歌姫♂は今日は出会う
昨日投稿できなかったのは十二時間寝てて書く時間がなかったからです。
冷蔵庫の中を見る。食材が少なくなってきたからそろそろ買い物に行かなきゃ。丁度今日がタイムセールか。放課後にでも買いに行くか。
「今日は残り物で作るか……ん?」
昨日の夜見た時点ではあった卵が2つなくなってる。出汁巻き卵にしようと思ったのに。
「微妙に減っている醤油、僅かに位置が変わってる箸と茶碗。姉貴、夜中に卵かけご飯こっそり食っただろ、しかも2杯。太るぞ」
「あら、私ほどとなるといくら食べても太らないから平気よ」
卵焼きを食べたい気分だったのでわかりきった犯人に嫌味を言うが当の本人は自慢げに返す。
「ならせめて夜食を食う事ぐらい言っておいてくれ。今日の弁当は卵焼きなしな」
「そんな?! もうないの? じゃあ買ってきてよ」
「やだよ」
「別に良いじゃない。お金はあるんだし」
「俺が稼いだ金だしそのほとんどはてめえのせいで消えるだろうが。あと朝に買い物する余裕なんてあるわけ無いだろう。まったく、豆腐ハンバーグでも入れとくぞ。朝食作ってるからその間にバイトの準備でもしてろ」
「はーい」
実家ぐらしじゃないんだから少しはちゃんとしてほしいものだ。いや姉貴がちゃんとしてたらそれはそれで気持ち悪いが、せめて自分のわがままぐらい自分で解決してほしい。
そう心の中で愚痴る。でもまあ姉貴のおかげで『結月晴』として活動できている訳だが。オリジナル曲を販売するのだって作詞作曲なんてできない俺一人じゃ無理だったし、そう言うのがあるからついついワガママを聞いてしまう。
配信した曲全てミリオン行くから結構な金が入ってくるがその金は大半……いや、思い出すのはやめておこう。殺意でも湧いて姉貴を殺したら殺人犯になってしまう。いや、正当防衛で無罪になるか? うんやめよう。別のこと考えよう。
ハンバーグは豆腐:ひき肉8対2でいいかな。タレは細かめのおろしポン酢を中に仕込もう。唐揚げは野菜油で揚げよう、冷めた状態ならこっちのほうがジューシーだ。
その他詰め込んで弁当の完成。
学校へ行くともちろんクラスメイトの宇多聴も来ている。話しかけられたくないと避けようとしたが別にそうでもなく互いに話しかけないまま授業が始まった。
今まで何もなかった男女がいきなり普通に会話を始めたら注目を浴びるからだろう。特に俺の正体がバレるきっかけになるかもしれない。
一昨昨日に昨日と一気に距離が縮まった気がする。『結月晴』として姉貴以外と距離を縮めたのって初めてだ……距離を。
事故だったとはいえ押し倒された事を思い出した。息が掛かりそうなほど互いに近い顔、服越しとは言え体温を感じるほどに密着た体勢、全身が乗っているにも関わらず重すぎず柔らかい体。
「はいここ分かる人手上げて。わからない人は頭を下げて」
ドゴン! と赤くなった顔を勢い良く机に叩きつける。周りは驚いて体をビクッと震わせているだろうがそんなもん見る余裕無い。
「ちょっと歌風君?! 頭を下げるのは冗談だから! 机に打ち付ける勢いで下げなくて良いから?! それほどわからなかった?!」
「ま、マ○ダの流星群は強い」
「台パンなら手でやって?!」
やばい顔をあげられない。一時間目の授業は全部わからないを突き通した。二時間目以降は無心でやってた為無意識でとっていたノート以外何もわからん。
放課後、タイムセールに間に合わせる為にダッシュでスーパーに向かう。
うわ、既に始まってる。卵あるかな。文字通り戦場と化してる。一人2パックまでだがせめて一パックだけでも!
主婦のおばちゃん達の間をすり抜けて卵まで手を伸ばす。こちとら姉貴に色々と仕込まれてるんでね!
「よし! 取れた! 2パックもだ! て、うお?!」
「キャッ!」
上限の2パックを手に取った瞬間おばちゃん達の鬼の様な猛攻に後ろにいた人もろとも一気に放り出され尻もちついた。
「いってぇ。すみません、大丈夫ですか?」
「はい、なんとか」
同じく尻もちをついた和服の少女に謝罪する。何で和服? すると何かおかしかったのか俺を見るなり笑う
「プク、何ですかその格好」
言われるなり気がついたが俺は今尻もち付きながら卵を手に掲げていた。確かに変な格好だ。スーパーのど真ん中でこれは恥ずかしい。
「は?! ごめんなさい笑ってしまって、尻もちなら私もついているのに」
和服の少女も恥ずかしがりながらも頭を下げて謝罪してくる。
「いえいえ、俺が巻き込んだ俺が悪いです」
「笑ってしまった私も悪いですよ……これじゃあお互いに悪者ですね」
まるでお揃いですねのノリで言ってくる。俺もそれで納得してですねと返す。お互い立ち上がり買い物の続きをしようとすると少女が袋を持とうとした瞬間に持ち上がらず左手首を抑える。
「いた!」
「さっき尻もちついたときに手首を痛めたのか?! すぐに湿布買って来ますからそこで待っててください!」
自身が巻き込んでしまった罪悪感から焦りながらもスーパー内の薬局へ走る。幸い夕飯前時でもレジは空いているので手当する為の物を買って戻る。
湿布を貼りテーピングを施す。アイシングには心元無いが保冷剤を使用する。
「ありがとうございます。わざわざ買ってきてくれるなんて、すみませんおいくらでしたでしょうか?」
「いえいえ、手首を痛めたのは俺の責任ですし湿布とかも丁度買い足そうと思っていた所なので」
応急処置を終える。しかし彼女の袋は2つもある。片手ではとても大変だ。
「悪化でもしたら行けないですし袋は俺が持ちます」
「そんな、そこまでしてもらうのは流石に申し訳ないです」
「このまま悪化してしまえば買い物どころか日常生活にまで支障をきたします。明らかに一人暮らしの買い物でもないですし怪我が長引いたらそれこそ家族の人に申し訳ない無いと思いますよ」
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
俺は自身の分の買い物も済ました後和服の少女の分の袋を持ってスーパーを出る。
「所でどうして会計を済ませた後なのにあの場にいたんですか?」
「その、卵を買い忘れてしまいまして、タイムセールと聞いて思い出したんです……あ! 結局卵買ってない!」
「一パック譲りますよ」
ドジっ子だなぁ。
和服好き。




