考察
目覚めた時には家に僕しか居なかった。
一人暮らしだから当たり前のことだが、先まで誰かがいた気がした。
気づくと僕はキッチンの椅子で寝っていたようだ。
テーブルの上には、冷めたご飯と唐揚げがある。
確か、ここに未廻下がいた気がする。
しかし、それに少し違和感を感じる。
よく思い出すと、あの未廻下は何か不自然だった。
挙動、口調、何もかも不自然だった。
まるで誰かが無理に未廻下を演じているような、そんな感覚。
いや、虞らく、あれは現実ではなかった。その可能性の方が高い。
理由は二つある。
一つ目は、テーブルの上にある食事は女性が作るものとは思えない。
僕は一回未廻下のことを「オトコ女」と呼んだことがある。
それに対し、アイツはかなり憤慨していた。あのルックスでも、自分が女性であることにプライドを持ってるように見える。
だから、百歩譲って未廻下が僕の家に来て、僕のために料理を作ったとして、もっと女子らしい料理を作ったと思う。
そうだなぁ…、肉じゃがとか?
肉じゃがを作る未廻下を想像してみる。
紫色のエプロンを身につけながら満面の笑みで、「召し上がって」と言ってる彼女の姿は、…ちょっと怖いかも。
なんか企んでそう。
「そうだなぁ、未廻下だったら…」
『ほら、できた』
茶碗のなかで出来立ての肉じゃがが僕の前に置かれる。
食べてみると。
『旨い! 未廻下って意外と女子力高いだな。ごめん、オトコ女を撤回するよ』
未廻下は僕に背中を見せることで照れを隠そうとする。
『そ、そう、わかればいいよ…』
エヘへ。このギャップはたまらん。
よって、あいつが僕に料理を作ろうとすることはあり得ない。
何せ、僕らは親睦を深めてないところか、お互い犬猿の仲だ。
この前のこともあって、僕に会うのは気まずいはず。
二つ目の理由は。
僕は冷めた唐揚げを一つ摘んで頬張る。
中身は案の定、豚肉だ。
唐揚げといえば、鶏肉。
だが、イレギュラの人間も存在する。
それはそう、僕だ。
「唐揚げは鶏肉もいいけど、豚肉は味に深みがあってやっぱり旨い」
つまり、この如何に癖のある男料理を作った可能性が一番高いのは僕自身だ。
だが、作った記憶がない。
多分、忘れているだけだろう。
だったら、未廻下が僕の家に来た記憶はどうなるかというと。
「どうせ、あれは夢だろ?」
そう思う方が信憑性が高い。
「そういえば、今何時だ?」
自分のスマホを探して、それがいつも寝っているソファーにあることに気づく。
時刻を確認すると。
午後八時五十分。
僕は学校もサボってしまったようだ。




