斧崎さんと言う正社員
自転車でバイト先に着く。
行ったことがなくても、一回は目にしたことがあるどこにでもある人気のハンバーガ店。
ここが自分のバイト先である。
店の前にある駐輪場に自転車を止め、入店する。
入店すると、右に注文ができるカウンターがあって左に客席が並んである。
今からスタッフルームに入りたいが、そのためには、鍵が必須である。
社員なら、いつでも自分専用のスタッフルームの鍵に限らず身に持っているが、そうでないバイト連中等はカウンターの後ろの右端にかけてある鍵を使わなくてはならない。
自分もまた然り。
その鍵を取ろうとカウンターの右端にある、押すことも引くこともできる自分の身長の半分程度ある鉄の小さい扉を押し、鍵を取ろうとしたら、その鍵を掌に乗せた腕が差し伸べてきた。
その腕の持ち主は斧崎さんと言う正社員だ。
赤いフレームのメガネをかけていて、弱そうで頼りなさそうな見た目をしている。
まあ、実際はそうだが、根は悪い人ではない。
多分...。
斧崎さんは、自分が朝バイトに入るときによく会う男性の上司だ。
三十五歳だが、見た目はまだ二十代前半に見える。
そんな斧崎さんが差し出している鍵を取っていると。
「急いで、ギリギリだよ!」と斧崎さんが焦って言ってくる。
「ありがとうございます」と返事する。
ギリギリなのはいつものことだからあまり気にせず、スタッフルームに向かう。