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ステータスオープンだ

 昨日、ガーラル院長に相談した内容を話すと、2人は真剣に聞いてくれた。


「ということを言ってもらったんだ。ごめん、臆病で……」


「なんだよ、全然臆病じゃねーよ!

 頑張っている所、真剣な所見てるしよ。ポーもそう思うよな?」


「そうですよ。君が1人で背負いこまなくても、僕たちは仲間なんですから」


 話して良かった。信じて話したから、今の僕を認めてくれたのかな。


「おっし。それじゃあ、ゴブリン置いといて、ホーンラビット狩りを頑張ろうぜ!」


「ガンガン行きましょう。目標100匹です!」


「あははははは」



 でも、張り切りすぎるのも良くない。

 慣れているはずのベルトランが、ホーンラビットの体当たりをモロに受けた。


 横腹だったし、うずくまってかなり苦労しそうだ。


「大丈夫? 今日はもう、帰って休もうか?」


「平気だよ。こんなの大した事ないし、グッ……、それに……ポー頼むよ」


 駆け寄ってきたポーが、おもむろに手をかざすと、なにやらブツブツと言い出した。


【 ヒール 】


 手のひらから、優しい光が出てきたと思ったら、ベルトランが元気よく立ち上がった。


「え? 何? ヒールって回復魔法だよね!  えっ魔法? ブワンって光って! うわぁぁ、カッコいいーーーー!」


 僕のハイテンションに、2人はビックリしている。イヤイヤ、驚いたのこっちだよ。


 魔法だよ! ヒールだよ! ポー凄いじゃん!

 なんでも、ポーの持っているスキルの1つらしい。いいなー。 僕も欲しいな~。


「何言ってるんだ。誰でも1つや2つあるだろ。

 ほら、エイブラハムだって、飼育のスキルがあるじゃねぇか。ユウマだって、スキル使ったことあるだろ?」


「えー、そんなの知らないから、分からないよ」


「分からないって、ステータスオープンすればすぐ見れるじゃん」


「 ? ? ? 見るってどういう事? ? ? 」


 変な沈黙が流れる。


「もう、ユウマはオレがいないとダメだな。仕方がない教えてやるよ」


 うわー、同い年なのに兄貴風吹かしているよ。


「まずステータスオープンって、心の中で唱えるんだ。

 そうすると目の前に、自分の名前や能力、スキルが見えてくるはずさ。やってみな」


 戸惑いながらも、ステータスオープンと唱えてみる。すると……。


 ユウマ·ハットリ

 ヒューム:男

 Lv:1

 ジョブ:中忍

 HP:16/16

 MP:20/20

 スキル:初級忍術 中級忍術 分身の術 限界突破 薬製作 サルマワシ


 おおお、目の前に広がるステータス画面に感動だ。

 あるはずのない物が、そこにクッキリと見える。 素晴らしいー!


「うわー! スキルがいっぱいだー!」


 しかも、その内容に驚いちゃった。中忍って忍者だよ。やったーマジ嬉しい! 


 小学校の頃、《僕は服部半蔵の子孫なんだ》とか言って、(飛び)加藤くんとずーっとニンニン言っていたお陰かな?

 うん、絶対そうだ。そうに決まっている。


 女子に白い目で見られても、2人で頑張ってやっていた。

 あれがあったから、憧れの忍者になれたんだ。

 ありがとう、小学生の僕! ありがとうニンニン! 信じてよかったー。


 忍術もいろいろあるし、分身の術なんてもう涙が出そう。


 《さて本物は、誰かわかるかな?》

 いひひっ、言ってみたーい。


 限界突破もすごそうだよ。


 あと薬製作やサルマワシは、もしかしてあれかも。


 戦国時代の変装した仮の姿で、暗躍する所から来ているものなのかな?

 薬師や曲芸師と言ったところかもね。いいじゃん、 面白いし多彩な感じがするよ。


「なあユウマ、スキルがいっぱいって。ちょっと俺も見るぞ、いいか?」

 うん、いいよ。


「なんだこれ! ポーお前も見てみろよ」


「え? じゃあユウマ君見てもいい?」

 ちょっと不安だけど、どうぞ。


「こ、これはすごい。スキルが6つも。……しかもジョブの中忍って、もしかして!」


「そうだよ多分、中ってことは、まず下があっての事だろ。つまりまさかのセカンドジョブ!」


「ファーストジョブ持ちでさえ少ないのに、セカンドだなんて、うらやましいですね」


 聞けば、ジョブを先天的に持っている人は少なく、修練を積み得ていくものらしい。


 それによってスキルが発生したり、逆にスキルを磨くことで、ジョブを得ることもあるそうだ。


 つまり、このアドバンテージは、かなり高いってことだ。


 ちなみに、ステータスは誰のでも見れるらしい。

 ただし、相手の許可を得なければ、詳しいことは見れなく、普通は名前とレベルだけだ。

 2人のステータスも見せてもらった。


 ベルトラン

 獅子人族:男

 Lv:1

 ジョブ:ー

 HP:21/21

 MP:8/8

 スキル:盾術


 ポー

 ヒューム:男

 Lv:1

 ジョブ:ー

 HP:15/15

 MP:13/17

 スキル:交渉術 回復魔法


 2人もそれぞれに合った、ステータスとスキル。


「ユウマ、火遁の術って、どれ位の威力か分かるか?」


 知らない世界にやってきて、自分のことでも分からない事だらけ。

 不安もあるけど少し、ワクワクしてきた。


「ねぇ分からないし、明日からスキルの実験に付き合ってくれる?」


 2人が笑顔で応えてくれる。このワクワクは僕だけの物じゃないみたいだ。




 次の日になり、ホーンラビットのノルマ2匹を素早く終わらせ、早速忍術スキルの検証を始める。その内容は。


 ⒈ 忍術それぞれの威力

 ⒉ 有効範囲及び射程距離

 ⒊ 発動までの速度

 ⒋ MP消費量

 こんなものかな。


 まず何から始めるかといえば、もちろん火遁の術しかないでしょう!


 火力・響きの良さに、あと言っている姿がカッコよくない?

 《カトンのジュツ》 クーッ、いい、いいよ!


 先ずは10㍍先に、胴回り程の丸太を立てた。

 人生で初の忍術を試します。あ~、緊張する~。ではっ!


【火遁の術·火炎弾!】


 印を結び唱えると、すぐさま目の前に、ボーリングの玉くらいの火の玉が現れ、丸太をめがけて飛んでいった。かなり早い。


 炎が丸太を包むと、半ば黒く焦がした。

 着火はしなかったけど、短時間であの燃焼力は凄まじい。ニヤついちゃうね。


「すげぇユウマ! 何がいいってカッコイイのが良いぜ」


「終わった後のあの右手がいいですね」


 やりすぎたかな。右手いらないのに……でも知らない顔をしておこう。

 他の検証もあるから仕方ない、仕方ない。


 距離は15㍍が限界で、それ以上だと方向が定まらない。

 しかし消費MPはなんとゼロ! 少なすぎ、威力の割には少なすぎ。


 なぜだろう。もしかしたら、忍術は魔法でもスキルでもないのかな?

 う~ん、分からない事を考えてもしょうがないし、次の中級火遁の術にいこう。


 中級火遁の術とされる『火炎熱波』は、範囲攻撃のようだ。

 2人には離れてもらって、いざ。


【火遁の術・火炎熱波】


 今度は胸先より1㍍先で炎が出た。まるで火炎放射器のような出方。

 横に振れば横へ、上を向けば上へと広い範囲で燃やし続ける。


 時間は5秒ほどで止まったけど、時間的には十分だよ。で距離は火炎弾より少し短い。


 しかし効果は絶大だ。放射は終わっているのにまだ燃え続けている。ほら、横の木にも移ったよ。


「なーユウマ、そろそろ火を消していいぞ」


 あ、そっか。心の中で念じてみる。



 ………………消えない…………。



「ねぇ、ポーどうやって消したらいいか知ってる?」


「「えーーーーーー!」」


「やばい、やばい! 水、水、水! 早く汲んこなきゃ」


「ウソーーーーーー!」


 やばい火の勢いが凄いよ……もうあんなに。


 ……どうしよう、あぁ~風下には街がー! このままだと…………アァァァ。




【 水遁の術・水華弾(すいかだん) 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 はぁっはぁ……水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 ハァー…………水華弾 水華だーん ヒィ~~ッ 】


 な、なんとか鎮火できて……良かった。


 ……はぁ~、水の出るスキルがなかったら、詰んでいたよ。

 それと、初級水遁の術 水華弾(すいかだん)、消費MP量ゼロで助かった。


 わかった事がある。


 小さい頃火遊びをしちゃダメって、こういう事になるからだったんだ……。


 このあと3人で相談した結果、火遁の術は半ば封印となった。


 使いどころが難しい。火事の心配もあるけど、狭い所で使ったら、酸欠で自分たちが死んじゃう。


 疲れて終わりにしたいけど、中級水遁の術だけはやっておこうか。


 中級水遁の術・薬水(やくすい)は攻撃手段ではなく、文字通り薬になる水だ。


 ステータスでスキルの説明を読んでみる。

 単体でも多少の疲労回復の効果はあるが、基本薬製作に使うものらしい。


 試しに飲んでみたら、少しだけ元気になった気がする。


 消費MPは、火遁·水遁ともに同じく中級はMP4だ。


「なあ、ユウマ。この忍者ってジョブ凄くねぇか? 魔法の威力も桁違いだぜ」


「うん、僕の住んでいた国でもね、ヒーロー的存在なんだよ。

 主君の為に技を磨き、黒装束で気配を消して忍び寄る。情報収集のエキスパートなんだ」


「へぇー、気配を消してって、なんかカッコいいな」


「姿を見られず誰にも気付かれず、1人闇夜をつき進む」

 あれ……?


「お城に忍び込んだりして、1人で何日もその場に潜伏するんだ。

 闇に隠れて誰とも喋らず、有力な情報をつかむまではね」

 これって……。


「ははは。それをマジでやったらすげー寂しいなぁ」


 本当だ……嫌な事を思い出した。誰とも喋らず友達もできない学校生活。


 途轍(とてつ)もなく寂しくて、悲しくて、このまま人生が終わるんじゃないかと、思い悩み泣いたこともあったんだ。


 二度とあんな風なのはゴメンなのに、なんか忍者の特性とカブッている。


「ぐばっ! 心にクリティカルヒット」


「急にどうしたユウマ?」


 影のような生活だなんて絶対やだよ。


「そのジョブが嫌なのか?」


 忍者は嬉しい。でも〝忍ぶ〞のは嫌だ。


「どういうことだよ」


「僕はね、絶対に忍ばない!」


「お、おう。ユ、ユウマは目立つし、忍べないんじゃないかな?」


 優しい友達の言葉に感謝だよ。僕を落ち着かせるために、気を遣ってくれている。


 とにかくこれからは、忍びであっても忍ばない。そんな忍者を目指します。




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