歌姫♂は今日は囁く
評価ポイント100行きました! ありがとうございます!
「兄様兄様、これ持つの手伝ってください」
「……………は?」
マイクが壊れた為に秋葉原周辺で新しいのを買った帰り、鉄クズの入った袋を持った楓に会った。すり寄ってくるように近づいてくるとその袋を差し出してくる。
持つの手伝えって今バッタリ会ったんだぞ? 第一声がそれで良いのか? 兄様って何? 俺はこいつの兄になったつもりは無いぞ?
「小5に重いものを持たせたままにするつもりですか?」
「何それ?」
「パーツです。ジャンク品なので安いですよ。兄様は何を買ったのですか?」
「マイク。壊れたから新しいのを買った」
「どんなマイクですか?」
「さあ? ばいのーらる? マイク。良くわからん」
「ASMRでも取るんですか? エッチですねぇ」
「え? そんなの取るマイクなのか?」
バイノーラルマイクと言った瞬間ニヤけ始めた。どんな用途かはわからなかったがASMRと聞いた瞬間わかった。姉貴は一体何を撮るつもりなのか。ASMRって睡眠用かとてっきり。あと音フェチ。
「所でマイクが壊れたと言いましたよね? まだ捨ててないですか?」
「まあ、一応機材だし普通には捨てられないだろうから」
「なら私にください」
「構わないけど」
「やったぜ! 今日兄様ん家によりますね」
「おいこら勝手に決めるな」
「おやおや〜? 『歌姫』ってことバラしても良いんですか〜?」
「このクソガキ!」
バレても嫌だから仕方ない。家に招くしかないか。
「話変わるが姉の手は大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまですっかり治りました」
「そりゃ良かった」
袋を持って家に招く。帰路を歩く中思ったが前あったときはあんなに警戒していのに今は真逆だ。懐いているかのようにすり寄ってくる。
「姉貴の帰りが遅くて本当に良かったよ。小学生なんて家に招いたなんて知ったらなんて言われるか」
「ねえ様がいるんですね」
「まあな、マイクも姉貴のだし。はい、壊れた奴」
壊れたマイクを渡すと工具をねだってきた為渡したらその場で分解し始めた。予想はできたが帰ってからで良かったんじゃないか?
「壊れている所によってはまた買いに行かないと行けないので………あ、ここが切れてるんですね。これなら直せます。ここは少し錆びてますね、いらない歯ブラシとかありますか?」
「古く使ってない奴がある」
手慣れた手付きでマイクを分解、メンテナンスしていく。マイクの動作確認するため少し目を離すといつの間にか組み上がっていた。そして何故か実家にいるかのようにソファーに寝っ転がりスマホを弄る。
「何という図々しい奴」
「クソガキですから」
「とても小学生とは思えないんだが」
「何を行っているんですか? 私はもう5年生ですよ。小五ロリと書いて悟りと読むんです。色々と知ってしまうんです。担任の教師はロリコンとか仲良くしていた人達は実はトイレで陰口を言っているとかメロンパンにはメロンは入ってないとか、世の中弱肉強食何ですよ」
「知った事に弱肉強食の要素あったか?」
「そして姉様は16になっても悟る事無く純粋で天然でドジっ子なんです。あんな奇跡の産物は他にいません。なので悟った私が守らないと行けません。姉様は私のモノです。他の奴が姉様に近づいた所で力の無い私はどうしようもありません。所詮小学生ですから。なので知識と技術と情報で勝るしかありません。利用できるものは利用します。と言うわけで動作確認します」
どうしようもねえなこいつ
「スタジオがそこにある。使い方は、大丈夫そうだな」
「いえ、私は聴くだけなので囁いてください」
「…………………は?」
「さあお願いします! その声で私を癒してください!」
「こんに、ちは」
ASMRなんてやった事無いのでマイクに口をどれぐらい近づけて良いかわからず少しだけ近づけてみる。
「はわぁ〜、良いですねぇ〜。もっと近くでお願いします。囁きと言うのは近くで感じるからこそなのです。吐息がかかるんじゃないかと思うぐらい近づいてください」
「わ、わかった」
口をさらに近づける。
何だろう、マイクが耳の形をしているからなのか聴いている相手がいるからだろうかドキドキしてくる。口を近づける。ここまで近いと本当に吐息から呼吸音まで全て拾われそう。機械相手なのに恥ずかしくなってくる。
「スゥ……お、おはよう」
「ハウ❤! もっとお願いします」
甘い声が聞こえる。この声は今俺が出させたのか? ただ囁いただけで、いや囁いたから。こんな近くで。
耳から目が離せない。小学生の甘い声など別にどうでも良いし相手は機械ごし。でももしこれが直接だったら、相手も年相応。例えば………宇多聴とか。
「こんなに近くでごめんね。でも、聞き専なら」
耳と口がくっつくんじゃないぐらい近づけて、仕返しをしたい気分で少しイタズラっ子風に囁く。
「もっと近くで聴きたいよね」
一瞬耳に触れたんじゃないかと思い咄嗟に離れて口を抑える。熱い。めっちゃ恥ずかしい。クラスメイトで想像するなんて、反省しよう。
楓の方を見てみ見ると
「ハワ〜❤ほれはひひへふへ〜」
顔どころか体中、言葉までとろけていた。
「次は耳舐めをしてみてくださひ〜」
「……………………………は?!」
マイク越しなら耳舐めはR指定にならない……よね?




