歌姫?は今日は事後
初めてのシリアス回。
大掃除してたら遅れましたごめんなさい。
誤字報告20件以上ありがとうございます。
ドサ。
『結月晴』を終えると一瞬にして『歌風晴夜』に引き戻される。筈だった。力が抜けて座り込んでしまう。女の子座りだった。
『結月晴』が泣いても、恥ずかしくても、それは『歌風晴夜』には引き継がれない。それがいつもだった。でも今回は違った。戻れてない。見た目こそ女性に近いが心も体も男性だから無意識でも女らしい行動はしない。でも今はしている。
『結月晴』は、もう一つの人格と言って良いのだろうか? そんな事を考えた事がある。思考回路がそもそも違うからだ。いや、変化していると言って良い。歌に合わせて、人を願う歌なら願いを込めて歌う。人を殺す歌なら殺したいと思いながら歌う。聖人と殺人鬼、矛盾した思考を両立出来る。だからこそ完璧な『歌姫』なのだろう。
でもその思考は歌い終われば完全に消える。残るのは疲れぐらい。発情という感情でも熱が残るぐらい。
最初は『結月晴』としてやってなかったからか? いやそれはない。今までが証明している。
「……………………」
いやまて、女らしい行動と言うのもASMRは殆どが女性がやると言うイメージから来ているからそう言う行動を取ってしまっただけかもしれない。あくまでも『歌姫』は周りからそう呼ばれるようになっただけで俺自身は『姫』じゃない。『結月晴』と言うもう一人の俺。
「私のもう一人の姿だ」
いやまて、どんな人格にでもなれるから俺じゃない。
女性、男性両方の人格になれるだけ。曲の世界観によって変わる。
あれ? でも一人称は自然と私になっていなかったか? 違う、その一人称に性別は関係ない。そうだ。関係ない。『歌風晴夜』は俺であり『結月晴』全く、そう。もはや別次元の存在。架空の存在。切り離された存在。夢の存在。
「今の私は晴夜だ……………?!」
今俺はなんて言った? 私? 今無意識にそう言ったのか? そうだった。まだ晴のが残って、さっきの考えと矛盾している。
切り離されてない。今は混ざり合ってる。多分。心は戻っても体はまだ戻っていない………………………ならいつ戻る?
体を冷やせば戻るのか?
時間が経てば?
寝れば?
歌を歌えば? あれ?
そもそも今回の題材はなんだ? ASMRだけ。メイド? 妹? 姉? お姉さん?
今まで歌には題材が合った。前に歌った目指せポケモンマス○ーなら何が題材だ? 『冒険をする少年』と言う確実な人物像がある。どんな歌にも何かしらの視点、願い、思いが込められている。
なら今回のASMRはどうだ? ただ耳舐めを要求されただけでどう言う視点か、人物か、無かった。
無ければ晴はどんな人格にもなれない。何にでもなれる分、何も無ければ無しかない。
ならあれは誰だ? 誰の人格だ? 俺なのか?
そもそも『晴夜』として正しく行動できてない俺は本当に俺なのか?
「『結月晴』でも『歌風晴夜』でも無いなら私は誰なんだ?」
発情しているのにこんな事を考えられているのは何故だ? いや本当に発情と言う感情なのか? と言うかさっきの『題材』という自問に何て自答した? 『人物像』だ。 ? おかしくないか?
「今私はどんな感情なんだ? そもそも私は何を考えているんだ? 今の思考は正しいのか?」
「私は誰だ? 答えはなんだ? 答えは『自分』。自分てなんだ? 『結月晴』も自分に入る。でもあれは何にでもなれるから俺じゃない」
でも俺は『自分』に入る。『自分』てなんだ? 自問自答ができない俺はなんだ?
「『自分』じゃないなら俺は誰? 何で矛盾してるんだ?」
俺は俺じゃない私は私じゃない晴じゃない晴夜じゃない自分じゃない。
ここにいるのは誰だっけ?
「……に……さま」
誰だっけ?
「あ……さ」
誰?
「兄様!!!」
「………………?!」
見慣れたスタジオ。家にある奴だ。確かクソガキに動作確認と称して耳舐めとか変なこと要求されたんだっけか、はずかしかった。よくもあんなはしたないことさせてくれたな。その後覚えてないや。
「兄様!!! 反応したなら何か言ってください!」
「ああ、すまない、ちょっとボーッとしてた」
「ちょっとってなんですか! 私は何回も呼んだんですよ! 大声で!! 大声で!!」
「仕方ないだろう。恥ずかしすぎて記憶から抹消するのに時間かかったんだよ」
「あんなにノリノリだったのにですか?! あそこまでしといてですか!」
「いた?! え、マジ殴りやめろ! おい! 鎖骨やめ、肋骨やめ、地味にピンポイントに殴るな!」
「じゃあ乙女に恥かかした責任とってください!」
「何の責任だよ!」
楓が俺を殴る蹴るなどの暴走をやめると下半身をモジモジして顔を赤らめながら睨みつける。
「……………………私は小五ロリです」
「うん。色々と知ったと言ってたな」
「耳舐めは気持ち良いんです」
「うん」
「気持ちよすぎたんです」
「うん」
「初めてです」
「うん」
「おりものシートってご存知ですか?」
「そんなもの小学生の頃に習った…………まさか」
「はいそうです」
「いやまて、ただの偶然だ。そう、ただの」
「かもしれませんが、タイミングとしては絶頂時です」
「……………………………」
……………………………
「ワタシ『結月晴』ダカラ、『晴夜』ガ楓チャンニナニヲシタカシラナイ」
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