リッピがラノベのプロローグを読むだけの話。
僕は一番前の一番右端にある自分の席に座ってリュックを下ろす。
かなりシーンとした雰囲気である。
同じ空間にあまり関わりがない人が一人いるだけでどうしてこんなにも落ち着けないだろう。
こ言う時のためにリュックの中にラノベが入っている。
授業が始まるまでにラノベを読むことにした僕は、目の前の壁に貼り付いている時計を確認する。
時刻は午後二時四十分。
夜間部の授業は午後五時から始まる。
では、なぜ僕と古田さんがこんなにも早く教室に待機しているかと言うと、僕たちは併修授業を受けている。
本来、夜間部は四年で卒業するが、それを一年短縮する手段がある。
その手段とは併修授業を受けることである。
普段からは、「併修」と略して呼んでいるそれは、一年生の時に先生に併修を受けたいと申し出て、受けたい理由を紙に書いて、許可が出たら二年生からそれが始まる。
申し出たのは僕と古田さんだけのようだ。五時から他の生徒も来るはず。
併修授業は午後三時十五分から始まる。
なので三十五分も早く着いてしまった。
普段ならこんなに早く着くと三時まで一人でラノベを読んでいるが、今日は珍しく古田さんもかなり早く着いている。
まぁ良い、とりあえず、何読もう…。
リュックの中から二つのラノベを出した後、その両方を机に置いて、どちを読むか悩み始める。
左にあるのは途中までしか読んでいない異世界コメディ。その続きが気になるから無性に読みたい。
しかし右にあるのは今年でJA文庫で大賞を獲った異世界アクション系のラノベだ。
最初はタイトルを見て話の内容が深そう。と思って店の棚から出したら、そこに『大賞』と大きく書かれた帯が巻いてあった。
後ろの粗筋を読んで無性に気になって思わず買ってしまった。
買っただけなのでまだビニルに包まれている。
くっそ、プロローグだけを読もう!
これからライオンがシマウマの獲物に喰らいつくかのような勢いでビニルを剥がし、まず、最初に開く時によくあるキャラの絵が描かれているページを見る。
そのクオリティに心を奪われる。
そしてプロローグ。初めは誰かの夢の話から始まる。
それが直ぐ終わり。一人称だったのが三人称に変わってプロローグは続いた。
最初は異世界に転生したらしい少年の描写が描かれている。
この少年が主人公なのだろう。と思いながら読み続ける。
そしてその世界の住人の神官の女の子が現れ、話が進む。
よくあるパターン。これだけだったら大賞が獲れると思えない、絶対何かある。そう思いながら読み続けた。
しばらくすると。
え、えっ、ええええええ‼︎
殺された! 主人公だと思った奴が殺された。しかもプロローグで急に。
って神官の娘が主人公かい!
ダメだ。続きが気になる。このまま一章も…。
「ゴッホン、リッピ君。もう授業始まるんだけど」
いつの間にか先生が来ていて僕に話しかけた。まだ早いじゃ…。ってもう三十五分経ったのかよ! 続きが気になるのにっ。
名残惜しいまま併修の授業が始まった。




