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七魔王の総選挙  作者: HAGEFiLL
第1章
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幕間『ミーナ&ナーミの天下取りマス!!』第二話

業界の中でも特に花形だと言われているのがMBCの女性アナだ。

その競争率は非常に高く、採用されるには、学力はもちろん容姿やコミュニケーション能力までも問われる狭き門である。

MBCが誇る人気深夜ラジオ番組『ミーナ&ナーミの天下取りマス!!』のパーソナリティ、ミーナとナーミもまた、その狭き門をくぐり抜けた人気女子アナの卵なのだ。そして彼女たちは、そのトップへと続く階段をゆっくりと登っている最中・・・のはずだった。


「この国に言論の自由はないのか?!」

「ナーミごめんなぁ〜。ウチなんか余計なこと言っちゃったのな」

「ミーナはいいのよ好き勝手言ってれば。おかしいのはこんなことで番組打ち切るこの会社なんだから」


どうやら番組スポンサーだった『大魔製薬』が完全撤退を決めたことにより、たった今番組の打ち切りが決まってしまったようだ。


大魔製薬は薬草を調合した丸薬を売り歩いた“薬行商の元祖”と言われる歴史ある企業で、エレメンタル補助ドリンク『オリオネアC』の大ヒットをキッカケに長年業界最王手の座に君臨している。『八咫烏印(カラスマーク)の大魔製薬』のキャッチコーピーはあまりにも有名である。


はっきりと表には出てこないが、シャンゼ=デルタの魔王『プライム』による実質的な影響力を強く受けていると言われている。CMキャラを務めるプライムの顔色を伺った大魔製薬側の鶴の一声でスポンサー撤退が決まったというのだ。

放送中の失言という形でスポンサーを怒らせてしまったミーナとナーミ。

女子アナとしてやってはいけない大失敗を犯した彼女たちはもう出世コースから外れたも同然だ。


「どうする?やめちゃう〜?」

「このまま引きさがれるわけないじゃない!スポンサーが降りたなら、ウチらで連れてきたら文句ないでしょ!」

「なはぁ〜ん!ナーミカッコイィ!!」

「まずはウチらの番組を復活させるところからよ!」

「あーい」

「ミーナさん!ナーミさん!」


決意を固める二人を追ってくる声が聞こえ振り向く。


「あんた誰?」

「ミケっていいます!デスクから二人について行けって」

「カメラマンさん・・・、かしら?」

「はい、カメラマン兼、運転手兼、照明兼、録音兼・・・その他もろもろっす!」

「あ、そう・・・」

「すご〜い、なんでもできるのな〜!」

「いや〜光栄ですミーナ&ナーミさんと一緒に取材できるなんて」

「ミケくん、あんた何年目?」

「え?先月入ったばかりです」

「もう何も聞くまい。ミーナ&ナーミは終わったのだ・・・」

「ナーミ!勝手に終わらせないのな〜」

「くっそー、絶対にでっかいネタ撮ってきてやる!」

「いいっすね〜!でっかいネタってなんすか・・・?」

「うるさい!!いくわよ!」 


自分たちの失敗で冠番組を打ち切りにしてしまったミーナ&ナーミは、いち取材スタッフとして現場に向かうことになった。“元“人気パーソナリティとはいえ、あくまでも彼女たちは若手の局アナであり、この待遇は当然と言えば当然のことなのだ。



ミーナとナーミを乗せた取材カーにミケが機材を積み込み運転席に座る。


「ミケくん、まずはカンタローザーに行ってちょうだい。寄りたいところがあるから・・・」

「了解でーす!」



夕方、MBCを出発してエルデネへ向かった取材カーは中継地のカンタローザーについた。カンタローザー出身のミーナ&ナーミ。ナーミにはある目論見があった。


「やっぱり協力してもらうなら地元の企業よねー。まったくなにが『プライムも元気ハッスル!オリオネアC!!』よ!あのにやけ顔、前から気に入らなかったのよね!」

「でも、本当にやってくれるのな?」

「当たり前でしょ、地元出身の大スターが直接出向いてるのよ。カンタローザーの企業が応援しないで誰が応援するのよ?!」

「でも、ウチあの広報の人どうも胡散臭くて嫌いなのな」

「だめよミーナ。信頼関係っていうのは、まずはこっちが信じてあげることからはじまるのよ」

「ふーん」

「ほら、見てみなさいあの下品なオブジェを」


そういってナーミはカジノ街の中心にそびえる『ウィン・デヴェロップメント』のオーナー『ビフ・ジェネラル』の像を指差した。


「あんな目立ちたがり屋が社長の会社よ、私たちの実績、スター性を知って利用してこないわけがないじゃない!」

「なはは、それって信じてるっていうの?」

「うるさいわねぇ、利用できるものはなんだって利用するのよ。伝説はもう始まってるのよ!」


ウィン・デベロップメントはカンタローザー最大のゼネコン企業であり、社長のビフ・ジェネラルは経済大国シャンゼ=デルタのプライムと並びアルドラマの長者番付に並ぶ人物であった。その名声は国内だけにとどまらず、いま最も勢いのある会社として各国に名を轟かせている。



数分後ウィンデベロップメントの入り口から出てくるミーナ&ナーミ。


「んぎーー!!何でなのよ!なんでウチらが直接出向いてるのにあんな態度なのよ!」

「頭の固いやつらだったのなー」

「何が偉い人と一緒に来てねお嬢ちゃんだー!こっちは未来の大スターよ!!」

「所詮は出待ち30人の深夜番組なのなー」

「結局ウチらはMBCのお偉いさんのハンコがないとなんもできないってわけね・・・」

「局アナなんてそんなもんなのな」


歯を食いしばりながら足早に取材カーへと戻ったミーナ&ナーミ。


「どうでした?地元の全面バックアップ取れちゃった感じっすか?」

「うるさい!」

「・・・んじゃ、そろそろエルデネ向かいますか?」

「感謝祭は明日なのな。今日は実家に帰るのな」

「え〜っ!!ミーナ&ナーミさんのご実家に行けるんですか?」

「ミケくんはここらへんでまってるのな」

「ひぃぃそんなぁ。ここ治安悪そうじゃないですか〜」

「カジノの駐車場なら安心して眠れるわよ」

「じゃあねミケくん。また明日な〜」


そういって自分たちの荷物を取ってミーナ&ナーミは夜の街に消えていった。



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