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「最強」の二つ名を持つ者

お久しぶりです。生きてます。

中途半端だったところだけ先に投稿します。

『闇夜の騎士団』拠点襲撃後からスタート。

なお、初手物語核心部です。

 帰った時には、すでに日が昇り始めていた。

『闇夜の騎士団』と戦っていた時間は思ったよりも長かったらしく、もうこりごりだと言って去っていった三人のランク6と別れを告げてから、ようやく家に戻ったところだった。


「疲れた」


 あの戦い方は、やたらと疲れる。

 いろいろ並行して行うせいで、身体ではなくて脳が休みを欲するのである。


 気の抜けた雰囲気で庭を歩き、玄関口までついたところだった。


「あれ、ケイ?」


 ちょうど楓が大学へ向かおうとしているところとばったり遭遇した。


 楓は最近どうやら大学生活を満喫しているらしく、ここ最近は楽しそうに大学へと通っていたのは圭も知っている。


「ああ、楓か」


 そう一言だけ言って、それじゃと手を上げて自室へと向かう。

 そんな姿に、楓は違和感を覚えた。


「ねえ、何してたの?」


 ぴたりと足が止まる。階段で立ち止まったまま、ほんの一瞬だけ無言の時間が流れた。そして、また足は動き出す。


「野暮用だよ。たいしたことないさ」


 疲れ切っているのに、ごまかすような返答。

 以前の『赤』との抗争を思い出す。袴田の『追跡』によってナクモを捉え、『闇夜の騎士団』本拠地を叩く計画をしていたはずだ。

 いま圭が疲れ切っている理由がこれなのではないかと予測がついた。


 明らかに不自然な言動に、楓はなんとなく圭との距離を感じていた。





 ベッドに寝転がった圭は、先ほどの楓との会話を思い出していた。


「……」


 もしかしたら心配しているのかもしれない。それとも何をしているのかを教えてくれないからと不機嫌になっているのだろうか。


 圭は、今後のいざこざに楓を巻き込むつもりはない。この一年ずっと一緒に動いてきたが、やはり楓には荷が重すぎる。それに、最初は楓を取り巻いた出来事だったが、次第に圭の出来事に楓が巻き込まれる形になってきていた。


「まあ、もとから考えていたことだし」


 とはいえ、どうしても心の片隅にこびりついて離れない思いが、絶えず圭の思考を取り巻いていた。



「だめだ、感情は思考には不要。一度落ち着いて考え直せ」


 独り言をつぶやきながら、ベッドの上で姿勢を横向きへと変える。


「しっかし、どうしようか」


 圭は自分がこの世界にやってきた理由は、『闇夜の騎士団』になにかしらの答えがあるだろうと踏んでいた。

 やたらと巻き込まれるし、知れば知るほど疑いが深くなる。


 だが、今回の騒動で組織につながる道は途絶えてしまった。

 彼らはそう簡単に表舞台には顔を表さない。それに今後は組織立て直しのために姿を隠すだろう。

 そうなれば、圭が真相にたどり着くにはまだ多大な時間がかかることになる。


 何か手がかりはないものか。姿勢を仰向けに変え、天井をぼんやり眺めていた。


 その時、突然そばにあったスマホが震えた。

 画面に表示されていたのは、竹岡からの着信だった。



「はい、もしもし」

『三鷹か』

「はいはい三鷹です」

『すまないが一度能対課まで来てくれないか?』

「えぇ……」


 嫌な頼みだ。疲れて寝ようとしているのに、身体に鞭を打って来いというのだから。

 おそらく話の内容は今回の独断での『闇夜の騎士団』本拠点への突撃だろう。


 どうせ役に立たない能対課なのだから、わざわざこんなタイミングで呼び出さなくてもいいのに。


 ぶちぶち心の中で文句を言いながら、ベッドから立ち上がりシャワーを浴びる。服を着替えてカジュアルな服装に整えてから、覇気のない動きで家を出て東京へと足を伸ばしたのだった。






 能対課本部に着くと、そこではめずらしく竹岡がロビーに立って待っていた。

 これは今まで竹岡がとったことのない行動だ。能対課のなかでも一際信頼され頼られている竹岡は常に忙しい。にも関わらず、圭が着くのをわざわざ待っていたのだ。


「あ、竹岡さん」

「三鷹か」


 お互い手を軽く上げて挨拶する。

 それからすぐに竹岡は許可証を取り出し、入り口部分にバーコードをかざして中へと入っていった。

 圭は奥から投げ渡された一時許可証を使い同じように能対課の中に入る。何回も顔を出した圭からすれば、慣れたものだった。


 ツカツカとヒールを鳴らす竹岡の隣に並んで、少し大股で歩く。


「そういえば、前の事件でのけが人はどうなりました?」

「それなら問題ない。死傷者は出たが……生きていた者は全員退院済みだ。あの規模の爆発にしては、被害は最小限に収められたと言ってもいい」

「そうですか。それはよかった」

「琴桐の方にも礼を言っておいてほしい。彼女の魔術に随分助けられた」

「あ、ああ。はい、そうですね……」


 少し言葉を濁らせたのを不思議そうに見たが、すぐにその表情は元に戻っていた。


「それで、今回はどんな要件ですか?まあだいたい予測はついていますけど」

「そうだな。昨日の『闇夜の騎士団』への突入の件だろう」

「やっぱり。……ん?」

「どうした三鷹」

「あ、いえ」


 そういえば、件の行動を咎めるのは、竹岡ではないらしい。どこぞの政府のお偉いさんにでも怒られるのだろうか。


「今日、誰と面会するんですか?」

「決まっている。『最強』織田正樹だ」







 ーーーーーーーーーーーーーーーー



 楓は昨日までと同じように、今日も大学で勉強し、遊ぶつもりだった。ここ数日はとても充実した生活を送っていたし、今までの縛られた生活とは大違いの世界に、少なからず興奮していた。


 だが今日はその気持ちも、ブレーキがかかっていた。


「どうしたの?元気ないね」

「……え、そう?」

「うん、なんか雰囲気が」


 授業の合間に、香奈は楓の様子がおかしいことに気が付いていた。普段より、覇気がない。いつもより俯いている時も多い。

 アイドルのようにもてはやす周囲の人たちは気が付いていないが、いつも一緒にいる香奈だからこそ気がつけた。


「昨日何かあったの?」

「昨日?」

「ほら。昨日行ったサークルですっごい絡まれてたじゃん」

「あ、ああ。そうね。そのせいかも」



 嘘をついた。



 楓も自分の気分が落ち込んでいるのも、なぜそうなっているのかも分かっている。

 全ては今朝の圭との身近な会話だった。


 ボンヤリと外を見る。

 溢れかえるような人数の大学生が道を埋めている。窓と逆側を見れば、楓と少しでもお近づきになろうと教室を埋めんばかりの人が授業に出席していた。



 圭のあの様子は普通ではなかった。

 今まで精神的支えだった圭がいなくても、ここ数日は楽しい日が過ごせた。

 あれだけ圭がいないと寂しいと思っていたのに、意外と充実した日々だった。


 しかし、その間圭は何をしていたのだろうか。能対課に顔を出したり、依頼を受けているとは言っていたが、本当にそれだけだろうか。


 思い返せば、入学前の三月によく顔を出していた能対課支部の葛西の顔を見ていない。

 以前はずっと意識していた魔術の学習もここ何日も手をつけていない。


 本当にそれでいいのか。

 そこまで考えが至ったところで、隣にいた香奈から言葉が聞こえてきた。



「あんまり気にしないほうがいいよ」

「えっ?」

「ああいう人たちって、何にも考えてなさそうだし。変なことに思い悩むより、もっといろいろ体験するほうが絶対楽しいって!」


 意図せず耳に入った言葉が楓の思考を止めた。


「うん。そう、そうね」


 圭も言っていた。最初が一番楽しいんだから、楽しんだ者勝ちだと。

 それに、気になるなら今日にでも聞けばいい。


 そう自分に言い聞かせた楓は、頭の隅でなにか引っかかった状態のまま香奈と一緒に教室を出た。





 ーーーーーーーーーーーーーーーー




 能対課の中でもひときわ豪勢な部屋に通された圭は、場の雰囲気に馴染めずに落ち着けずにそわそわしていた。


「緊張しているのか?」

「そ、そりゃそうですよ。だって、わざわざこんなところに呼ばれるなんて、とんでもないことをしでかしたのかなと思うじゃないですか」

「『闇夜の騎士団』への単独突入はなかなかとんでもないことだと思っているが」

「ランク6を集めて四人で行ったんですけどね」

「大した奴だ。よく人を集められた者だ。四人ということは、左神もか?」

「あ、いえ。彼女は趣味じゃないと断られました。きてくれたのは沼地さんです」

「『泥熱』を動かせたのか。テコでも動かん男だと思っていたのだが」


 一緒に突入した三人は、竹岡や真田と違ってフリーに動ける。左神にも要請はしたのだが、「最近別のことにハマっているからムリ」と断られてしまっていた。


「とにかく、変な気は起こすなよ?」

「変な気って、なんですかいったい」


 目の前には、見ればわかるほどに高級なテーブルとソファが置いてある。金の刺繍も入っていて、庶民感覚の圭からすれば傷つけたりしないかとすぐそわそわしてしまうのだ。


「寝ないように」

「寝られるわけないです」


 目をこすっただけで指摘してくる竹岡に流石に嫌気が差す。眠い中呼び出してきたのは能対課の方だというのに。





 それから數十分も待たされた後、ようやく待ちかねた男が入ってきた。



「失礼するよ」


 ノックもせずに入ってきた男は、予想と反して若い男だった。少なくとも20代なのは間違いない。いや、下手したら10代でも通用する。

 渋くいかつい顔なのだろうと思っていたのとは大違い。とても爽やかな好青年。これが能対課を統べる人物とは思えないような男だった。



 そして、その姿を見て、圭の意識は硬直した。


「……えっ?」


 目をこする。幻覚を見ているわけではなさそうだ。


「おい、大丈夫か?頼むぞ?」

「へ、は、はひ」


 竹岡にど突かれて気を取り直したが、また目の前の男をじっと見てしまう。


「えっと、私の顔になにかついているのかな」


『最強』織田正樹は、少し困ったように笑っていた。



 促されるままにソファに座り、織田と面と向かい合う。それを確認した後に、竹岡は部屋を出て行った。



「はじめまして。三鷹圭くんだったね?」

「はい……」

「話はよく聞いているよ。よく能対課を手助けしてくれているそうだね」


 誰もが眩しいと感じるような笑顔で、ありがとうの言葉を口にする。それから軽く世間話をし、すぐに本題に入った。


「『闇夜の騎士団』には手出しをしてほしくないんだ」

「はぁ」

「できることなら、私たち能力対策課の力で解決したい。申し訳ないが、これはうちの威信をかけた戦いなんだ」


 拳を握った織田は、身体をブルブルと震わせていた。それだけ何か因縁のある関係なのかもしれない。

 だが、それらの話はほとんど圭の頭には入っていなかった。


 それからも一方的に織田の方が話して、会談は終了した。話は要約すると、「『闇夜の騎士団』は能対課で検挙したいから首を突っ込むな」というものだったが、思考が回らない圭はいつの間にか了承してしまっていた。


「それじゃあ、よろしくね」


 ボンヤリと織田が去っていくのを見送る。たった10分くらいの会談だった。

 隣で、竹岡が中での話を聞きたそうに様子を窺っていたが、それすらも無視して能対課を後にした。



 もはや意味が分からない。この世界はいったいどうなっているのだろうか。何が起きて、何を求められているのだろうか。

 なにより、



「なんでこの世界に、『勇者』がいるんだ?」



『最強』織田正樹は、異世界の『勇者』だった。

この話を含めてストックしてあった3話は必ず投稿します(8/22 18時, 8/24 21時に予約投稿済)。

プロットはあるけど、筆が進まない。そんな感じです。

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[一言] お久しぶりです。エタったと思いつつ、何度も読み返してたので再開うrwしいです!今後とも楽しみにしてます!
[良い点] 生きとったんかワレェ! 続きが読めて嬉しいぞゴラァ! 養生しろやぁ!
[良い点] 生きてて良かったです! [一言] おかえりなさい 待ってました 話としては前回でひと段落、今回はエピローグ兼これからのプロローグと言ったところでしょうか 楓の事も、勇者っぽい人の事も気にな…
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