歌姫♂の体育祭の始まり
眠い。
「なあ」
「うん」
「今って夏だっけ」
「ギリギリ」
「なら問題ないか」
「そうだね」
「………………」
「………………」
「「あっつい!!!」」
ただ今の気温25℃超え。宇多聴と共にこの暑さを訴える。朝の時点でこれなら真っ昼間なら30℃いくだろうか。この前まで春の暖かさなのに今日に限ってこれだぞ?! 小学校の時からそうだったが運動会、体育祭の時は必ずその日だけ気温が高くなる。
「水筒の中身持つかな」
「最悪自販機って言いたいけど氷がなぁ。多めに入れたけど午後には無くなってると思う」
溶けないでくれとまじない程度に祈っている。せめてもの抵抗で日影になっている椅子の下に置いてある。
「俺はクーラーボックス持ってきたから大丈夫だ。氷が沢山あるぞ」
「頂戴」
「敵に塩を送るようなことすると思うか? 良いぞ」
「やった。ありがとう」
B組女子列を挟んで双葉が自慢げに言う。いいやつだな。周りからも頂戴とせがまれるもオーケーしている。ちなみに宇多聴、歌風、季慈露と3人ともあ行で近くにいるので会話できている。
「去年は負けたけど今年は勝つからな」
「はは、俺はあの惨劇を繰り返す、いやバージョンアップすることが決定してるからな」
「良く晴夜の出場をOKしたね学校側」
「てことはお前騎馬戦に出んのか。俺も出るからより負けられないな」
まるでライバルのような発言をしているが笑いを堪えている。このやろう。絶対に負かす。
と、思いたいけど双葉強いからなぁ。
「と、それそろだ。楽しもうぜ。一年に一度のお祭りだ」
「こうなったら全力で暴れてやる。そして今年も俺達が勝つ」
互いにライバル視……してるのかな? 会話を終えて前を向く。8時40分。二人の代表が宣誓をして体育祭が始まる。やはり皆闘志に燃えているのか空気が熱い。俺もこの日の為に運動してきたんだ。
「では皆さん、己の力の限り頑張ってください!! 最初の競技は『台風の目』です! 競技に出る人はその場に残り、他の人は席に戻ってください」
各クラスから男女5人ずつ、十名残り席に座る。
説明しよう。台風の目は1つの長い棒を5人で持ち、前コーンに向かって走っていきそのコーンの周りを左一周して奥のコーンへ走り右半周、前コーンで左一周してスタート地点に戻って次の5人に棒を渡す。面倒くさいのが回転が交互に変わる。早く終えたチームの勝ちだが回転を間違えるとペナルティ。ちなみに俺は出ないが宇多聴は出る。
『さあ! 始まりした台風の目! 実況はこの俺季慈露双葉だ! ちなみに無許可でマイクぶんどったからな!』
何やってんだアイツ。
『おおっとA組はスタートダッシュ成功だ。一年の動きに統率が取れてるぞ! 掛け声で動きを合わせているようだ! それも『むかでの足』とは違い早い掛け声! スピード命! これは去年同様この組が、いやD組が早い! 全員が全力疾走だ! 合わせる気なんてサラサラない! 我先にと走っていく! 回転する端の人が今にも振るい飛ばされそうな勢い。転べば終わり、行ければ最速! まさに諸刃の剣、これは強敵だぁ!』
実況うま?!
『さあさあ次は一年女子、男子と違って安定した走りを見せています。おっと桜咲選手まさかの転倒! だがすかさずフォローに入る。これは良い。ロスはほとんどないぞ! 次は2年男子です! これはC組に期待です。武炉切選手! 身長2メートル超えで丸太さえも小さく見えるほどに肥大した筋肉! 棒を持ち上げ一人で暴走しています! ほか四人はぶら下がっているだけ!』
「ちょっとあれ反則でしょお! 誰よサ○ヤ人連れてきたの!」
『宇多聴選手訴える! しかしノープログレム、彼は勝つために自力であそこまで筋肉をつけたのだ! ちなみに彼も騎馬戦にさんかするぞぉ!』
「はあぁぁぁぁぁ?!」
おい! あんなやつにどう勝てと言うんだ!
『さあさあ3年生の番! C組がリードしたままだ。Cは安定をとって掛け声で合わせて走っているがほかの組はもう最後のかけか全力ダッシュ! ただ棒を持って走る! それだけでも命をかける三年生! その執念や思いが! 強く地面を蹴り土煙を起こす! C組もそれに感化されたのか全力ダッシュ! 激しい! 一番最初にゴールするのはどの組だ!』
そう言って盛り上がる。結果は勿論C組の勝ち。それでも2位のポイントを手に入れようと諦めなかったA組。




