、ステージを作らないとね。
新しい仲間ができてひと安心。
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