表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/87

外の世界とダンジョン

 ゴブリン討伐で得た装備で、三人それぞれが、自分に合うもので身を固めた。


「ベルトランの新しい盾、やっぱいいね」


「ああ、最高だぜ!」


 左手に構える、ミスリル製のラウンドシールドに、右手には業物の両刃剣。


 ここまで揃うと、あともガッチリ決めたくなるみたい。

 ベルトランは、マジックバックの中にあった、1番格好いいフルプレートアーマーを試着した。


「う、動けない」


 あははは、欲張りすぎだよ。試しに僕も装着させてもらったけど、こりゃ無理だ。


 フルプレートアーマーを諦め、ベルトランは自分の盾術を信じて、上半身は革製の胸当てだけにした。


 そのかわり足元は、黒鉄製のグリーブを選んだようだ。


 ポーも武器選びからはじめ、ミスリルと木製で作られたメイスをチョイス。


 軽くて丈夫なので叩いてよし、受けて良しの優れもの。


 しかも、中に魔石が組み込まれていて、最大MP量と魔力の底上げをしてくれる。


 良いローブがあるから、着ないのかと聞いたら。


「この相棒だけで十分です」


 だってさ、まさに戦う僧侶って感じだ。あっ、商人か。


 そして僕が多分3人の中で、一番自分に合うものが見つけたと思う。


 まず革鎧は、飛行系モンスターの素材を使用しているらしく、防御力・軽さが1段も2段も上がっていてすごく動きやすい。


 手甲との色合いも合っていて、落ち着いた感じなんだ。

 これにも、青いラインが入っているのでカッコいいよ。


 そして武器は……。


「おーい、ユウマ。あのヘンテコな武器には、もう慣れたのか?」


「変な武器じゃなくて〝トンファー〞て言うんだよ」


「なんでもいいけど、実戦には間に合わせろよ」


 ベルトランは自分に興味がないものには、いつもあんな風だ。


 これはただのトンファーじゃなくて、能力付与のマジックアイテムなのにさ。


 その効果はまず攻撃方法によって、武器の重心を自動で変えてくれる。


 例えば長手の方を回し叩く時には、その先端に重心が移動し、遠心力を加速させ、衝撃力を上げてくれる。


 逆に手元のほうで使うときには、そのバランスが元に戻ってくる。これだけでもすごい能力だよ。


 でも、それだけじゃなくて手元·長手どちらでも、敵に突き出すとき先端が鋭く尖る。


 打、突、両方に威力が出せる一級品だよ!


 さぁ、装備も揃い、レベルも2になり、ギルドランクも1つ上がった。


 いよいよこの地にある、白百合の迷宮に挑戦だ!





 白百合の迷宮は、ユバの街からほど近い、平原の大岩が入口になる。


 そのフォルムはまるで、大地から這い出てくる、巨人の上半身のように見える。


 口をポッカリと開けていて、内部は遺跡のように整えられている。


 壁一面に、色のついた繊細な白百合のレリーフが、彫り込まれており、非常にきれいな造り。


 無骨な岩とのアンバランスさが、恐ろしさをかもし出している。


 入り口の横には兵舎が1つ。


 その前に番兵がいて、人の出入りの確認と、中からモンスターが出てこないかを、監視している。


 ただモンスターは今まで、一度も外に出てきたことはない。


 研究者の間では、この中は1つの独立空間となっており、境界線を超えることは、モンスターにはできないのだと考えられている。


「受付は無事終わったけど、やっぱり緊張するよな?」


 初めてなので、番兵さんにレベル確認と、メンバーの名前を報告しないといけない。


 これが終わってからようやく中に入れる。


 入口の小部屋から転移装置で、1階フロアへと移動した。


 転移の法則として、転移先のその数はフロア階数と同等の数になる。


 つまり1階には1つ、2階には2つのと増えていく。


 更に出発地点となる装置は、必ず1つなのに対して、行き先が複数ある場合、ランダムで決まってしまう。


 そして、次の階に行く為の転移装置は、その階の最奥にいる、フロアボスのうしろの部屋にあるんだ。


 たどり着くには、必ずボス部屋を通らなければいけない。


 フロアボスのほかに、中ボスと呼ばれるモンスターの部屋もあって、それは階数と同じ数だけあるらしい。


 それぞれの階に、フロアボス1匹+中ボス(階数分)の強敵がいるってことだ。


 たくさんいる様に思えるが、迷宮自体広いので、すぐに遭遇することはない。


 話を聞いていると、まさにファンタジーの世界だね。


 テンションも高く意気揚々と入ってみたが、その雰囲気に圧倒されてしまった。


 思っていた以上に広い。


 内部は洞窟タイプで、道幅は一定ではないが10㍍位はあり、高さも同じ位だ。


 広すぎだを。ここで戦い、探索を進めるのかと思うと、不安になってくる。


 明るさは充分だけど、岩などで薄暗く見えづらい所もあり、慣れるまで時間かかりそう。


「ストップ! 何か気配を感じるぞ」


 モンスターの群れを見つけた。僕らも事前調査はしてある。


 1階の出現モンスターの種類は2種類。

 羊型のモンスター:ソアイル·ビッグホーンと、大型イモ虫:ホワイトキャタピラーだ。


 常に3匹で行動し、割合は変化するが単一種の場合はない。


「羊が1に芋虫が2か……。

 情報通りの対処をして、もしヤバくなったらすぐに撤退しよう。そのときは合図を出すからな」


 気をつける事は、羊の場合体重200㎏から繰り出される突進だ。これに当たればひとたまりもない。


 もし即死しなくても、うずくまっていれば次でやられるだろう。


 そして、羊ばかりに気を取られていてもダメだ。


 移動速度は遅いイモ虫だが、口から吐き出す粘着糸がある。

 これに絡まれば、アッという間に行動不能となりこれまたヤバイ。


 この対策として、2種類ともこの技を繰り出すとき、必ずタメがあるらしい。

 それさえ見極めれば簡単だ。


「ユウマ、お前は右にいるあの羊を頼む。後はポーと俺で持ち(こた)える」


 羊は体毛が厚くモコモコで、体への攻撃は刃物だと全く通らない。


 有効性があるのは打撃と刺突で、僕の新装備・トンファーを選んだのは、そのためなんだ。


 毛に覆われていない頭や、足元を狙い一発入れればいけるはず。


 ただ、突進してくる羊に、一撃を入れるのはちょっと勇気がいるよね。

 いや、勇気を片手に突撃だ。






 初ダンジョン、初戦闘の結果は……微妙だった。


 期待通り、トンファーでの攻撃の通りは、悪くない。

 ベルトランも防御が上手いので良いとして、ポーが攻めあぐねている。


 粘着糸をバンバン飛ばされ、攻撃どころじゃない。

 それが気になり、僕も集中できなかった。


 結局、ベルトランがポーを、フォローしつつ持ち堪えた。


 そして、僕がなんとか羊を片付けた後、ポーのイモ虫を僕と2人でやっつけ、最後の1匹へと移った形だ。


 想定していて流れだけど、時間がかかる。掛かり過ぎるんだよ!


「だーーっ! やっぱゴブリンのようにはいかないか。3人じぁ無理だなー」


「そうですね、メンバーを闇雲には増やせませんが、もう少し人数は欲しいですね」


 それからはできるだけ戦闘を避け、今後のために迷宮内部を偵察した。


 迷宮と外での違いを、3人でしっかりと確認しておきたいからね。


 通路を進むと所々部屋があり、モンスターはその部屋にたむろしているか、通路を徘徊をしている。


 ある程度行動パターンは、決まっているみたい。


 そして討伐後、モンスターを解体することができない。

 というか、ドロップアイテムだけを残し、遺体はじきに消えてしまうんだ。


 初めて見たときは寒気がしたよ。


 だって命が尽き、存在そのものが消えるんだよ。

 ゲームではよくあるけど、実際目にすると、この世界の摂理が恐ろしく思えてくる。


 その逆のポップもする。今まで何もなかった空間に、モヤのかかった姿が見え、やがて実体化するんだ。


 しかも、1グループまとめてなんだ。

 完全に実体化するまでは、こちらも攻撃できないし、モンスターも動くことすらない。


 ポップするまでの時間のサイクルは、確認できなかったけど、1日中その場に、留まるわけにはいかないので仕方ない。


 迷宮ならではのルールは、沢山あるけど覚えなければ命に関わる。


 罠の類もあるようで、僕たち3人の手に負えるものじゃなかった。


 まず見つけることができないし、解除もちょっと無理だろう。


 1階で命に関わるような、致命的の罠はないけど、今後のことを考えると対策は必要だ。


 短い時間でいろいろ確認できてよかったよ。


 でも問題は山積みだ。メンバー補充や罠のこともあるし、あと迷子になることも心配だよ。


 何から手をつけていいのやら、前途多難の迷宮です。


晴れた外を見ながら書きました。

みなさんの住んでいるところはどうですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ