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四ツ橋サバイバル⑤

昨日書き直そうか悩みましたが余裕がないのでそのままにしておきます。


あけましておめでとうございます。

吸血女(ブラッディガール)』赤井と『人形遣い(ドールマスター)』生田は、死の淵を彷徨う東堂が白衣を着た医療班に運ばれる間、お互いに睨み合いを続けていた。

 二人ともほっとけば東堂が死んでしまうことを考慮した上で、お互いに気が熟すのを待っていたのだ。


「さてと」


 生田が言葉をこぼすと、それに連動するかのように生田の地面が盛り上がり、生田を肩に乗せた状態のゴーレムが完成した。

 それから数瞬で次々と土からゴーレムができていく。東堂の時よりも多い、両手でギリギリ数えられる数だ。


 それを見つつも、赤井は真っ赤な真空パックを取り出して、そこに自分の血でできた針を突き刺した。

 そこから吹き出した血が赤井のコントロール下に置かれ、操作できる量を増やす。


 生田が、人差し指を赤井にむけると、ゴーレムが赤井へと動き始めた。


 一体のゴーレムが赤井へと大きな腕を振り下ろす。それを血で作られた壁で防いでから、別方向から槌の形をした血が巨体を横になぎ払った。

 さらに槌をスタンプ状に変えてから、押すように突き出してゴーレムの頭を吹き飛ばす。

 東堂が物理で壊したのを、はるかに早く、簡単に壊していく。


 しかしその間に生田は新たにゴーレムを作り出し赤井を取り囲むように陣を敷いた。

 八方から死角なく潰そうとゴーレムが動くと、それを見るまでもなく血で台を作り出しエレベーターのように自分の身体を上へと押し上げた。標的を失いぶつかり合ったゴーレムに、先ほどの槌のように形を変えて血を地面に振り下ろした。


 わずかな時間でまとめてゴーレムを潰した赤井は休む間もなく生田の方への走り血を伸ばす。


 生田のゴーレムは一撃必殺にはならないが、赤井の血は身体に突き刺さった瞬間に致命傷へと変化する。


 それを理解している生田は乗っているゴーレムに後方移動の指示を出しながら、次々とゴーレムを作り出す。それらの攻撃を血で受け流し、障害物が存在しないかのように血を伸ばしていく。


 それを見て、生田はため息をついた。


「トレント」


 ゴーレムに乗りつつ直接木に手を当てる。すると、木がゾワゾワ動きだし、根を地面に上げて歩き始めた。


 土や石だけではない。木などもゴーレムとして扱える。特に土兵士と比較して、木で作られたゴーレムであるトレントは応用性が高い。自在にしならせる木の枝に、それに連なるたくさんの葉が、宙を走る血を遮る。

 その隙に生田はもう一本の木に触れ、トレントによる包囲網を作成した。


 しかし、赤井はそれらを気にすることなく走る。血の先行自体は防がれているが、それは赤井の接近まで遮るほどではない。邪魔しようと振られる枝は粘性を持つ血によって絡みとられ、遮蔽物としての効果をほとんど発揮しない。


「あなたに逃げ場はなくってよ」

「しつこい女は嫌われるじゃろうて」


 生田は次々と手を木に添える。その回数だけトレントが追加され、赤井を囲むように連携を取る。

 それを見て、赤井は不愉快そうに鼻で笑った。


 杭のように変化した血が、トレントの幹を突き破る。それもひとつではない。一度に数カ所同時に突き刺したのだ。

 それにより木自体が自分自身を支えられずバキバキと音を立てながら倒れていく。そこまで行けば、トレントはもう動くことはない。


 それからも次々と生み出されるゴーレムやトレントを簡単に破壊していく赤井に、生田は辟易とした。






「……仕方ないのぉ」


 生田を肩に乗せたゴーレムは、ボロボロと崩れ落ちる。それに合わせて生田は地面へと降り立った。

 それを見て、赤井も足を止める。今の状況だと、赤井が有利というわけではない。それに、廃墟エリアまで行き構造物からゴーレムを作れば、赤井の血は止められてしまう可能性は高い。

 それを踏まえてのこの状況に、目の前のゴーレム女が何かをする可能性を警戒していた。


「あら、諦めたのかしら」

「ここで負けるのも契約外じゃしの。少しだけ本気を出してみせよう」

「ふん、戯言を……」


 血を走らせ迫りくる赤井を、生田は冷静に見極める。


 そして唱えた。



「『()()』」



 生田の言葉に呼応し、土が前に現れ壁を作る。それは血の進路を阻み、回り込みを阻止するように流動的に動く。


「なっ、……くっ、」


 今までの能力では考えられない、唐突に現れた壁に困惑しつつ、赤井は大きく跳び壁を足がかりに生田を見下ろす。


「『()()()()』」


 生田の前から土が盛り上がり、生き物のように赤井へと向かい四肢を狙う。それを察した赤井は生田とは別の方へと跳び、距離を取った。ただそれは大した意味をなさなかった。


「無駄じゃよ」

「……はっ?はぁっ!?なんで……」


 違和感を感じた時には、足が沈んでいた。まるで沼のように沈み込んだ足は、今度はいくら引き抜こうともびくともしない。


 赤井は、目の前の女はただ人形を操るだけなのだろうと思っていた。


 だから、なぜ目の前の女がこんなことができるか、赤井には全く分からなかった。


 身動きできない赤井に向かって、生田は再度唱える。


「『()()()()』」


 足元から突き出た刺は、赤井の腹を大きく抉り取った。


「……」


 横腹がない。手を当ててその場所を確認してから痛みが遅れて襲ってきた。それに抗うことはできず、土の束縛によって前屈した状態のまま気を失った。


「『()()』」


 その言葉に従い、無理な体勢にさせないように土が動きだし、優しく赤井を横に倒した。


「……運が悪かったのぉ」


 樹海の戦いを制した生田は、新たに作り出したゴーレムの肩に乗り、生き残りが集まる廃墟の方へと向かっていった。






 ----------------






 廃墟エリア



 ここにいるのは五人。そのうち今外で戦っているのはその中でも三人だ。

 一人は水島静樹、二人目は河内武司かわうちたけし、そして三人目は五十嵐冬夜いがらしとうやだ。

 彼ら三人が表で激闘を繰り広げているのに対して、上岡成美と井上和雄いのうえかずおの二人は建物内に隠れていた。


 これは二人の戦略と能力故の行動だ。


 上岡は基本的に生き残ることを意識している。さらに隙を見て一撃必殺。このサバイバルを立ち回るにはこれが最善と考えているため、無防備に自分の身を外に出すことはしない。


 それに対して井上の場合は、能力による判断だった。


「や、やべぇ〜……こりゃ勝てんわ」


 井上の目には、激しく戦い続ける三人にマークがつき、各人に対して能力の評価が出てきていた。


「全員総合ランクAとかイカれてるだろ」


 井上の能力は鑑定。あらゆる対象に対応するステータスを測ることができる。これは大雑把で6段階程度しか分からないが、ゲームステータスのように様々な分類が行われる。

 井上は自分のステータスと彼らとを比較することで、隠れ潜むことに決めたのだ。



 さらに、彼の鑑定能力を使えば対象の能力とその成長度まで分かる。


 今のそれぞれの結果を簡単に示すと次のようになる。


 水島静樹

 能力者

 能力 : 伸縮自在

 総合ランク : A


 河内武司

 能力者

 能力 : 無効化

 総合ランク :A


 五十嵐冬夜

 能力者

 能力 : 自己再生

 総合ランク : A


 ランク3でしかない井上の鑑定による総合ランクはCの上位程度だ。あの三人組の中に入っても瞬殺されることは確定している。


 身を潜めつつも、井上はパーティ会場でのことを思い浮かべた。

 あのとき、全員に対して鑑定をした。それによって大体の強さ序列は把握している。この場で言えば、上岡成美は総合ランクはBだ。


 しかし、例のランク6に対してだけは話が違った。


 井上のステータス上では、総合ランクはBだった。詳細ステータスも軒並みBとC前後でしかない。


 唯一バグかと思ったのが、DEX(器用さ)がSランクだったことだ。今まで様々な人たちを鑑定してきたが、ステータスにSを冠する表示は初めてだった。


 今の井上と三鷹圭の総合ランクは変わらない。だから勝てる。最初はそう思っていた。



 しかし、井上はすぐに自分の考えを改め直した。


 人を探る能力に特化している井上は、なんとなく魔術や能力の影響を感知することができる。


 それにより、得体の知れない何かが何度も何度も自分の身体を襲ってくるのを感じるのだ。

 これはパーティ会場で圭が入場したタイミングでも起こったため、この行為が彼のものなのではないかと個人的に判断していた。


 この今まで感じたことのない魔術を鑑みて、井上は戦うことを断念した。


「くっそぉー……こんなんなら学園で大人しくしとくべきだったかぁ」


 現状、井上には黙って戦いが終わるのを待つしか方法がなかった。





伸縮(ばね男)』水島、『無力』河内、『不死(ゾンビ)』五十嵐。三人の戦いは必然的に肉弾戦になっていた。


 水島は物の伸縮性を主に操る。能力を使うことで物体をまるでトランポリンのように形状変化させ、エネルギーをそのまま弾き返す。及川に使ったのはこの能力だ。

 また、自分の身体に接着するような形で能力によるネットを張り、それによって宙での体勢を整えることができる。

 実際かなり便利かつ有用な能力だと自分でも思ってはいた。


 ただ問題は、目の前の二人にほとんど有効打がないことだった。


詐欺師(フェイカー)』及川を追い詰めた時は、単純に背後の壁を使って高威力の礫を投げた。しかし今そんな余裕はない。


不死(ゾンビ)』は大きな礫を投げつけ身体を抉らせるも、回復魔術によりすぐに全快状態へと戻ってしまう。たとえ跳ねさせて勢いをつけ攻撃しても、ダメージをすぐ無くしてしまう。


 ヘラヘラ笑っているくせに、厄介な男だった。


「へへ、いいぜ、何度でも来いよ。どんな攻撃も、ウケてやるぜ」


 五十嵐は水島にケツを向けて挑発するように揺らす。蹴飛ばしてやりたいのだが、たとえ蹴飛ばしても五十嵐はすぐに回復してしまうのだ。

 そのためこの不愉快さは終わることはない。感情に任せて手を出した時点で負けだ。



 次に『無力』河内。

五十嵐とは打って変わって彼は物静かだった。男のくせに長い髪が顔の上半分を隠しており、何を考えているか表情がさっぱり読めない。


 ただ河内は能力や魔術を無効化する能力らしく、バネトラップを仕掛けても一切反応せず掻き消される。


 必然的に、殴り合いになった。



「まずは……」


 淡麗な顔に眉を潜め、水島は河内の方へ走り出す。河内が対応するのを見切り、腰を深く沈めた。そこで自分の能力を発動させ、足元に勢いを蓄えてから一気に加速し、飛び上がるようにアッパーを放つ。

 河内はそれを避けたが、身体が浮いた水島は宙で反転。地面の方を向きまた宙にネットを張ることで速度を上げて、河内を地面へと殴り落とした。


「ぐっ……」


 苦悶を口に漏らしつつ、地面に叩き伏せられた河内は、追撃を躊躇う水島を見ながらゆっくりと立ち上がる。


「……痛い」

「おうおう、俺にも来いよ。痛いのカモン、ベイベーっ!」


 後頭部を押さえる河内の肩を、五十嵐は違和感のない動作で叩く。それは攻撃というよりかは、友人に接するようなものだった。


「……ウザい」


 パシッと五十嵐の手を払う。


 二人は味方というわけではない。お互い敵同士だ。


 ただ五十嵐の方がマゾヒストで痛みを求めている上に、馴れ馴れしさを醸し出しているせいで、下手に攻撃しても意味がない。

その時点で二人とも五十嵐を狙うことにメリットを感じていない。



「うん?うーん、いっそのこと間に入って……ん?」


 二人が再び戦いを始めるのを見つめているタイミングで、警告音が鳴り響いた。


 これはフィールドが狭まる合図だ。四時間経過した今から三十分で、直径六百メートルまで狭まる。


 そのタイミングで動かざるを得ない人がいた。


 そして、五十嵐はたまたまそれを見かけてしまった。


「うほーっ!ロリッ子見っけ!」


 フィールド変更に伴って移動を始めた上岡成美を見つけた五十嵐は、後ろで争っている二人を差し置いて一目散に走り出した。







 五十嵐が走り去ったところでは、中近距離での戦闘が行われていた。


「能力の無効化ですか……だがそれは発動時のみ、視認できなければ使えないと見ました」

「……めんどい」


 水島は多少の武術を心得ている。それに空中での跳躍を活用した立ち回りも可能だ。それに対して河内の方は身体の使い方はほとんど分からない。


 ただ、河内の強みはある程度の距離でも能力を無効化させられること。



 水島が走る。瓦礫を蹴飛ばし、弾性変化によりまるでピンボールのように立体的に跳ね始めた。複数の瓦礫の係数を部分的に変えることで、不規則な跳弾を作り出すことができる。


 河内は瓦礫の方に目を取られ、それでも躱せない不規則な瓦礫を身体に受けて怯まされた。それを好機と捉え、もう一度地面を変化させ勢いを蓄えた。


「……それはもう見た」


 河内が体勢を低く落とす。地面の微妙な伸縮を見て水島がどこに飛ぶか把握した河内は、攻撃が確実に当たらない位置に移動しつつ空を見た。


 その直後に真上を飛び上がる水島を捉える。先ほどと同様に宙をバネに反動をつけ、河内の後ろから攻撃する寸法だろう。


 二度目は効かない。


「『無効化』」

「はっ、……んなっ!?」


 最も深く沈み、弾性エネルギーを蓄えた状態で、水島の能力が掻き消された。

 エネルギーを失った水島は、ボールを落としたように頭から自由落下する。そのわずかな動揺を河内は逃さない。


 素人ながらも前に出された強烈な蹴りは水島の脳天に直撃し、サッカーボールの如く吹き飛ばされた。



 古びた壁に激突し、ガラガラと音を立てて水島に瓦礫が降り落ちる。河内はそれを追い、近くに転がっていた両手大の尖った瓦礫を水島があるであろう場所に振り下ろした。


「がっ、……ぐほぁっ……」


 瓦礫の下から空へと血が吹き出す。水島が口から吐き出した血だった。


 さらに追い討ちをかけるようにもう一度振り下ろす。


 しかし、やはり二度目は効かない。


 河内が抱えていた瓦礫は、水島に当たったあたりで大きく変形し爆発を起こした。


 これは一時的に物体を能力によって変形させ、能力が切れた時の密度変化により爆発させている。


 大きく凹んだ分その威力はかなりのもので、痛みを感じた河内はその場から大きく飛び退いた。



「ふぅっ、ふぅっ、……」



 自分の方に飛んできた瓦礫の破片を空中伸縮により弾き飛ばした水島は、荒い息を立てながら瓦礫から立ち上がった。端正な顔立ちは痛みのせいで醜く歪む。


 左手で押さえている腹部は血に染まり、一部内臓が見え隠れしていた。


 水島は自分が失敗したことを悟った。河内の能力『無効化』は、能力を使った時しか効果を発揮しない。そのためこちらに攻撃する方法は肉弾戦のみだった。


 しかし水島が能力を使ってしまったせいで、『無効化』によって隙を作り出され致命傷を負わせられた。


 多少なりとも武術の心得がある水島の方が、接近戦では有利を取れるはずだったのにだ。


 力任せに抉られた腹は徐々に水島の体力を奪う。

 この時点でできることは一つ。目の前の男を倒すこと。それだけで最低2ptは上がる。


 激しく襲う痛みを堪え、腰を低くして手を構えた。



「疾っ!」


 今度は能力は使わない。右拳を振り上げ顔へと向ける。その動作を見た河内は案の定素人らしく正面左に大きく避けた。


 目にも止まらぬ速さで繰り出されたパンチは一瞬で元の位置に戻り、即座に左手を前に出す。大きく体勢を崩したせいで身体が伸びきったままの河内は、水島から見れば隙だらけだ。


 真っ直ぐ繰り出された拳は河内の顔面正面へとぶち当たる。その衝撃で目を瞑り一歩下がったところを、詰めるようにして右でアッパーを放った。


 対応できずなすがままの河内は宙に浮かぶ。体勢を整えられなくなる空中を狙い、ハイキックが河内の横腹に激突した。


 血が吹き出る。力んだ影響で余計傷口を悪化させてしまった。


「うっ、……くっ」


 歯を食いしばり、意識を失いそうになるのを堪えた。

 まだ倒していない。塀に激突して倒れたままの河内へと走り、瓦礫を退けて立ち上がろうとしたところをかかと落としで下へと押す。


 姿は見えないが、あと少しなのは分かる。傷つくことをお構いなしに瓦礫に手を突っ込み、強引に河内の襟首を持ち上げた。


 端正かつ鋭い目と、髪に隠れながらも死んだ魚のような目がぶつかり合う。



 今度は河内の両手が、襟首を掴む水島の手を握った。その握力は相当なもので、痛みに耐えられなくなると察した水島は躊躇なく横に手を振り払った。



 不安定な足場に、不安定な足取りで二人が向かい合う。

水島は腹部を筆頭に身体は傷だらけでどこもかしこも赤黒く染まっている。河内は同じく血だらけで、頭から大量に吹き出した血が白い肌を赤く染めていた。


 二人は走り出す。


「ふぅっ、ふぅっ……」

「おぉぉぉぉぉっ!!」


 水島は声を上げ、河内は呼吸でリズムをとりながら、渾身の一撃を繰り出した。






 ----------------





 水島は、霞む目で自分の前に立つ男を見上げた。


 勝敗は致命傷が理由になったのだろう。河内の顔面をとらえる前に、先に蹴りが腹部に突き刺さった。

 武術は素人のはずなのに、最後の蹴りだけは見事なものだった。


 背を向け歩き始める河内の姿を見つめる。相手も致命的なダメージを負っていたのが分かる。足取りもどことなく頼りなく、いつ倒れてもおかしくない。


 自分のミスを思い出して後悔しながら、水島は意識を失った。








 それから数十分経ったころだった。


 河内は廃屋の中にあったいくらかマシなベッドに寝転がっていた。

 何度も頭に攻撃され意識が飛びかけていた。下手したら後々後遺症に繋がるかもしれないと、テレビで見た番組を思い出す。


 後はここで時間を稼ぎ体力の回復を図るだけ。そう考えていた。


「お、ここかなぁ」

「っ、」


 突然の声に硬直する。数ある廃屋の一つに、それも誰にも見つからずに隠れたはずだった。だからこそ安心していた。


 しかし謎の来訪者のせいで立ち上がらざるを得なくなった。ギシギシと音を立てて近づいてくる者に警戒し、いつでも攻撃できるように構える。


「ふむふむ、ここかな?」


 顔を出した男に対して全力で拳を打ちつけた。


 だがそれは空振りに終わる。不意打ちだったにも関わらず、完全に見切られていた。


「あっぶねー……なんだ、死にかけじゃん」


 目の前に現れたのは、ランク6『奇術師』三鷹圭。明らかに格上の相手だった。


 意識を朦朧とさせながら、なんとか対抗しようと両手を構える。

 しかしそれは無駄な行為だった。


「『雷よ』」


 能力を発動させる隙もなかった。あまりにも速すぎる魔術発動によって生み出された雷は、両手に当たり弱いながらも河内の身体を感電させる。


 万全の状態であれば、この程度はなんとでもなるだろう。しかし、今の状態では耐えることはできなかった。


「漁夫の利ですなこれは」


 余裕そうな態度でヘラヘラ笑う男の前で、河内は膝をついて倒れ伏した。

紹介は別タイミングで紹介します。

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