勝利と敗北の狭間
僕は不貞腐れ気味でラケットで羽を未廻下方に打った。
アイツは無表情で向かってくる球を掴んだ。
なんとなくその面が(計画どーり。ドヤッ)と言っているような気がする。
チッ。
僕はコートの左側にたつと、未廻下もつくべきポジションに立つとサーブの構えを取る。今度は絶対に点を獲る。
くそ、こう思うとフラグが立つと嫌なんだけど。と、取り止めのないことを考えていると未廻下が羽を打った。
心の準備をさせろー!
打ち返そうと思ったが。
落ち着け、よく観察しろ、軌道の行くその先を視るんだ。
前過ぎる、これは。
「アウトだ…」
トンッと鈍い音が響く。
足元を見るまでもない。
「はい、リッピ君、誇らしげに立ってないで未廻下さんに羽を渡してー」
へっ?
得点盤を見ると、ニ対○になっている。
恐る恐る足元を見ると、羽は線の上に落ちていた。
・・・。
イン、かよー!
こうして僕は、未廻下の曖昧な羽の軌道も猪突猛進に打つことにした。
十分後。
「ハァ…、ハァ…」
「・・・」
今は、お互いの得点が十四対十四。
デュースだ。
なんとか先にマッチポイントについた未廻下に追いついた。
「唯さんすごい、汗の一つもかいてない」
周りの連中は練習が終わって、僕と未廻下の試合を観に集っている。
兎出さんの未廻下に対する感嘆の言葉を耳にすると、出来るだけ荒い息を誤魔化すようにする。
本当は床にへばりつきたいくらいに体力が消耗している。
喉にむず痒い感覚。
身体に纏わりつく倦怠感。
それでも負けるわけにいかない。
もう、未廻下と交わした約束なんてどうでもいい。
ただ、コイツらの見られているところで無様に敗北したくない。
僕は構えている羽を打った。
羽は未廻下の足元をめがけて落ちていた。
未廻下は高くそれを打ち返す。
今度は照明が目の前にはない。
僕はスマッシュで打ち返した。
できるだけ未廻下から遠い箇所を狙って打った。
これは、もらった…。
気付いたら未廻下はいつの間にか羽の向かっている目の前に居た。
「さすが未廻下さん! おれたちにできないことを平然とやってのけるッ」
「そこにシビれる!」
「あこがれるゥ!」
男どもがどこかで聞いたことのあるようなセリフをほざいている。
打ち返された羽は打ち返せないものではなかった。
でも、点数を取ったつもりでいた僕の反応が遅れ、僕はラケットのフレームで羽に擦るのが精一杯だった。
十五対、十四。
この時点で僕は試合の結果がどうでも良くなった。




