生意気な女を少し見直した
「なんというか。お前は生意気で偉そうだけど、仕事はできるんだな」
意図的に曖昧な感想を言うと未廻下は面倒くさそうな表情をした。
「ちゃんと作れたってこと? そこだけはっきり言って」
そう言われて渋々頷くと、未廻下は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
イラ。
「でも、あれくらい覚えて当然、中身はチーズと肉だけだからな」
「じゃ、あんたが先作ったやつの中で一番ボリュームがあるの作るわ」
そう言われた同じタイミングにピー、と言う音が鳴った。
未廻下がモニターに目を向けると。
「来たね」
モニターにはコイツのリクエスト通りの商品が注文された。
と思ったら、他に次々注文が表示し始めた。それもう、大量に。
急いで素材のトレーを確認するとマフィンが合計七食、肉が八で、卵が四つ。
再びモニターを見る。
「足りない…」
時計を見るとまだ七時になろうとしている頃だ。
普段、こんな時間の平日に大量注文は出ない。
厨房からカウンターの完成した商品を客に渡す台が見える。
そこに注文を待つ客が並ぶのだが、誰もいない。
だったら、今注文されている商品は全てドライブスルーからだろう。
商品を作らないといけないが、素材も作らないといけない。
未廻下に商品を作らせて、その間に素材を作るか。
いや、いくら何でも無理があるだろう。
先、良い手際で一つの商品を作れたとはいえ、コイツはまだ新人だ、限界があるのだろう。
「私が注文作るから、他のやって」
葛藤している僕に隣の女がそう言った。
「でもお前、覚えた商品は僕が作ったヤツだけだろ?」
「乗せるものを言わればやるから」
「…大丈夫なのか?」
「あんたが来るの遅かったから斧崎さんにある程度教えてもらった」
肝が据わってるなぁ。
そんな自信満々に言われたら、やってみるか。
「わかった。なんかあったら直ぐ言え」
そう言って、とりあえず卵を作ることにした。
左後ろにあるエッグクッカーの前に立つ。
エッグクッカーは鉄板の上に卵を丸い形に整ってくれるリングが八つある。それらのリングは三X三の鉄穴に挿して、繋がっているが、右下だけが空いて、卵を割るためのスペースになっている。
そこにスプレー容器に入っている油を上からかけて、未廻下の方を一瞥。
どんな感じに進んでいるか心配して振り向いたら、未廻下は険しい表情でモニターを見つめていた。
「おい、無理するなよ、難しそうだったら言えよ」
「大丈夫だから、ちょっと考えことしてただけ」
と言いながら商品を紙に包む。
この女は偉そうで生意気だと思ったけど、まあ、今でも思うが、それを除いたら他の女子よりまともかもしれない、いや、優秀と言った方が適するだろう