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歌姫♂の体育祭は借り物競走

書きたいこと書いたら少し長くなっちゃった。

『次の競技は借り物競走です』


ある意味一番楽しみにしている競技だ。アニメや漫画とかでよく見る借り物競走だが紙に書いてあるモノが本当におかしい。ペンとかボールとか、そんな普通の物は何一つない。『野菜』とか『テスト用紙』とかあるにはあるけど用意しづらいものだらけ。毎年明らかに用意できないものが1、2枚混じっている。去年は『アイドル』だった。『コスプレイヤー』もあったけど連れてきたの本当に笑った。『人間』とか言う用意できない方がおかしいものもあった。


「今年はなんだろうな」


勝ち負けとかの前にある意味盛り上がる。


『今年の当たりはなんじゃろな! 実況はこのわたくし、双葉(ふたば)がお送りします。俺も借り物競走出たかった!』


なおコスプレイヤー引いたのこいつ。


俺はスタート地点に立つ。せめて用意できるモノを引きたいな。


「位置について、ヨーイドン!」  


校庭に落ちている紙は完全にランダムな為どこに当たり? の紙があるかは予想不可能。

走って紙を一枚拾う。急いで開く。


『和』


「和!」


和? 


二つ折りの折り紙いっぱいに書かれた一文字。和? 和って何だっけ? 日本? 京都? 


「このお題って日本人ならオッケーですよね!」


「だめです」


「えぇ」


審判の先生に確認するもだめだった。えっと、どう借りよう。一文字? どうやって伝えるの? 観客に見せるには紙小さすぎるんだけど。


『おっと早くも一人目がゴールだ! お題は『ラーメン』持ってきたのはチキンラーメン! なぜ持ってる! 昼飯に食うのか?! お湯はどうする!』   


はやい! いや、別にゴールさえできれば何の問題もないんだ。仕方ない。伝わると信じるしかない!


「和ーーーー!! 和ーーー!! 大和魂! 京都! 日本人! 侍! 忍者! ジャパニーズカシテクダサイ!」


観客に向かって叫ぶも皆の疑問符を浮かべた顔をする。お題が一文字な為に伝わらない。関連する言葉を投げるも伝わる気配がない!


『なかなか二人目が出ません! ちなみに今回の当たりは『歌姫』と『ママ』だぁ!』


うわぁ、とんでもねえな。『ママ』とか大声で言いたくねぇ。先生が実況席の前にいるから確実にお題の内容まで放送されるんだよな。どんな公開処刑だよ。それに『歌姫』って宇多聴(うたき)が参加してなくて良かった。下手に引かれてたら多分捕まってた可能性があった。  


て、そんなこと考えている余裕はない! 早く『和』をどうにかして伝えないと借りれない! 和、何かもの………おにぎり? いやだめだ。そうだ! 箸なら日本のだ! 『和』に当てはまる!


「箸! 箸を貸してください!」


「はい! 箸です!」


「ありがとうございます! 」


気前よく貸してくれた。ありがとう。これでゴールできる!


箸を受け取って真っ直ぐに審判の所へ行く。


「箸です! お題は『和』!」


「…………プラスチックの箸は『和』じゃない」


『おっと突き返された! お題にそらなかったのか?! 』


「ちくしょー!」


速攻で戻って返しに行く。


「すみません! お返しします!」


「違かったのかい?」


「はい! お題が『和』なんです! すみません!」


「そうか、済まない。プラスチックの箸しか持ってきてないんだ」


「いえ、私の言い方が悪いんです」


お互い申し訳なさそうにする。だけどこれで木製、竹製の箸なら行ける!


「あの、お題が『和』ならあそこに和服を着ている人がいますよ」


「和服? ……………あ!」


どこからどう見ても『和』な知人がいるんだった! 箸を貸してくれた人が指差す方を見ると予想通り(はっぱ)ちゃんがいた。楽しそうに扇子を貸している。


「ありがとうございます!」


頭を下げた後すぐに葉ちゃんの所に足を運ぶ。


「葉ちゃん!」


「あ、晴夜君。もしかして晴夜君もお題が『風』なの?」


「もはや自然現象じゃねぇか。俺のお題が『和』なんだ」


「わ? わ…………和! ごめんなさい! さっき扇子を貸しちゃったの!」


お題の物を既に貸しちゃって申し訳なさそうにしている。


「大丈夫! 葉ちゃんは和服着てるし大和魂があるから!」


「えっと、それってつまり、私が行けば良いのね! 行きます! 行きたいです! 私を貸します!」


はしゃぎながら葉ちゃんは立候補する。ちょっと言い方が危ないがこれでお題である『和』を用……連れてきた事になるので無事ゴールできる。にしても借り物競走でこんなにも嬉しそうにする人初めて見た。


「ありがとう。あまりはしゃぎすぎると転ぶから気をつけてね」


「あ……ですね。ごめんなさい。つい嬉しくなっちゃって」


恥ずかしそうに照れながら侵入防止の簡易な仕切りを潜って越える。一緒に審判の所に向かう。


「先生。お題『和』です。完璧ですよね」


「う、うん。文句の付けようが無い。お題『和』クリアです……と言うか良くいましたね」


和服少女を前に困惑しながらOKのサインである白旗を上げる。


『おっと次のクリア者が出たぞ! お題は『和』! って和服?! なんで和服着てる人がいるの!? 』


「えっと、洋服をまだ買ってないんです……あ、双葉さん。氷一袋ください」


『あ、はい。百円になります。俺の席にクーラーボックスがあるからそこから持っていってください』


「とんでもねえタイミングで買い物してる」


脳の処理が追いついてないのか呆気にとられた顔をしながら百円を受け取る。


「あの、お題『防犯』何ですけど防犯ブザー持ってきました」


後からきた人が防犯ブザーを見せてくる。


「防犯ブザーは防犯できない役たたずだから却下で」


「ひでぇ」


『こ れ は ひ ど い 実際防犯ブザーが役に立った事例があるのだろうか! ある親が子を襲うふりをして子が防犯ブザーを鳴らしながら逃げる実験をしたけど誰一人助けに来ないどころか通報した人もいないという結果が実在している!』


防犯できてねえじゃないか。そりゃ却下されるわな。


「それは無いでしょ?!」


防犯ブザーを持ってきた生徒は抗議するも受け入れない。


「今私防犯ブザーじゃない防犯グッズ持ってますよ」


「本当ですか?!」


何という奇跡。葉ちゃんが持っているという。ん? ちょっとまって? 確か葉ちゃんの持ってる防犯グッズって


「すたんがん? です」 


『何で持ってるんだよ?! と言うかそんなもん持ってるやつ入れるなよ!』


「? これとっても防犯できますよ? この前も見せただけで酔っ払ってる人が退いていきました」


『でしょうね! 』


「………オッケーです」


「よっしゃ!」


もうなんでも良かったのかスタンガンを気にしないで喜んでいる。センセイは防犯できないから却下って言った手前防犯できる物をオーケーせざるおえなかった。


『今回の借り物競走どうなってるんだよ!』


「先生! 先生! お題『歌姫』です! 連れてきました! 『日白(かしろ)』さんです!」


『うっそだろ?!』


「マジかよ。なんで日白さんが」


「オーケーですサインください」


「わあ、髪が真っ白」


「えへへ、きちゃった」


 


 






どんどんカオスになっていく体育祭。


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