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ヒロインがいる最悪な日常  作者: 春輝 鉄和
第三章 ヒロインと夏祭り〜あの夏はもう、戻らない〜
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不完全な架け橋

迷ったと言うより、単純にどう掛ればいいかわからない。

 今目の前にいる少女は、今まで見たことがない正真正銘、未廻下唯の姿だ。

 しかし、そのオーラはまるで別人のようだ…。

「何か言ったらどうなの?」

 再び話をかけられて、はっ、と我に返った。未廻下は腕を組みながら憮然とした表情で

 僕を見つめる。


「あ、いや、なんというか…、似合うね。その浴衣」

「は?」

 やばい、何言ってんの僕は。

 何急にらしくないこと言ってんの?

 未廻下を直視できない。

 恥ずかしい…。

 キモイって思われたかなぁ。

「まあ、アンタにしては珍しく恥ずかしくない格好だね」

「そ、そうかな。テキトーに選んだけどね」

 やばい…。死にたい。

「アンタ、なんで錦帯橋の方ずっと見てんの?」

「い、いやー、夜だとこんなに綺麗なんだな錦帯橋って」

「行く?」

「行くってどこに?」

「・・・。錦帯橋」

「あ、あぁ、行く」

「アンタ、大丈夫?」

 

 僕は未廻下の後ろ姿を見つめながら錦帯橋に向かって歩いている。

 花柄の薄い紫色の後ろ姿は紛れもなく女子の後ろ姿だ。

 前髪を抑えるためにあるヘアピンも特徴的で印象深い。

 先から何かの鼓動がうるさい。

 どこかで太鼓叩きをしているのだろうか?

 周りを見てみるがその様子はどこにもない。しかし、どれぐらい歩いてもその音は決して小さくならない。

 それが自分の心臓の音だと気づくの少し時間が掛った。 


 錦帯橋の先端に着くと受け付けで金を支払って渡ることとなっている。

 名スポットだけあって外国人の比率も大きい。

 その人たちさえも浴衣を着ているのに、僕だけ私服は少しだけ浮いているような感じがする。

 未廻下が二人分の料金を出すと。

「カップルさんですか?」

 受け付けの女性が満面の笑みで尋ねてきた。

「あ、いや…」

「違います」

 なんと答えればいいか言葉に迷っていると未廻下は突風の如く否定した。

 なぜかわからないが心に何か突き刺さたような感覚がする。

 未廻下は冷淡にも、そんな僕を差し置いて一人で渡り始めた。

「お兄さん」

 受け付けの女性に声をかけられた。

「頑張って!」

 悪気はないとわかっているが、その気遣いが余計に心の穴が深まった気がした。

 

今更のことだが、未廻下は今日、僕の分の料金を全部出すつもりなのだろうか。

 なんと言うか男として情けない気がする。

 っていうか、未廻下はどれぐらいのお金を持っているのだろうか。

 本当にこれでいいのか僕は?

 僕は後ろから未廻下に声をかける。

「あの、未廻下…さん。お金、無理しなくていいからね」

 未廻下はピッタと止まって、僕に振り返った。

 余計なお世話だ、と言わんばかりの表情だ。

「それ、今更? 無理と思ったら最初からやらないでしょ」

 それはそうか…。

 

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