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ヒロインがいる最悪な日常  作者: 春輝 鉄和
二章目 ヒロインと学校〜なんでお前がここに⁉︎〜
39/61

二章の終わり

体育の後は数学だった。

 心身とも疲れて全く集中できなかった。

 微かに覚えているのはサイン、コサイン、エージェントか何かの話をしていたような。今はもう放課後である。


 僕は自分の席でラノベを読んでいる。

 疲れてると文字まで正確に読めないものだと痛感する。

 全て記号にしか見えない。

「あんた…、何で逆さまで本読んでんの?」

「・・・」


 声の主は未廻下だった。

 正直、ラノベを読む気分でもなかったので左隣の床に置いている自分のリュックにしまうことにした。

 周りを見ると、もう既に皆下校したようで、人どころか荷物もない。

 あるのは空っぽになった机と静まり返った教室と男女二人。

「お前は帰らないのか?」

「あんた本気なの? 二回目だよ? 約束忘れるの…」

 憮然とした表情を浮かべて、僕を見つめる未廻下。


「お前はどうしてそんなに知りたいの。正直、お前に何か利益があると思えないだけど」

 未廻下は黙る。

 何か考え込んでいるようだ。

「…約束は約束、私が勝ったんだから詮索なしで教えて」

「僕はぼっちが好きだ」

「嘘だ」

 は?

「いや、本当なんだけど、っていうか…、僕たち初めて会ってから二日しか経ってないよね? その時から思うだけど、なんでそんなに上から目線なの?」

「関係ない」

「いや! 関係あるね。正直、不愉快だ。もう僕に関わらないで欲しんだけど」

「…いいから、教えて」

 未廻下が若干退いたようだ。

 このままコイツを僕の周りから排除できそうだ。


「お前、頭大丈夫か? 言ったよね、僕はぼっちが好きだ。それ以上それ以下でもない。わかったらさっさと帰って二度と僕に関わるな」

 未廻下は少し俯いて何も喋らなくなった。

 これでもうコイツは僕に関わらないだろう。

 こんな沈黙も嫌だし、先に帰ろっと。


 僕は帰宅の準備にかかろうとしたその時だった。

 パッシン‼︎ という鋭い音が教室だけではなく廊下までに響いた。

 あまりに唐突な出来事だったので暫く状況がうまく把握できなかったが、直ぐ僕は目の前のクソ生意気な女にビンタをされたことがわかった。

 意識が少し朦朧とする。

 でも不思議と痛みがない。頬が少しジリジリするぐらいだ。


「何だよ、お互い様だろ? お前が偉そうにするから僕もそうしただけだろうが…。帰る…」

 僕は自分のリュックを背負って教室を出ようとしたら後ろの襟首が思い切り引っ張られたと思ったら、そのまま無理やり僕の机の方に押された。

 何とか尻を机につけてバランスが取れたと思ったら。

 バン! と大きな音が鳴ったので思わず目を瞑ってしまった。

 恐る恐る目を開くと、至近距離で未廻下が目の前に居た。

 ち、近い。


 未廻下の両手は僕を挟んで僕の机に置いてある。

 今なった音は机を叩く音だったことに気づく。

「…なに、新手の『机バン』ってやつか?」

 未廻下に皮肉めいたことを言おうとしたらなぜか声が震える。

「あんたさ…、体育の時、試合放棄したよね?」

 僕は最後の点数の時に早く試合が終わるようにわざと未廻下のサーブを打ち返さなかった。

「だったら何だよ?」

「あんたは周りに人が集まり始めてから本気出し始めたよね? その時はもう私に勝つより、大人数の目の前で負けたくなかった。そうだよね?」

「だから? だったらなんだよ? 別に…」

「つまり! アンタは、約束関係なしに途中から自尊心のために闘い、その自尊心さえ放棄した落ちこぼれなんだよ‼︎」

 イラッ。


 僕は未廻下の発言に頭にきて力いっぱい目の前の女を両手で押した。

 全力で押したつもりだったのに、コイツ二歩しか後ろに退がらなかった。

 押した時に何か柔らかいものを感じた気がして動揺してしまう。

 もう全てに憤慨してしまう。

 目の前の女だけではなく、こんな状況にも拘らず、手に残った感触を気にしてしまう自分自身と、自分の人生を囲む全てに。

「そんなに…、そんなに知りたいなら教えてやるよ…。僕は、僕は人間が大嫌いだ!」

 もう、どうにでもなれ…。

「男って、女の気を引くために強がるし、見栄を張る。女は建前だけで生きる。人間は虚栄心がないとまるで生きていけないような、そんなクズばかりだ! それだけじゃねぇ、刹那主義、独善主義、楽観的で現実を見ようとしない奴、自分が全て正しいと思う奴、そんな怠惰で傲慢な奴らばかりだからだよ!」

「・・・」

「ハァ…、ハァ…」

 暫く沈黙が続く。

「そんなあんただって、虚無主義で、利己主義じゃん…。周りの悪い所しか見てなくて、そればかりに固執する、ただのエゴイスト…」

 未廻下は悄然とまるで呟くようにそう言った。

「・・・」

「もう、あんたなんて、知らない…」



 私はそういい捨て、教室を出た。

 胸部が何かに締め付けられるような感覚がする。

 これは、何かのエラー?

 しかし、それ以上深く考察しなかった。

 それが必須だと認識しなくなった。

 私が廊下を歩いていると後ろから彼の私を呼ぶ声がした。

「み、未廻下!」

 私は振り返らない。彼はもう、私が必要ないのだから。

「未廻しっ!」

 ドン!

 彼は私を壁に押し付けて片手を力強く壁につけた。

 彼は赤面して、途方に暮れているようだ。

 それは長く続かず、すぐに意を決したような表情を浮かべ。

「嘘だ…。ほ、本当は、自分自身に自信がないんだ。自分が他人と関わるのが、怖いんだ…」

「・・・」

「え、えっと…」

「み、未廻下さん? リッピ君?」

 左から声がした。

 そこには愕然とした表情の小柄の女の子の姿がそこにあった。

 リッピはその子を見るや否や、すぐ私から離れた。

 そして…、無言でどこかへ行ってしまった。

 リッピがいなくなっても私たちは見つめあったままだった。

 沈黙を破ったのは私だった。

「あんた、どいうつもり?」

 小柄な女の子の姿をしたソレは、歪んだ笑顔を私に向けた。


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