歌姫♂の体育祭は昼休み
2回ほど寝落ちして遅れました。
「へえ、双葉さんはうちに食べに来たことがあるんですね」
「一つ星の候補に上がったお店『四季折』、食べに行かない訳にはが行かないな」
「ありがとうございます。その日私はお休みを頂いていたので少し残念です」
「このおにぎり、今まで食べた中で一番に美味しい。『四季折』、予約しなきゃ」
「日白ちゃん、あなたが行くと店が大変なことになるわ」
「………………」
ここにいる人達、互いに初対面が多い筈なのに。共通の知り合いがいるってだけなのに何故こんなにも会話できるんだろうか。それ以前にどうしてこうなった。
1、自分の席を知らない葉ちゃんに氷を届けに行く双葉。ついでに名前に『葉』があることで会話に発展する。
2、美味しそうな匂いに釣られた日白さんが近づいて俺の知り合いである双葉とファンの楓が話しかける。俺の知り合いということで会話に加わる。
3、和服と白髪と顔の整った奴。目立たないわけなく日白を見つけて姉が来る。話題が『俺』なので当然話に加わる。
4、ついでに皆で弁当を食べる事になる。
納得がいった。
「それにしてもこんなにも可愛い知り合いがいるなんて晴夜もなかなかやるわね」
姉貴が俺を見てニヤニヤする。
「いやぁ、可愛いとかそれほどでもぉ」
「お前が反応するのかよ」
可愛いと言われ照れる双葉。明らかにわざとだがそれが女性陣には受けたようで食べ物を口に入れている楓と日白は口を抑えながら笑いを堪える。
「ふふふ、でも確かに少し可愛いお顔だと思います」
「キメればカッコよくなるかも……………スゥ…………どう」
ちょっと緩んだ顔から真面目な顔になる。宣言どおりカッコよい印象を受ける顔つきになった。
「スタ○バ○ストス・トリ○ム!」
「似てる似てる」
「凄い。声優目指せるんじゃないかしら?」
「皆声いいし声のお仕事できそう。私そう言うコネあるよ。朝雨ちゃんもやってるし晴夜君もどう?」
日白さんが勧誘してくる。
そっか。そういう仕事につけばあの時みたいに……人前で歌う訳じゃなくても歌を聞いてくれる。と言うか
「姉貴のバイトって声優とかそこらへんだったのか」
「あれ? 言ってなかったかしら? ラジオとか、ちょったしたキャラの声をあてたりしてるわよ。あくまでもバイトだから大きな仕事はこないけど」
「バイトとしか聞いてないな。時々のど飴買ってくるのはそう言うことだったのか………声の仕事か。少し興味あるかも」
「なら今度見学してみる?」
「私も見学してみたいです。そんな貴重な体験後にないかもしれないですし」
楓が興奮気味に反応する。興味があるものに食いついていつもの大人びた印象も無くなる。子供っぽいところを見るのは初めてかもしれない。
「なら今度話を付けてみる。すぐにと言うわけには行かないけど夏休みに出来るようにしとくわ」
やったぁ! と両手を上げて喜ぶ楓。はしたないと少し嬉しそうに注意する葉ちゃん。
「それにしてもこんなにも声の良い美形が知り合いにいるなんて流石は『歌姫』ですね」
「『歌姫』だなんて、私はただ………なんで楓ちゃん晴夜君の方を向いているの?」
「え?」
「へ?」
「……………………………………」
変えでのとんでもない言葉。あまりにも不意だった為に俺も最初は気づかなかった。だが日白さんの反応で気づいた。これ俺に向けて言った言葉だ。固まる俺と姉貴。自身の発言に気がついた楓はだんだんと焦り顔になっていく。
「すみません。てっきり知っているものかと………あ」
まだ誤魔化せたのに自らそれを潰してしまった。葉ちゃんはなんの話だろうとキョトンとしているが日白さんと双葉は『歌姫』の存在を知っている。そしてたった今正体が俺ということをバラされた。
「は、晴夜君、あの『晴』だったの?」
会話中でも一度も食べることを止めなかった日白さんもこればかりは手が止まる。驚いた表情がそのままに俺に聞いてくる。流石に誤魔化しようがないので素直に言うことにした。
「一応、『結月晴』で活動しています」
「晴夜君、そんな凄い人だったとは」
衝撃のあまり声が震えている。バラした楓を恨みたいところだが声の仕事をしている姉と同じ『歌姫』と呼ばれている日白さんが一緒なら知っていると思っても仕方ない。
「おい双葉何笑ってやがる」
「バラされて草。俺が言わなくてもバレるもんだな」
「嘘だろ? 知ってたのかよ」
「お前を学校まで運んだあれ」
「あれかぁ」
嫌な思い出だよ。バリケードや防犯カメラまで用意したのにあっさりと侵入されたあのときか。
「もしかして、晴夜君て凄い人? 」
何となく理解した葉ちゃん。
「誰にも、言わないでね」
何かどんどん晴の事がバレている気がする。
宇多聴忘れた。まあ前回出したしいっか。




