不自然な出来事
次の相手は、…マジか。
ギャルの浅瀬 亜美だ。
コイツと松浦はよく一緒にいる。
どうやら二人は、いとこ同士らしい。
松浦が長崎県から転校してきて、今のようになってしまったのは少なからずコイツにも原因があるだろう。
真面目な人間が自発的にグレることなんてあまりないと思う。
まあ、僕には関係ない話だ。
この学校はほとんどのことは自由。
通うのは皆私服。
化粧も、髪を染めることも可。
事例はないが、多分、刺青まで許させると思う。
にしても、目の前の人はやり過ぎじゃないか?
髪の色は薄い桃色。髪型は形容しがたい。
いや、本当にどう例えればいいのか判らない。
長さはそんなに無いはずなのに片方だけツインテール…、なのか?
化粧は濃いな〜。相変わらずだけど。
爪は…、なんだっけ。ナイルって言うんだっけ? とにかく、長い。
「お、リッピ君、ヤッホー。相変わらずなんも喋んないねー」
うっわ、なんか言ってるー。マンヂヤッバー。カッコ笑、カッコ喋りかけんなー!。
僕はリアルギャルは本当に好きになりそうにない。
と思っていると浅瀬はいつの間にっかサーブを打って、羽がネットにあたって、コットンと床に落ちる。
「ごっめーん、拾ってくれるー?」
イラ、いちいち口調が癪に障る。
自分で拾えよ。と思いながらネットに向かって歩く。
羽を拾おうとしたら目の前で浅瀬がしゃがんで僕の腕を掴む。
爪がチクっとする。
「リッピ君、うち、思うだけど…」
何も思わなくていいから腕放してくれないかなー?
「リッピ君って、鈴っちのこと好きなの?」
は?
コイツ、今なんって、僕が兎出さんのことが好きかって?
くだらない、あ、あれ
腕を無理やり引っ張ろうとしたら…、抜けない。浅瀬の顔もなんか変だ。
お、おかしい、何か良くない予感がする。
まるで浅瀬が何か別のものに取り憑かれているような錯覚がする。
いつもの気が抜けたような雰囲気はどこにもない。
むしろ、何かとんでもない邪気のようなものを感じる。
それが今日初めて感じるものではない。
どこかで感じたような恐怖。
そう…。まるで今日学校に通っている時に自転車で轢きそうになった老人が放ったような、悪意。
「リッピ君ってさぁ、ロ…」
「あんた達何してるの?」
気付いたら未廻下が浅瀬の後ろに立っていた。
浅瀬は僕の腕を放して、立って未廻下に振り返った。
「えー、ただの恋バナだよ? 唯っち」
「・・・」
未廻下は何も言わずただ浅瀬を無言で睨んでいる。
少し険しさを感じるような睨み方だ。
それはまるで宿敵を眼前にしているかのような双眸。
浅瀬は僕に背を向けているから、どんな表情しているかわからない。
ピッー‼︎
「えっー! 早い、うちら始めてすらいないのにー」
と言い先生の方に向かって
「センセー、うち、ちょっと気分悪いんで、保健室行ってきまーす」
とだけ言い捨て体育館を出っていく浅瀬。
杞憂かもしれないが、その挙動は少し不自然だったように思う。
一体、この数分で何が起きたのだろうか?
何も起こらなかったようで、とんでもないことが起きていたような…、言葉にし難い感覚。




