回想4 魔王が現れた
見た目と反してかなり詳しそうだ。
このあとは「ここは既に加速世界だぞ、シルバーク○ウ!」とか言ってたけど、どうやら突っ込んでも火に油を注ぐような効果しかないと思ったので、無視してダンボルを乗せた台車を厨房に持っていた。
「はっあー、疲れた…」
時刻は午前十一時、休憩中。
僕は、鍵を持って、スタッフルームに入ると、椅子に座り、強いため息を吐きながらテーブルに身を任せた。
「本当になんなんだよ。あいつ…」
もう五時間働いたが、肉体より精神的に疲れていた。
未廻下は仕事ができる。想像以上にできる女だ。
ものは一回見ただけで覚えられるような人間離れした能力を持ってるから、教える側の僕からしたら同じことを何回教えなくて済むし、仕事を一緒にするにはなんの問題もない。
と思っていたが、やっぱり女と一緒に仕事をするのはいろいろと面倒そうだ。
しかもあいつ、やったら僕に生意気な態度とるし。
やっぱり嫌われてるかな?
「もう、帰りたい」
僕は俯きながらため息混じりにそう呟くと
ピンポーン。
インターホンの音がスタッフルームに響いた。
鍵は僕が持って来たので、その後にくるバイトの人は外にあるインターホンのボタンを押して中に入っている人に開けさせないといけない。
正直、このシステム結構面倒くさい。
こちはいちいち立ってドアを開けないといけないから、休憩になりやしない。
ドアを開けると。
「うっげ!」
未廻下がスタッフルームの外に立っていた。
「なに…?」
僕の反応が気に食わなかったのか、僕を睨んでいる。
「い、いや、なんでもない…」
噂をすれば。と言いうが、僕はただ考え事をしていただけなのにこいつが現れた。
ドアを持ったまま未廻下がスタッフルームに入れるスペースを開け、未廻下は淡々としながら無言でスタッフルームに入って来た。
「お前も休憩なのか?」
「そうだけど、文句ある?」
文句しかない。お前と二人きりでスタッフルームで休憩とかマジで勘弁して欲しい。
よし、今から客席でビッグバーガでも食ってラノベを読もう。
「ーって顔してるんだけど…」
「はっ? なんで僕の考えていることを⁉︎」
「やっぱり、そうなんだ…?」
邪悪なオーラを放ち、すごい目で僕を睨んでくる女。
怖い、恐い、怕い、強い‼︎ いろんな意味でコワイんですけど⁉︎
そんなに正確に僕の気持ち顔に出っていたの?
だとしても今日で初めて会った相手の顔を見て思考を当てるって普通ありえないだろ?
最後は僕がボロを出して確信したって感じかな?
この女の前で感情が表面に出ないようにもっと気を付けよう。マジで。
「言っとくけど、あんたがそいう態度だから私も冷たくしてるからね」
「…はい…、…すいません」
これ以上問題にならないようにここはちゃんと謝ろう。
「ここでのあんた、結構素直だね」
ここでの僕? どいう意味だ?
いや、そんな不思議なものを見ているような目をしないで。僕がお前の発言に疑問を抱いているところだからね?
「そんなことより、スケジュールってどこで見ればいいの?」
「あそこにあるボックスの中に『スケジュール』と書かれた白いファイルがある」
未廻下の質問に答えながらスタッフルームの奥にあるボックスの方に指を刺す。
未廻下はそこまで歩いてボックスを少し眺めると。
「あった」
と言って、目的のファイルを手に持ち中を眺めている。
どうやら僕はもう必要ないようだ。
よし、ここは彼女だけの時間にするため、僕は紳士にこの場を去って、客席でラノベを読もう。
「じ、じゃ、僕はこれで…」
「待って」
え〜! まだ何かあるの? もう自由にさせてー!
「確認したらサインを書いてって言われたけど、どこに書けばいいか分からないから教えて」
嫌だ! 自分でなんとかしろ!
「わかった」
くっそ、恐いから逆らえねー。誰か助けてくれー‼︎。
と自分の聖なる休憩の時間が無駄に過ぎているのを感じながら、魔王こと未廻下 唯様の方へ歩く。




