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レイドとくじ運

 ギルドランクが上がったことにより、メンバー全員のダンジョンへの熱がまた更に上がった。


 とはいっても、マッピングをも7割しか進んでいないので、ここは地図製作優先で行く。


 マッピングを早く終わらせれば、3階が見えてくると思うとやっぱり効率は良くなるね。


 しばらく地図製作に没頭した生活だった。そしてあと残り5%位になった時、たまたま中ボスに出会えた。


「おっし、ついてるぜ」


「フロアボスの前哨戦ですね、頑張りましょう」


「周りに競争相手いねーよな?」


 ドンクってば気にしすぎだよ、優先権僕らにあるのにさ。


「そう言ってこの前横取りされてるじゃん、気になるっしょ」


「おしゃべりはそこまでしようぜ! 準備はいいよな?

 普通の中ボスレベル6だ。気を抜かずにやれば楽勝だ、勝ってレベル上げてやるぞ!」


 おーーーーう!


 相手はハイオーク、いつも通りステータスはかなり高いけど、1体しかいないので大技に気をつければ大丈夫だ。


 僕らの気合は充分、メンバーにはレベル6が2人もいるし影分身も頑張ってくれている。


 危なげもなく時間もかからず倒せれた。これで全員レベル6だよ。


「……おめで……とう……」


「嬉しい、これでフロアボスに通用するレベルになれたわ」


「みんな……聞いくれ」


 ベルトラン改まってどうしたんだろう?


「今日の俺たちはツイている。レベルも上がったし、地図もあと少しだ。

 そこでどうだろう、このままの流れでフロアボスやってみないか?」


 いきなりー?


「ふふっ、突然ですね、ベルトランは……。わかりました。私は賛成します」


「でもよう、ちょっと早くねぇ?」


「ああ、中ボスのあとにフロアボスの連戦なんて、誰もやらねえだろうな。

 でも、声がするんだよ。『今やるべきだ』って。

 理由はわかんねぇ、でも多分これが正しい。俺はそう感じているんだ」


「だったら近くまで行って決めたらどうかしら? 

 そこまで歩けば、みんなの意見も固まるだろうしね」


 この場所からフロアボスの所に行くには1時間はかかる。


 考えながら進む、心の中では決めているけど口には出さないでおこう。

 みんなも集中しているし、邪魔になるだけだよね。


 そしてもうすぐで着く所まで来た。そこの曲がり角を曲がればいよいよポス部屋だ。


「あれ? ボス待ちの人多いじゃん、珍しくねぇ?」


 知っている人もいるし、ちょっと聞いてみようよ。


「すみません、私パーティ名〝HEROES〞のポーと言いますが、みなさん順番待ちをされているのですか?」



「ああ、こんにちは。パーティ名〝黄金より青く輝く翼〞のリーダー·ジャイリンだ。

 これは順番待ちではなくて、フロアボスがレアモンスターとして出現してしまってね。

 みんなでどうするか相談をしたんだよ」


 ステータスオープンをしてみると。


 ――――

 ファイヤーオーク(レア):オス

 Lv:10


「レベル高いですね、討伐範囲外の強さかと思われます」


「いや、レベル差4であれば4~5パーティで倒せるはず。

 しかも、ジャイリンさんの所はヒーラー以外全員レベル7だし、あんたたち加わってくれたらいけるんじゃないかな」


 他のパーティの人達はやる気満々だ。


 ジャイリンさんの所は前衛の盾持ちが多く、装備も金属製の鎧で固めている。

 しかもレベル7という事は3階経験者だ。


 上の階を攻略しているのに、中ボスを狙って下層に来るパーティがいる。


 いつもは来て欲しくはない競争相手だけど、今回のレアモンスターに限ってはすごく頼もしい存在だ。


 それに僕自身の強さもレベル9に匹敵するステータスで、他の2パーティも攻撃力に問題はなさそうだ。


 ……でも、悩む。


 顔なじみのこの2パーティには、回復職が1人もいないのを知っている。


 これはよくある事で、回復職は貴重で割合的にも3パーティに1人ぐらいだ。


 HP回復はポーと2人で回すしかないんだ。


 防御力の高そうな、ジャイリンさんの所が壁役を申し出ているので、

 任せてよいかもしれないが、果たして回復が間に合うかどうか心配だ。


「1ついいですか? このレアモンスターの特徴はご存知ですか?」


 ジャイリンさんが代表して答える。


「いや、レアの情報はあまり出回らないし、我々も初めてでわからない。

 しかし、名前に冠するファイヤーから想像すると、水氷系に弱いだろう。

 我がパーティの魔術師は、氷魔法が得意で相性は良い。

 特殊攻撃もオークなら考えられないので、向こうの力押しと炎に気をつければ、攻略できると考えている」


「なるほど、ではアイテム分配の方法は?」


「それは共通ルールだ」


 メンバーと相談する。若干不安はあるものの、みんな同意見で参戦することにした。


 レイド戦リーダーはジャイリンさんと決まっているが、

 撤退の判断は、各パーティで判断することとなった。


 ただし申告の上、全員での撤退が基本だ。


「今日はツイてる日だ! 一気に3階を拝もうぜ、初レイド戦ぶちかますぞー!」


「おーーーーう!」


 いよいよ、初のレイド戦が始まった。


 まず最初は、各魔術師の阻害魔法と強化魔法だ。

 レジスト覚悟で重複した魔法を放つ。


 次にジャインリンさんによるタウント、お見事!


 各近距離攻撃者は死角へ回り込む。


 その間に僕と魔術師さんは水·氷魔法を打ち込んでおく。

 今までにない位、水華弾を放ったよ。


 やっぱり効いているみたい。

 気迫も弱まり、体を纏っていた炎も小さくなっているよ。

 場所によっては、炎が完全に消えているところもある。


 でもさすがはレアモンスター。

 HPにはまだまだ余裕があり、大きな棍棒をぶんぶん振って当ててくる。


 味方の盾は大きな音を出して攻撃を防ぎ、うしろの仲間を守っている。

 だけど、なんだか様子がおかしい。


 敵は叩くたびに向こうは勢いづき、炎がその分大きく戻っていっているよね?


【水遁の術・水華弾】


 元に戻っていくなんて、なんか嫌な炎だな。できるだけ消しちゃわないと。


 20発ほど打ち込み続けると、ほんの小さな炎となり、みんなチャンスと猛攻撃を開始した。


 その攻撃に圧倒され縮こまるファイヤーオーク。いけるじゃん。


 背を丸めながら此方をうかがっているけど、手も足も出ないみたい。


 しかし、それは間違いだった。

 くぐもった唸る声とともに、消えかけた炎が今までよりも大きくなり、色も緑色へと変化した。


 外見だけでなく、一撃一撃の衝撃が強くなっている。


 更に叩くたびに纏っている炎が飛び散り、後衛たちの方にも飛んできて、サポートに専念できない。


 ジャイリンさんもたまらず、盾役を交代してしのいでいる。


 あの炎なんとか消し、HPを削っていかないとこちらが持たない。


 他の魔術師も気づき消火に全力を注ぐ。


 敵のHPは随分と減ってきているけど、苦しい戦いだ。ここまで30分以上かかっている。


 そう思っていた時、またもや体を丸め力を溜めだした。


「また来るぞ。前衛、気合を入れろ」


 しかし意表を突き、今度は縮めた体を大きく伸ばし大ジャンプ! 後衛陣を強襲した。


 慌てて駆け寄る前衛たち。フォーメンションを崩された形なので、駆けつけてもすぐ薙ぎ払われる。


 ヤバい! 立て直さないと全滅しちゃう。


「おりゃー! こっちを向け【タウント】」


 ベルトランだ! シールドバッシュも決めみんなを背中に隠す。


【クレセント&サークル】


 ベルトランお得意のガーディアンのスキルだ。

 後ろに守る者へ防御のバフをかけ、更に敵方のヘイトを稼ぐ技。


「あとは俺に任せろ、絶対に守ってやる! 【不屈】」


 うまい! しかもあのタイミングでさらに防御力を上げる〝不屈〞をもってくるなんて渋すぎ。


 ほらあの攻撃にも耐えてるよ。ベルトランがチャンスを作ってくれた、あとは僕らだ。


「影のみんな頼むよ 【分身の術】」


 6体の影分身が散らばりどんどん攻める。


「足元を崩すからみんなお願いね。行くよー【 土遁の術・土竜崩し】」


 作った穴にファイヤーオークがつまずいた。

 這いつくばった形となり、棍棒も落としている。


「今だ! 我らの力を見せるぞ」


 ジャイリンさんの掛け声に、レイドメンバー全員が応える。最大威力の攻撃だ。


【風遁の術・疾風】(力を)


 脇腹を大きく削る一撃が入った、ヨシッ!


【風遁の術・疾風】(力を)


 僕は後ろから首を狙い刃を振る。

 ファイヤーオークはそれに気付き、腰を落とし太い右腕でガードをしてきた。


 これでは届かないかもしれない。そう思った僕は自分でも信じられない行動に出た。


【風遁の術・疾風】(前へ)


 風の力で体を押し出し、勢いを更につける。

 刃は肉を切りさき、腕の骨を砕く。そしてその刃は腕を突き抜け、鼻まで達して止まった。


 それが決め手となり、ファイヤーオークは大きな体を地面に沈めた。


「我らの勝利だー!」


 みんな口々に互いをたたえ合う。初レイド レアモンスター撃破!

 沸き立つみんなが宝箱を見てさらに喜ぶ。


「鍵開けなら任せてくれ、いいかい? じゃ開けるぞ、それー!」


 出てきたのは〝宝箱探知機〞だった。


 一部の人は色めき立っている。いい物なの ?宝箱から宝箱探知機っていい物なの?


 レイドでのドロップアイテム共通ルールで、ボスからの宝箱の戦利品は、くじ引きで個人のものになる。


 フロアボスに勝てた喜びと、くじ引きというイベントで、みんなの興奮度もMAXだ。


 そしてそのくじ引きの順番も決まっていて、背の低い順だってさ。


 早く引けた方が有利ってことじゃないんだけど、やっぱり前の方が当たりやすい気がするよね。


 僕は24人中8番目(ノームとドワーフを除くと3番目か……)


 もうすぐ僕の番、首のストレッチをして、気合を込めて、神様にお願いして、えーとあと何かあったっけ?

 これでよし、あとは目をつむって引くだけだ。


 〝ハズレ〞


 あー、足のストレッチを忘れていたよ。

 やり直しがきかないのに、おまじないを忘れるなんて、ショックだ。


 それからどんどん進んでいき、うちのパーティはベルトランしか残っていない。


 うー、今こそ6人一丸となって祈ろうよ。がんばれーベルトラン。

 今度はバッチリ効く応援のおまじないがあるし、大丈夫さ。


「よっしゃーやったぞーー! ジャイリーン!」


 …………だれだ、あの人。


 結局、宝箱探知機を引き当てたのは黄金より蒼き翼のヒーラーのベケット·ハウザーって人だった。おめでとうございます。


 レアモンスターのおかげで掛け替えのない経験をさせてもらった。

 レイドって他の人への配慮、協力、駆け引きがあって、いつもなら出来ないことだ。


 そして……僕らは今日2度目のレベルアップをした。


短編小説『我が聖戦はコンビニあり』を載せました。


よかったら、そちらの方も覗いてください。


みなさんの声聞かせてくれると嬉しいです。励みになります。

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