回想6 未廻下に殺された。
どうやらまた感情が表に出ていたようだ。仕方ないだろ? 毅然としながら実際にあったことと全く異なったことを言われたら動揺しない方がおかしい。
「毎回同じ反応で、正直飽きた」
また何か言ってる。って言うか話の軌道がずれすぎてサインを教えるの忘れてた。
なんか、こいつのこと違う意味で恐くなってきたので早く教えて逃げよう。
「ここ、お前の名前の右に空白の四角あるだろ? 他の皆がしてるように『OK』って書けばいいから」
「なんでそんなに焦ってるの?」
「じ、じゃ、僕はこれで…」
「待って」
ヤッベ、逃げようとしたら腕掴まれた。
ダメだ、もう、僕は、ここで終わりだ。
ありがとう、本当にいい人生だった…。
「君たち仲が良いね?」
「「斧崎さんまだ居たんですか⁉︎」」
僕と未廻下が声を合わせて言った。
斧崎さんが助けにきたヒーローの如くスタッフルームの下駄箱がある方から出ってきた。ちょうど未廻下の後ろだ。よし! これで…あれ…あれ、あれ? 抜けない。
「ひどいなぁ、俺は先から居たよ。気づかなかった?」
「全然気づきませんでした。てっきり、もう帰ったのかと」
未廻下が僕の右腕を自分の左手で掴んだまま斧崎さんと会話を始めた。
ちょっと待て! 本当に全然抜けないですけど、しかもまるで力入れていないかのように喋ってるし。こいつ化物か⁉︎
「おい、ちょ、放せ!」
「いや、帰りたくてもまだ仕事が残ってるから」
「多忙で大変ですね」
「そうなんよ。深夜から働いてるから、もう眠くて」
なんでこいつらこんなに悠長に話していられるの? 僕見えてないの? あと、腕痛いですけどー‼︎
「おい、マジで、放せ!」
引っ張っても引っ張っても抜ける様子は全くない。むしろ痛いだけ。
そしてこいつらまだ雑談を続いている。
「おい! 放せって、このおとこ女‼︎」
「はっ…?」
あっ反応した。これでやっと…イタタタタ‼︎
「イタタタタタ、痛いって‼︎」
「今、なんって?」
未廻下がとてつもない握力で僕の腕を掴んでいる。その顔を見るとこれまでと比較にならないくらい、鬼の如く僕を睨んでいる。
ちょっと待って。こんな至近距離でそんな顔しないで。恐い。本当に恐い、こんな状態で逃げようとしても逃げられないし。ってかホントに痛い。
「あのー、未廻下さん? 許して…」
「ねぇ、今、なんって言ったの?」
すごい、笑顔のつもりか知らないけど、人間って目が笑ってないとこれだけ恐ろしい表情になるものなんだなぁ。恐いいいい。
「お、斧崎さん、助け…」
「あっ、そういえば店長に電話せんにゃいけんかった。じゃ、お疲れー」
と言いながらスタッフルーム扉に向かう。
いや、お疲れー。じゃねーよ! この状況どうにかしろ! バカ上司。お願いだからこのサイコ女を止めってくれー‼︎
斧崎さんに左手を伸ばして助けを求めようとしたら、パッタンとスタッフルームのドアが閉まった。
ヤバイ、この状況本当にヤバイ。これで完全に二人きりになった。
冷え汗が半端ない。恐る恐る僕の右腕を掴んでいるバーサーカ女の方を見る。
「私がおとこ女だっと言う件について詳しく聞こうじゃない?」
今度こそ本当に死んだ…。
チーン。




