歌姫♂の体育祭は騎馬戦(中編)
騎馬戦って何だっけ?
この小説が消えたらこの回が原因だな。
マジで消えないでくれよ?
『何をする気なんだ晴夜選手。こんな絶望の中、『ベッド』をしているぞ』
馬達が寝っ転がりその上に立つ。『騎手は場外、または地面に触れなければ良い』と言うルールの元できることだ。
「すまん。重いだろうが我慢してくれ」
「オーケー、地べたに這いつくばっても、無残に踏みつけられようとも、あの武露切を倒せるんだったら喜んで受け入れるさ」
「さあ、来い。武露切ここで待っている」
言葉を選んで喋る。双葉、あとはお前の言葉選びが重要だ。お前が考えた作戦なんだ。
「ふん、足場を作ったとしてこの俺に勝てると思っていたのか?」
悪魔は笑う。勝てるとは思ってない。無理だろう。正直正当な方法でお前を倒すことやハチマキを取ることは不可能だ。
「武露切。よく見ろ、あれが勝ちに来てる奴の格好に見えるか? 良く考えるんだ。あの美肌を。あの美脚を。あの凛とした立ち姿を。そんなやつがいま『ベッド』の上で来いって言ってるんだぞ? 女のコっぽい奴が。あんな可愛いやつが」
「…………………………」
武露切は俺を凝視する。何を考えているかは分からない。双葉も近くで何かを言っている。
「お前を見ている。(暑さで)顔を赤くして、(恐怖で)息を荒くして、(作戦の為に)ベッドの上で、(勝つために)来いって言ってるんだぞ?」
直後、武露切が苦しみ始めた。
「んんー! んんんんーー!ー! んんーー!! グゥ!」
歯ぎしりを始め、何かに抗っているようにも見える。馬の友人も焦りを見せたいた。
「やめろ武露切! それ以上性欲を高めるな! 何故だ! 完全に封印した筈なのになぜ! まさか、晴夜の女よりの見た目と双葉の言葉が理性の壁を超えようとしているのか。もしそうだとしたら……………」
「火照った体。汗ばんだスジ。上半身裸」
「これ以上何も言うな! 聞くなーー!! 奴は男なんだ! 下にあれがついているんだぞ!」
双葉の声を遮るように悪魔の馬達は叫ぶ。
「高まる………あふれる………うおあああああーーーーー!!!」
武露切の何かが頂点に達した。その瞬間、学校中が震えるほどの叫び声が響き渡る。
「……あれが、伝説のスーパー性欲」
極限まで鍛え上げられた筋肉は無意識のうちにでも抑え込まれていたのだろうか。吹っ切れたと同時に開放され、さらに膨れ上がった。見境がなくなったのか、それとも理性が飛んだのか、白目になり、その見た目はまるで破壊神のようだった。
悪魔の馬達は怯え始め、もはや何も言えない状態だ。恐怖で支配され、おそらく騎手の言うとおりにしか動けないだろう。
「可愛い」
俺を見て武露切が呟く。ペロっと舌で舐める動作をする。背筋が今までにぐらいゾクッとした。やばいかも。
「かっ! 気持ちわりぃ、やだお前!」
「………………晴夜の息子?」
先程の馬の言葉に遅れて反応する。目線が下に行っている。体が震えてしょうがない。
「邪魔なそれから血祭りにあげてやる」
ちょっとまってこれ騎馬戦って落としたら勝ちだよね。これ落ちても暴走して止まらなさそうなんだけど。騎馬戦関係なく倒さなきゃいけなさそう何だけど。
「うおおおおおおおおおお!!!」
悪魔は馬のうえで叫び馬は走り出す。あ、ちゃんと騎馬戦のルールは守ってる。
チャンスは一度だけ。ギリギリまで引き付けろ。馬が『ベッド』の前に来た瞬間だ。その瞬間だ。
悪魔の両手が伸びる。しゃがむ。騎手は高い位置にいるため低い姿勢には届かない。だがそれでも無理矢理伸ばせばバランスは極限まで悪くなる。
そして後ろに飛んだ。
『ベッド』から飛び降りた?! 自ら負けるのか。いや違う。あれはもう一つの『ベッド』。矢島の騎馬だ!
「ナイスだ矢島」
「いやぁ、勝つためなら騎馬戦なんてやってられないっしょ」
武露切の方に向き直る。あの巨体で無理矢理前下に手を伸ばせばバランスは悪くなる。さらに後ろに行った俺に向かってさらに前のめりになるだろう。
「俺を追いかけるためには『ベッド』を踏まずに遠回りしなきゃいけない。だが咄嗟に方法変換なんてできるか? その巨体で馬が耐えられるか? 残念だったな。『相手の馬を直接攻撃は禁止』によるルール違反。お前の自爆だ」
相手が止まれば終わりだが3大欲求の一つを利用されたんだ。本能的に止まることはまず不可能。馬も恐怖で自らの意志で動けない。
「この俺が落ちたぐらいで失格になると思っていたのか?」
「なに?!」
武露切は自身の馬を蹴り飛ばし『ベッド』を飛び越えた。先は地面だぞ! こっちまでは届かない筈だ! そのまま終わる。
だがそうはならなかった。武露切は地面に手をつけた。ように見えた。
「逃げろ! ふたりとも! 武露切は落ちてない!」
「まさか、ハチマキか!」
取った大量のハチマキを手袋にして『体の一部が地面についたら脱落』『衣服も自身の一部』。つけていない自身のものでは無いハチマキは衣服じゃない! それに腕の力だけで俺達の所まで飛んで来やがった。
「大人しく襲われれば、痛い目に遭わずにすんだものを………」
俺と矢島はあの巨木のような腕でダブルラリアットをくらう。二人のハチマキを奪って脱落すればその分の持っているハチマキのポイントはもらえる。いや、このまま俺たちを下敷きにすれば自分はその上に立って脱落、失格をま逃れる! こいつ! 本能的に行動していると思ったら頭がキレる!
「…………後は頼んだぞ。晴夜」
矢島が無理矢理俺の肩を掴んで倒す。ラリアットから抜け出せた。しかし、まともにくらった矢島はそのまま『ベッド』から落ち、脱落した。
「……化け物め」
「俺が化け物? 違う……俺は悪魔だ」
矢島を虫ケラ同然に踏みつけて立っている。まだ脱落していない。矢島、お前の犠牲は無駄にはしない!
「こい! 前回のMVP、俺が相手だ!」
「死にぞこないめ……無駄なことを、今楽にしてやる」
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