歌姫♂の体育祭はちょっと雑談
体育祭と運動会って何が違うんだろ。
『次の競技は玉入れです』
出番無いしトイレに行きたくなったので席を外している。
「…………………ふぅ」
流して手を洗い席に戻ろうとすると葉ちゃんが見えた。和服の為物凄い目立つ。美人の為注目の的になっている。困ったかおでオロオロしている。何か探しているのか?
「葉ちゃん。何か探しているのか?」
「あ、晴夜君。そうなの。今日熱くて、飲み物を買おうと思って購買に行ったけどやってなくて。自販機あるって聞いたけど見当たらないの」
「自販機なら下駄箱の近くにあるよ。確かに知らない人からすれば食事処にあると勘違いするかも。こっちにあるから。案内するよ」
「良いんですか? でも競技とかあるんじゃ」
「今やってるやつは俺でないから大丈夫だよ」
「それじゃあお言葉に甘えます」
笑顔になる。めっちゃ可愛い。
自販機に案内するとスポーツドリンクが売れきれていた。皆予想外の暑さに買っていくのか。葉ちゃんは運動するわけでないのでオレンジジュースとお茶を買っていくが暑さで汗かくだろうから不安だな。
「今日は暑いから塩分は取っておいた方がよいと思う」
「確かに、でもスポーツドリンクが売れきれてる」
「タブレット持ってきてるからいくつかあげるよ」
「良いんですか? ありがとうございます」
俺は椅子の下に置いてあるタブレットを持ってきていくつか渡す。
「こんなに良いんですか?」
「どうせこういう時しか食べないし、残しても勿体ないからね」
「こう言うの食べたことないのでどんな味か楽しみです」
美味しくないです。って言いたい。塩分を取る為の食べ物に楽しみとか凄えな。あんまそういうの食べないのかな。
「これ食べて次も沢山応援しなきゃ!」
ふん! と可愛らしく意気込みを入れる。
「応援されるんだから俺も頑張らないとな」
俺も意気込みを入れる。すると何かを思い出したかのように葉ちゃんは俺の方を向く。
「さっき実況で女装とか言ってたけど」
「……………」
そっか、応援してくれてるからいるよね。聞いてるよね……聞かれたくなかった。意気込みで手に入れたやる気が一瞬にしてふっとばされた。
「あ、うん。聞かないで………まって、もしかして楓もこれ聞いてるの」
「ですね。笑ってました。あの、もしかして女の人の服を着る趣味があるのですか?」
何故に興味津々で聞いてくる。まって、聞かれたくないんだけど。なんで期待してるの?
「あの時は割引に釣られたというか、ほしい服の為に仕方がなかったと言うか…………」
「そう、ですか。ちょっと残念かも」
ちょっとどころじゃない残念そうな顔。何故にそこまで…………期待を裏切ってしまった。いやそれは良くない。
「本当は少し趣味かな」
一瞬にして明るい表情になる。正直家の中でなら抵抗が少なくなってるのはある。
「このまえ楓ちゃんが言ってたんです。晴夜君は男の娘? で男の娘? は着こなし術が凄いって。私って和服しか着ないから洋服の事あんまりわかんなくて。出かけるなら今どきの子らしく洋服を着ていきなさいって女将さんに」
あのクソガキ何吹き込んでるの? 確かに、出かけるなら洋服の方が都合が良いのかもしれない。動きやすいしただでさえ美人なのに和服はさらに目立つ。心配しての事だろう。
「基本は自分で選ばないから参考にはならないかな。今度友人を紹介しようか」
姉貴はなかなかセンス良いが会わせたくない。宇多聴なら良いだろう。
「その時はよろしくお願いします」
丁寧にお辞儀する。多分和洋折衷な服が似合うんだろうな。
「話変わるけどうちの体育祭はどうだ? 他の学校よりもある意味酷いことで有名なんだが」
「酷いなんてとんでもないです! あんなに盛り上がってる体育祭は初めてでなんか私まで楽しくなっちゃいます」
嬉しそうに言ってくれる。俺が醜態晒している事もこうやって純粋に楽しんでくれる人がいると思うと少しは良かったと思う。
「実は観客も巻き込む事があるんだけど。部活対抗リレーとか、何故か帰宅部組と観客組があるんだよね。借り物競走とかも、『アイドル』とかあるし」
「参加……できるってことですか?」
目を見開いて期待の眼差しで聞いてくる。
「部活対抗リレーなら立候補すれば」
「わたし立候補します!」
嬉しそうして思いっきり右手を上げる。
「今立候補しても意味ないよ。部活対抗リレーの時にならなきゃ」
「あ、ごめんなさい。私ったら気が早くて」
葉ちゃんは恥ずかしそうにしながら上げた手とそうでない手で顔を隠す。そっか、もう学校には通ってないから一般の人も参加できるイベントは数少ない学生体験なんだ。彼女にとってそう言うのは楽しみなんだ。
「それほど楽しみって事だよ。その時になったら俺が応援する側だな。今から応援しようか?」
「それは気が早いですよ」
少しからかうように言うとそれがわかったようでポカポカと叩いてくる。可愛い。
『次の競技は借り物競走です』
「と、この競技には出なきゃいけないから、行ってくるよ。あ、氷が欲しくなったらさっきから実況している双葉って言うやつが大量に氷持ってきてるから百円で売ってくれるよ」
俺は入場ゲートに向かう。
葉ちゃんは一度深呼吸して笑顔で俺を見送ってくれた。
「他の人に負けないぐらい応援します!」
葉と双葉、二人とも天然気質のキャラクターがモデルです。気が合いそう。
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