ハロー異世界生活
僕の告白に、みんな固まってしまった。あれ? 物音が一切しないよ。
でも、そうなるよね。この顔は僕自身信じられないもん。
「あうあぅ、マジかーーー!」
ガーラル院長のこの叫びを聞いて、他の子たちも大騒ぎ。
特に女の子。多分だけど、軽いライバル心を持っていたのかもしれない。
でも男の子と分かれば、興味に早変わり。アッという間に囲まれた。
「キャーすごーい、その顔で本当に男の子? カワイイー、ね、ね、名前は?」
「ユ、ユウマ·ハットリです」
「すごい。名字があるなんて、どっかの王子様なの?」
「そんな……ち、違うよ、ただの人だよ」
わわわっ! こんなに注目されるなんて、初めてだよ、ど、どうしよう。
それに王子様だなんて恥ずかしいよ。
気持ちがフワフワして、いま何が起きているのか、よく分かんない。
ただ、聞かれたことに答えるので、精一杯だよ。
好きな色や、ニックネーム、アピールポイントはとか、聞かれるなんて芸能人みたいだよ。
それに服が面白いねとか、手がちっちゃいって、触られまくるし、あわわわ、固まっちゃう。
ふと見ると、ハンナって子も驚いた顔をしている。
だけど、この騒動を、心配そうに見てくれているよ。うん、やっぱり優しい子なんだ。
充分いじられ、ようやく解放された。
一息ついた頃、さっきぶつかりそうになった、獣人の男の子を見つけた。
そうだ、声をかけなきゃ。
「あのー、さっきは驚かせてゴメンね。漏れそうで急いでいたから」
「ああ、それはいいぜ。でも本当かよ?
ヘタをしたら、ここの女子よりカワイイかもな。ハハハハハッ」
あ……女の子の視線が怖い。
「ユウマだっけ? 俺はベルトラン、よろしくな。見ての通り獅子人族だ。
分からないことがあったら、なんでも聞いてくれ。
みんなを守ることが、俺の役目だからよ」
うわー、キラキラしていて、物語の主人公みたいな子だ。
勢いもあって、なんかいいヤツっぽい。
そうやってひとしきり騒いでいたが、そればかりではいられない。
毎日やることがいっぱいあるそうだ。
今日は孤児院のやり方に慣れるため、一通り教えてもらうことになった。
付いてくれるのは、さっきのベルトランだ。
ここでの生活は、まず朝食の準備から始まって、みんなで食べたあとは、各自に割り当てられた仕事をこなす。
「じゃあ今日は、どこでどんな仕事をしているかだけ、まわりながら話すな。
まずは畑から行こうか。こっちのすぐ裏手にあるんだ」
そこには、もう2人の女の子が働いていて、こちらに気づき挨拶をしてくれた。
ちゃんと返さなきゃ。
「あ、おはようございます」
「キャーーーッ!」
普通にしゃべっただけなのに、すごい歓声。なにこの感覚、メチャクチャ嬉しい。
「ハハハハッ、人気者だな、ユウマ」
「い、いや、ただ珍しいだけだよ」
改めて言われると、顔が赤くなっちゃうよ。調子に乗らないようしなくちゃ。
「朝の仕事のあとは勉強だから、みんな朝は手早く済ませているんだ。畑だったら水やりや収穫とかだな」
桶で水を運んでいるのか、すごく大変そう。
「次は隣の家畜小屋な。よっ、エイブラハム。邪魔するよ」
10歳ぐらいの男の子が、動物の世話をしている。
「ここでは餌やり・寝床の掃除・乳搾りと結構仕事があるんだ。
でも、ここはほぼエイブラハム専用の仕事場だな。
なんせこの子が世話をすると、乳の出が良くなったり、卵もたくさん産んでくれるんだ。
すごいんだぞ。なぁエイブラハム」
うつむきながら、恥ずかしそうに頷いている。
「エイブラハム君って凄いんだね」
そう声をかけると、さらに恥ずかしそうにして、動物の世話をし出した。
動物を見ている目は優しく、本当にこの仕事が好きみたいだ。
その他にも、掃除・洗濯・薪割り・水くみと色々あるらしい。
家畜小屋以外は持ち回りでしており、全員わからない仕事はないそうだ。
「そうしておけば、誰かが抜けたとしても、困らないだろ」
そっか、いずれはみんなここを出て行く。
それと働くことは、社会に出る準備でもあると言われた。
一通り説明を受けたあたりで、みんな食堂に集まっていく。そこが教室になるみたい。
「ねぇねぇ、あの新入りの子可愛かったね。ハンナもそう思うでしょ?」
「そうね、でもあの子も不安だろうし、あまり騒いであげないほうが、いいじゃないかな」
「何言ってんの。構ってもらった方が、アレコレ考える時間がなくなっていいのよ」
「そうそう。あのほっぺをムニムニしたら、気持ちよかったしね」
「もう2人共。あ、あの子が来たよ! ほら」
僕らがいちばん最後だった。
しばらくして、授業が始まると、みんなの態度が一変した。
見ていると学問に対する、みんなのモチベーションが高い。
それは親もいなくて、お金もない子供が、もし何もしなかったら、手詰まりの人生が待っている。
せっかく学べる場所があるのだから、全てを身につけようと、みんな必死なんだ。
そんな姿を自分と照らし合わせてみて、大きな違いを感じた。
僕だけじゃなくて、あの日本で勉強が好きって子供はいないと思う。
だけど、僕はその日本に今はいないし、彼らと同じ条件なんだ。
僕も彼らを見習って頑張ろう。
とは言っても僕ね、勉強は得意な方なんだよね。
ふふふふ。
トップにはなった事いないけど、学年順位、万年11位の実力をお見せしましょう。
(お姉ちゃんにはいつも、中途半端って、バカにされる順位だけどね)