歌姫♂は今日は気絶
間違えた。別の作品に投稿した。やっちまった。
朝、クラスのほぼ全員が登校している。体育祭の準備で委員会等は早く来ているだろう。と言うか一限目が始まるので登校してなければいけない。にも拘らず現在二人ほど連絡無しに登校していない奴がいる。いや、実は登校しているのだが………
「えー、体育祭の準備が始まって数日経つが急遽決定した事があるので今日の一限目で決める事にした。とはいってもどうせ時間余るし大体の事はしてもいいぞぉ………あれ、晴夜は? バッグあるが」
「晴夜なら逃走しました。宇多聴のせいです」
教室の中でただ一人何も知らない先生の目線が宇多聴へ行く。
「私は何もしてないです。ただ割引に釣られてユニクルで女装してた晴夜の写真を皆に送っただけです」
「ぷっぐ!! じょそ……くくく。と言うことは無断欠勤だな……ぷぷ………お前ら、今日は自習だ………一限目に決めると言ったがあいつに決定だ………ぷぐぐ…………当日は絶対にくるようにしろ………これはマジで傑作………」
笑いを堪えきれてない。体育祭に関しての決め事があったみたいだが強制的に晴夜に決定した。何を決めるのかはわからないが先生が明らかに楽しんでいる所を見ると公開処刑にしようと考えている事がクラスの皆にはわかった。
「おっすお届けもので〜す」
いきなり季慈露双葉が歌風晴夜を抱えてA組の教室に入ってくる。
授業中本当にいきなりの事だったので皆理解するのに時間がかかった。
平然と晴夜を自身の席に座らせ机に寝かせる。バッグを雑に頭に乗せると何事も無かったかのようにB組に戻ろうとする。
「え、何で白目向いた晴夜を双葉がかついでくるの?」
誰かが気になって質問する。皆も気になってその言葉に同意するようにうなずく。
「家に行ったら鍵かけてバリケード作って全力で引きこもってたからとりあえずピッキングして破壊して拳一発入れてきた」
クラス全員ドン引きする。双葉はそのままクラスへ戻った。つまり今グッダリしている晴夜は寝ているのでは無く気絶している。
「あ、先生。家に特別カラーの楽音ミクのフィギュアがあるんですが」
「おっと、晴夜の女装が気になりすぎて何も聞こえなかった。誰が誰に拳入れたとか聞いてないな」
堂々と取引をする。ここまでくるともはやコントみたいになってくるため何人か笑いをこらえている。
双葉がBクラスに戻ると生徒の一人が例の決め事が何なのかと聞き先生は待ったましたと言わんばかりにハイテンションで話し始める。
「実はだなぁ! 美島先生、Bクラスの担任がなぁ! 『体育祭で応援歌あるけどどうせ応援もらうならイケメンのイケボが良い』とか言ったもんだから『ならいっそ美男美女に歌ってもらおうか』と酒の席で決まってな! 組の代表で一人歌う事になった!」
「先生! なら晴夜は美男美女どっちですか?」
「多数決だな」
宇多聴がクラス中に送った写真もあってか全員ハイテンションになっていきノリで決めたかのように全員が『美女』の方に手を上げる。当の本人もいるのだが反論の声が上がらない。
「反対の声が無いから美女に決定だな!」
「「「いえええあい!」」」
大丈夫かこのクラス? 不意に宇多聴のスマホがなるもそれすらかき消されている。
事実自由な一限目は晴夜の女装の話で持ち切りになった。当の本人が気絶している事もあって(ここまで騒いでるのに起きないので仕方ない)その話に歯止めはきかない。元凶の宇多聴はやっちまったみたいな感じになっているがもうどうにもならないのか諦めた様子。当日は体操着の筈なのに何を着せていくかで議論も起こった。一限目が終わる。
次の授業は移動するので流石に起こさないわけにもいかず晴夜を起こそうとするも揺さぶってもなかなか起きない。
「目覚まし音声聞かせれば良いんじゃないかな?」
宇多聴がそう言うと『音割れの咆哮』と言う動画を準備する。これを聞いて起きないやつはいないとまで言われる品物だ。皆聞きたくないので逃げるかのように移動する。そして宇多聴と晴夜だけになった教室で宇多聴は耳元で囁く。
「さっき双葉から来たんだけど『気絶しているフリ乙』」
「………………………………………………………………………………………………」
晴夜はプルプルと震えながら何も言わなかった。そう、彼はずっと起きていた。気絶させられたのは事実だが教室についた際双葉に起こされていた。それでもなお女装について触れられたくなくて気絶したフリをしていたが勝手に決まるし自分いなくても皆晴夜ちゃんの話をするのであまりの恥ずかしさに起きることもできなかった。
晴夜の作ったバリケードは防犯カメラや赤外線センサー、機材による壁や防犯システム等で鉄壁だったが双葉の前では無力でした。




