自覚なしかよー?
それをまだ知らない未廻下は。
「よくわからないけど、私は何すれば良い?」
「とりあえず、一時的に放置しよう。今作れるものを作ればいい」
「そのことなんだけど…」
と言いながら平日は飾り物のグリルの左のもう一つのグリルの方に指を指す未廻下。
そのグリルにかけてある肉のトレーを嵌めることができる、中央に大きな穴のあるパーツに空の肉のトレーが二つ重ねてあった。
「もしかして…」
トレーの機械の方を見ると思った通り、肉のところだけトレーが挿していない。
「うん、因みに卵もない」
もう既に大変な状況なのに未廻下は卵のトレーを引きながら不幸中の不幸の様な報告してきた。
肉と卵がない。朝のメニューにその二つの素材はマフィンの次に主だが、両方がないとなるとマフィンがないのと一緒だ。
そのせいで未廻下も商品が作れない。
そろそろ卵が上がってくるが、鉄のテーブルに卵が要る商品の紙が十個並べてある。
どう考えても足りない。
とりあえず肉を焼こう。
と思ってピールを台に置いてグリルの方に向かおうと動いた瞬間だった。
ピーー、と絶えない音が鳴り始めた。
エッグクッカーの音だ。
卵が出来上がった。それは良いことだが、肉も焼かないといけない。
両方は同時にできないし未廻下も作業が進めない、とのことで。
「た、卵をト、ト、トレーに入らてくれ、えーっと…、このスパチュラで。いいか、お、落ち着いてやりぃよ、に、肉焼いてくるけぇ」
「まず、あんたが落ち着け」
未廻下にエッグクッカーの右隣に用意してあるスパチュラを渡して、卵を任せることにした。
僕はグリルに…。
「ちょっと待って、この音どうやって止めるの?」
僕を呼び止めって左手でエッグクッカーを指差す未廻下。
そう言えばこいつは新人だった!
あまりの忙しさと、こいつがあまりにも自然に作業をこなしていたから、今日が初日だということを完全に忘れていた。
「そこにある白いボタン押したら止まる」
「これ?」
「そう、それ」
未廻下がボタンを押すと厨房中に響いていた音が止む。
「あ、あとは蓋を開けっ…」
「音の止め方だけでいい」
と言いながら蓋と一つになっている八つのリング上げる未廻下。
よくわからんが、あとは一人でできそうなので僕はグリルに向かい肉を焼くことにした。
グリルの左隣には鉄でできた冷凍庫兼引き出しがある。
エッグクッカーの隣にもあるが、あそこにある肉は予備として置いている。
引き出しは三つある。
一番上の引き出しを引く。
引き出しの中には細長い長方形のダンボルの箱を縦に入れられて、その中に凍った丸い肉が綺麗に重ねって並べてある。
右手に四枚、左手に四枚持って両手同時でグリルの鉄板の左端に二列に肉を並べる。
グリルの前にある三つのボタンの一番左のを押すと、上にあるもう一つの鉄板のような機械がゆっくり下りてきて、肉を軽く圧縮し、自動で焼く。
機械が上がれば、あとはトレーに移すだけ。
機械が下り始めると、またエッグクッカーの方へ。
「卵が二つ足りないから、また作って良い?」
未廻下が油スプレーを持ちながら聞いてきた。
「作れるの⁉︎」
未廻下が真顔でサラリっと聞いてきた質問に流石に驚いた。
いや、商品が一目で作れるようになったことは千歩譲って納得できる。
千歩譲ってだけどね。
一応作ってるところを見たから不承不承でも流すことはできる。
できるが、僕が卵を作っている間、こいつは商品を作っていた筈。これは一万歩譲っても納得できない。なのになぜ?
「横目であんたが作ってるの見てたから」
と、僕の疑問に答えるかのように未廻下がそう言ってきた。
なるほど、なら納得…、できないね。
「お前…、化物かよ?」
「はっ?、喧嘩売ってんの?」
自覚なしかよ!




