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ヒロインがいる最悪な日常  作者: 春輝 鉄和
第四章 日常の裏
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発覚

リッピと会う時に浴衣を着るように指示される。

リッピの記憶の別の層で見た着慣れのない服装。

どうやら多くの男は異性のこの浴衣に魅入られるらしい。

ソレは私が調べたリッピの情報を、私を感染させることで手に入れた。

やっぱり私の姿を利用するつもりなのだろう。

感染されたことでアレと情報の共有ができるようになっている。

自分の意識とソレの意識が入り混じり、私の行動を支配すると同時にソレの一部のデータが私のプログラムに入る。


インベーダーウイルス、デスウイルスという情報が手に入った。

どうやらそれは奴の名前のようだ。

私から峯下 ゆいの情報を盗った代わりにソレの正体を得た。

デスウイルスは人間のようだ。

少しだけその記憶を覗けた。一人の少女がそこに居た。

私はこのままだとデスウイルスの一部となる。

ソレの一部となればその正体だけではなくその目的も知ることができるかもしれない。

だが、そうなれば私の意識はもう殆ど消えているだろう。

私はリッピを誘った場所に着く。

彼はどうやら帰ろうとしていた。

目が合うとリッピは硬直した。


彼の目はどこか輝いていて、私を観察し始める。

これが魅入られるということか。

私は沈黙に耐え兼ねる

「何か言ったらどうなの?」

と私が言うとリッピは我に返るとぎこちなさそうにする。

浴衣を着るだけでこんなに態度が変わるとは…。

私に与えられた役目は彼を錦帯橋の入り口まで連れていくこと。

そのあとはなにが起こるのか私にはわからない。

橋の先端に着くと受付に異様な存在の人形がいた。

お金を渡すと私たちがカップルなのか尋ねてきた。

白々しい…。


茶番に付き合う気はないので即座に否定するとリッピは胸を押さえながら項垂れる。

「彼になにをした?」

食いつくように人形に訊く。

「いや、それは貴様が原因だろ!」

やっぱり、人形に化けていたのはデスウイルスだった。

「大丈夫だ。貴様がいないところで彼を処刑する。橋を渡れ。その先のコロッケ屋でまた命令を下す」

逆らおうとしても体は勝手に動く。

もう諦めるしかないのか…。

世界の感染率が89%になった。

この何日かで動いていなかったメーターが少し動いた。

どうやら私を感染させることで世界の感染が少し滞った。

リッピに逃げるように伝えたい。


しかし、私が命令に背けるような行動をすると直ぐそれが正される。

橋を渡り切るとそこには二つの影があった。

細田と松浦の人形だった。

どうせこの二人も…。

「あれ、唯ちゃんも来てたの」

「邪魔だ。どけ」

私の意思に反した言葉が私の口から出る。

「唯ちゃん、どうしたの?」

「チーナ見てあの野郎も居る」

松浦がリッピに気づいて興ざめだと言わんばかりの表情をする。

「え、二人できてるの? もしかして、デート⁈」

細田は目を輝かせて私に寄って来る。

この二人は感染しきれていないのか。

私の意思に反するものが邪険にするのはそれが理由だ。

二人はデスウイルスに従っているのではなくリッピのイメージに従っている。

二人になんとかデスウイルスと戦うようにプログラムに触れれば。

『無駄だ。貴様がなにをしようと今の俺を止めることができない』

私の中から声が響く。


『これが聞こえるってことは、貴様は俺の一部になりつつある。諦めろ』

やっぱりダメか。

気づいたら二人はどこかに行ってしまった。

指示されたコロッケ屋まで来てしまった。

「これで90%だな。貴様はもう用済みだ」

コロッケ屋の姿をしたソレが言う。

そして、私の姿に再び変装する。

「このまま遠くへ行って自壊しろ」

え、嘘…。

「かしこまりました」



歩き続けて30分この世界の端が見えてきた

このまま落ちれば底に着いた瞬間私はもう戻ることができないだろう。

このまま世界は壊されリッピは死ぬ。

そして私は自分の役目を成せなかった不良品として終わる。

仕方ないことなのだろう。

私はできる全てを尽くした。

いつかこうなることも想定した。

リッピのsan値が12まで落ちる。

彼に今なにが起こっているのだろう。

今の私にはもう…。

『嫌だ』

私の中からまた別の声が聞こえる。


え、嫌だってどういうこと?

『彼をたすけないと』

そんなこといわれても私にできることはない。

『彼を…、彼を!』

「助けたい!」

はっきり感じたそれは私の意思。

私の声だった。


気づけば私は歩くのを止めていた。

『進め』という声が響くと再び歩きだしそうになる。

端は目の前。

あと2歩で私は落ちる。

リッピを、リッピを…。

「助けるう!!」

動きが止まる。

足は私の意思で動くようになった。

「動ける」

一つの雫が頬を伝って落ちた。

私は泣いていた。


「動ける」

人間は苦しみや悲しみで涙を流すと思っていた。

しかし、それは間違っているとも言われた。

人間は自分が抱えきれないほどの大きな感情の揺れを感じた時に涙を流すといわれた。

今ならわかる。

自分の内から溢れるこれは喜びだ。


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